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なぜ中国は『ゼロコロナ』を貫くのか?

非常に強い感染力のオミクロン株の中、ほとんどの国は”完璧な防疫”は無理だと判断しており、接種率の高い先進国ではウィズコロナが進められています。

ウィズコロナに進む各国

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そんな中、中国・上海で過去最大規模の都市封鎖が行われています。中国はあくまでゼロコロナ政策を貫いています。

上海封鎖

上海は人口が約2500万人の商業の中心都市です。東京都の約1.8倍の人口です。

3月28日から東西に分けて順に都市封鎖をするわけですが、世界的な金融拠点でもある上海の封鎖は経済に非常に大きな影響を与えそうです。

上海の都市封鎖

『感染者数は過去最大で4477例』って、東京都でいえば2500人出たら都市封鎖ってことです。さらに、その間に全員PCR検査を受けて、家から一歩も出さないという徹底ぶり。

ほんとにここの強権力はいつも驚かされます。

ゼロコロナ、無理じゃね?

これに対しては、海外メディアも取り上げており、BBC*1はオミクロン株の特徴を鑑みるとゼロコロナをいつまでも続けることには疑問が生じると伝えています。

中国はなぜゼロコロナ?

ところで、なぜ中国はゼロコロナに固執するのでしょうか?

今回はBloombergの記事*2を参考に見ていきます。

ゼロコロナ=感染者0?

そもそもゼロコロナ政策とは『感染者0』を目指すものでしょうか?

入国後の隔離を徹底し、感染者が少しでも出ようものなら全市民検査、陽性者は隔離徹底というガチガチの方針。

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動態(ダイナミック)ゼロコロナ

一方で、このやり方の考えは、『感染者が出るのはしょうがない』。つまり、感染者0人を目標としているわけではないのです。出たら早いうちに火消しを行う、”動態ゼロコロナ”だと中国政府は称しています。

なぜゼロコロナに固執?

中国政府の理由は単純明快です。『メリットが大きいから』

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『ゼロコロナは成功している』

中国政府の試算によると、ゼロコロナ政策のおかげで5000万人の感染とそれに伴う100万人の死亡が防げたといいます。

ま、でもこの計算やと致死率2%と割と高めですな。ちなみにオミクロン株の致死率は英国では0.2%、日本では0.13%*3と言われています。

いずれにしても、中国からすれば、これだけ死者を防げているゼロコロナ政策を辞める理由はないということです。

ま、中国の強権力でこそこの方式ができています。

経済でも一人勝ち

ゼロコロナ政策の副次的なメリットは経済面にもあります。世界中が2020年は経済成長が止まる中、中国が一人勝ちできたのは、感染を抑え込んだからです。

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経済では一人勝ち

工場などでも感染対策を徹底していました。オリンピックで有名になった『バブル』という概念で労働者を管理しました。

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バブル内で生活する労働者

労働者は寮と工場のみを送迎され、いわゆる”バブル”を形成して外界とは交わらないようにされました。そして、定期的にPCR検査や体温測定が行われていました。
この徹底ぶりもゼロコロナ政策の重要な一翼を担っていたのです。

成功に隠れる弊害

当初は、短期間の都市封鎖の我慢で、経済成長できるならということでゼロコロナのいい面が注目されましたが、段々とその弊害も浮き彫りになってきました。

デルタ株やオミクロン株などの登場です。

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ゼロコロナ政策の弊害

感染力が強いため、完全な火消しに時間がかかり数週に及ぶ都市封鎖を行うこともありました。市民は家から一歩も出れませんので、食料不足に陥ったり、病人が受診できず死亡したりもありました。

北京五輪直前の西安では妊婦が死産した*4という悲しい事件もありましたね。

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政策による内需の低下

輸出で経済成長を優先する中国、一方では市民には非常に厳しい制限をかけてゼロコロナ政策を行っています。移動制限や、市民の感染への恐怖から、内需は大打撃を受けています。

ゼロコロナはやめれない?

中国がゼロコロナをやめるにはいくつもハードルがあります。

中国は世界でも一番早くに自国で不活化ワクチンを作って打っていました。(不活化ワクチンは通常、開発と製造に時間がものすごくかかるんですが・・・はて。笑)

で、その効果が低いことは以前から指摘されておりますね。

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ゼロコロナはやめれない?

さらに、高齢者で特に80歳以上のブースター接種率が低いのも危険です。この層が感染すると死者が増えますので、なんとしても感染を抑え込みたいと。

中国の試算では、ワクチンだけ打って、欧米のようにウィズコロナをすると1日に63万人感染者がでるといいます。ま、この数字はこないだ韓国でも出てました。(中国の人口は韓国の人口の約27倍です)

しかし、中国の医療体制は特に田舎では脆弱なので感染爆発は死者増加につながります。また、政府への不満にもつながります。

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クラスター出したら免職!

今年の秋には5年に1度の党大会が開かれ、ここで習近平はさらに権力を強めるつもりなので感染対策は緩められないのです。

大きなクラスターが出たら、地方の幹部は免職!というピリピリモード。(笑)こういうのあると、出ている数字(=感染者数)も怪しいのでは??

海外も困る

実は中国がゼロコロナを辞めると世界にも影響があるのです。

中国は安い人件費と、社会主義国のパワー集結させて、iPhoneなどの電子機器やあらゆるものを作って世界中に輸出しています。

食べ物だってそうですよね。

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ゼロコロナを捨てると世界も困る

中国がウィズコロナに転換し、感染爆発すると、私たちも一時的に食料難や、世界中でiphoneや電子機器が供給不足で価格高騰なんてこともあるわけです。

いかに世界が中国に依存しているかということを改めて感じますね。

さいごに

いかがでしたか?

中国があくまでゼロコロナ政策を突き進む理由について学びました。

背景には中国製ワクチンの効果、医療体制の脆弱性、2022年秋の党大会などといった中国内での問題がありました。しかし、それだけでなく、中国がゼロコロナを辞めると世界のサプライチェーンに多大な影響を及ぼしかねないという事情も孕んでいるのでした。

では、また(^^ノ

 

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