マルチリンガル医師のよもやま話

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『中国、6月にコロナ再拡大』

昨年末、急な『ゼロコロナ政策撤廃』から一気にコロナ感染が広がり、一時は火葬場への行列などが報じられていた中国ですが、最近中国の専門家らが『6月再拡大』の警告を出しました。

今回は中国の、”再感染”問題についてみていきましょう。

ゼロコロナ終了

少し振り返っておきましょう。

2022年サッカーワールドカップ、カタール大会で中国は出場していませんでしたが、若者の関心は強く、さらに中国の企業がその大会に大きく関わり、『我が国はすごいだろ』と国民に示すためにも、中国国営放送で中継することを決めました。

たしかにいたるところに漢字の企業が見られましたね。

ところが、その判断が裏目に出ました。カタールでは誰一人マスクもしておらず、ソーシャルディスタンスなんてありません。

BBC:中国とカタールは別の惑星?

そのとき、中国内では集まりが禁じられており、ワールドカップも家で個人で見ること*1とされていたので、ネットを中心に不満が爆発しました。

そんなこんなで、中国政府は国民の不満爆発を恐れ?、急遽ゼロコロナ政策をやめ、規制を撤廃しました。

さらに詳しく

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中国政府によると、2カ月で8万人以上が死亡*2したと言いますが、在宅死は含まれておらず、実際はもっともっと多かったと考えられています。

人口の8割が感染

ゼロコロナ終了後の感染大爆発で、14億いる中国民の80%(約11億人)が感染した*3との中国側の見解が報じられました。

中国の人口、ホント?

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ワクチン接種+実際の感染の合わせ技、いわゆる”ハイブリッド免疫”が有効*4なことがわかっており、少なくとも1年間はコロナによる入院・重症化はありません

ハイブリッド免疫が有効

そして、半数の人は1年以上、再感染を免れ、ワクチンなしで感染のみの場合でも4人に1人は1年以上は感染を免れます。

逆を言うと、感染のみでは1年以内に再感染しうるということです。

中国でのワクチン接種率は約90%*5で、さらに人口の8割が既感染で、ハイブリッド免疫を持っていると考えれば、こんな早々に大きな波は来ないはずですね。

なぜでしょうか?

中国のワクチン

理由の1つとしては、中国製ワクチンです。

中国独自のワクチン(シノバックなど)はファイザーなどのmRNAワクチンより効果が劣る*6*7ことはわかっております。

6月には6500万人/週か

こういった背景もあり、中国でのハイブリッド免疫は、他国ほど強固なものでないと考えられているというわけです。

実際、中国では既に4月から感染が広がっており、発熱外来もパンクしているようです。中国の感染症の専門家によると、6月には1週間で6500万人(≒日本の人口の半分)の感染の予測を出しています*8

見えない波

しかし、中国では4月以降、コロナ患者の統計発表をやめたので、実態はつかめません*9

見えない波になる

これに関してはどの国もそうなんですよね。日本でも5類移行とともに定点把握と言って、医療機関から毎週報告された数だけを集めるようになります。さらに、死者数の毎日の報告もなくなり、2カ月くらい遅れて人口動態で知ることになります*10

XBB用ワクチン

もう一つ中国で感染再拡大が心配されている理由は免疫逃避能を持つXBBの拡大です。中国は大急ぎで現在流行しているXBBに対応したワクチンを作りました。

ちなみに一応、今年3月に中国製mRNAワクチンも誕生*11しているので、今後応用されるでしょう。

XBBに特化したワクチン開発

XBB系統(オミクロン株の1つ)はBJ.1BM.1.1.1組み換え体で、1つの細胞に2つのウイルスが同時感染して起きたものです。

XBBはBA.2の親戚

細かい話を抜きにして、BJ.1もBM.1.1.1もBA.2系統の変異株なので、XBBもBA.2に近い性質と考えられています。

XBB.1.5とは

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WHOも次のワクチンはXBBに照準を合わせて作るように推奨を出していますが、免疫逃避能があるので感染予防的にはあまり頼りにならなさそうです。

終わらない戦いへ・・・

残念ながら、やはりコロナとの戦いは終わらないのです。

さいごに

いかがでしたか?中国でまた大きな感染の波がやってくると警戒されています。

大多数がこの冬に感染したにも関わらず、早くも再感染が広がるとされるのは、中国製ワクチンでは十分なハイブリッド免疫とならない可能性が1つ、あとは今急増している免疫逃避能をもつXBBの感染拡大です。

ちなみに日本は今年の2月時点で、抗体検査から国民の約43%が既感染*12と想定されております。要は、ハイブリッド免疫を持つ人も4割くらいしかいないということです。

5類化で見えなくはなるけど、日本でも対岸の火事ではなさそうです。

では、また(^^♪