マルチリンガル医師のよもやま話

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中国「オミクロンの真実教えたる」

中国は2022年12月までゼロコロナ政策として、感染者が出れば建物ごと閉じ込めて一歩も外に出れないようにしたり、都市封鎖をして感染拡大を抑えてきました。

しかし、コロナ禍が長くなり、他国との状況に差に国民が愕然とし、その不満を取り除くために一気に規制緩和しました。

今回は最新の研究を元に、この政策転換の結果をとくと確認しましょう。

ゼロコロナ政策

そもそもなぜ中国はゼロコロナ政策を徹底していたのでしょうか?

まず、中国の特に地方では医療体制が非常に脆弱で病院数が少ないので感染爆発すると多数の死者を出す*1ことになります。

ゼロコロナで死者減らす -Bloomberg 2022/02/11

政治的にも党大会(2022年10月)前に感染爆発は国民の心象が悪くなるので避けたい狙いも間違いなくあったでしょう。

ゼロコロナ政策を続ける理由

科学的な面では、中国製の不活化ワクチン効果が低いことが1点、さらに一番脆弱層である高齢者がワクチンを信頼しておらず追加接種が進まなかったことがあります。

これには裏側があり、ロシアと中国が自国のワクチンを推すためにファイザーなどのワクチンの誤情報を垂れ流して「危険」だとネット上に広めた*2のですが、それにより自国のワクチン接種も進まなくなったという顛末。

中露によるワクチン誤情報拡散

他にも、『恐怖のウイルス』と煽って国民を統制したい説や、「うちでは被害少ないからやっぱりコロナは他国が持ち込んだ」とアピール作戦というのもあるのかもしれません。ま、知らんけど(笑)

100万人死亡説

ゼロコロナ終了時に香港大学の出した報告書*3によると、高齢者のワクチン追加接種などの適切な措置が講じられなければ、1年間で最大100万人が死亡すると予想しています。

100万人死亡説

この数字は、オミクロン株での致死率を考慮すると、高すぎる試算となるのですが、その根拠については次のように言われています。

中国製ワクチンの性能が低い

はい、先ほど、中国がゼロコロナ政策を続ける理由と同じです。

重要なのは追加接種の話以前に未接種の高齢者が結構いる(約35%)とうことです。

こういったことから多い死者数が予想されるというわけです。

2か月で187万人

さて、それではゼロコロナ終了後の答え合わせを見ていきましょう。

米国医師会の医学雑誌JAMAに先日掲載されたホヤホヤの論文*4をさらっと見ていきましょう。

まず、中国はコロナのカウント・公表をやめていますので、ゼロコロナ中止後の影響を見るには【超過死亡数】を使うほかありません。

ゼロコロナ政策中はコロナ死者・超過死亡少ない

当たり前の話ですが、ゼロコロナ政策中はコロナ死者数は少なく、超過死亡も極めて低い状態でした。

ゼロコロナ政策撤廃後、ものすごい勢いで中国内でコロナが広がり、火葬待ちの行列ができたのは誰もが知っています。

ゼロコロナ終了後 死者爆増(論文Figure1引用)

これは論文のFigure に説明を付け加えたものです。ピンクで囲った部分のグラフ推移が北京市での死者数を北京大学精華大学の2つのデータを並べたものです。

2022年末から2023年初に死者が爆増しています。

水色の線は、中国の検索サイト百度(Baidu)での【土葬】とか【火葬場】などのキーワードの検索数を示していますが、同時期にやはり上がっていますね。

撤廃後2か月で超過死亡187万人

ゼロコロナ撤廃後、一気に中国内でコロナ大爆発した2か月で超過死亡は187万人となりました。つまり、これだけの人がコロナにより直接または間接的に死んだ(例:病床ひっ迫でコロナ以外の患者の治療もできない)ということです。

それらをひっくるめてコロナ感染拡大による影響といえます。

予想以上

ゼロコロナ政策撤廃時に、香港大学の予想は、1年間で最大100万人の死亡でしたね。

でも、実際は、2か月間で一気に感染が広がったことでそれ以上の187万人が超過死亡として出たのです。

急速な感染爆発は致命的

論文の著者らは、政策などによる急激な感染爆発は多数の死者をもたらすことを再認識させられる結果となったとまとめています。

基本的には感染対策は段階的に緩めていき、感染状況が悪化すればその時は強化するなど臨機応変にするべきということですね。日本政府ももうやる気0ですが。

日本も第9波の真っ只中

モデルナがコロナの感染状況推計を公表*5していますが、完全に第9波です。"嵐"のときは用心するのが大事ですね!

オミクロンなめるな

最後にこの中国のデータからもわかるように、「ただの風邪」とか言ってナメ腐ってると大きな痛手を食らいます。

オミクロン弱毒化していない

www.multilingual-doctor.com

過去記事で紹介いたしました香港に関する論文*6をもう一度確認しましょう。

オミクロン株でやられた香港

2022年2月までは中国本土と同じように厳格な感染コントロールで来ていましたが、オミクロン株の流入で甚大な被害が出ました。

香港では、中国製ワクチンのゴリ押しに対する不信感で、高齢者の半分以上が未接種だったのです。

この香港が未接種者が多いという事実を利用すると、ウイルスの変異による重症化率などを未接種者で未感染者を対象に比較ができたのです。

オミクロン株で入院致死率高い(未接種者)

すると意外なことに、『弱毒化』したといわれるオミクロン株での入院・致死率は以前の原始株と変わらないことが分かったのです。

それだけでなく、感染者の急増による医療ひっ迫で一時的には入院致死率が41%にまで上がったのです。

ワクチンの効果で『弱毒化』したように見える

この結果から、オミクロン株の”毒性”は原始株と変わらなのです。

多くの人のワクチン接種により、『弱毒化』したように見えるだけということです。

さいごに

いかがでしたか?

中国が一気にゼロコロナ政策をやめた結果、実際とんでもない感染爆発が起こりました。最初は、オミクロン株は致死率が低いことも踏まえて、1年間で最大100万人が死亡すると予測されていました。

ところが、実際ふたを開けてみると、2か月で今までなかった超過死亡が187万人と悪い意味で期待が裏切られました。

このことから私たちがわかることは、「オミクロン株を侮るな」と「短期間での感染爆発は死者をさらに増やす」ということです。

やはり流行期はみんなが用心して死者を減らすようんするのが賢明なのです。

では、また(^^♪