マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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鉄道の塗装に秘められた意味

日本全国津々浦々、定時運行が当たり前で、都会では高頻度運転と、便利な鉄道。

これだけのネットワークと安全性、定時制を担保したのは日本の誇れるところです。

今回は鉄道の塗装にまつわる歴史を紐解いて学んでいきましょう♪

カラフルな電車

昭和の時代、通勤に電車を使っていたお父様世代は昔を振り返ってこう言うでしょう。

昔の電車はカラフルだった

昔は大きなターミナル駅では、オレンジにブルーに黄色に緑に様々な色の電車が行き来して見ていても楽しそうです。

お客さんの誤乗防止で、一目で自分の乗るべき電車がわかるように路線ごとに色を使うのはよい配慮ですね。

例えば1963~1984年にかけて製造された、国鉄最大勢力の103系は、全国で広く使用され、線によって非常にカラフルでした。

カラフルな国鉄103系

関東では、早くに消滅(2006年が最後)しましたが、古いものを大事に使う西日本では、車齢50年近くても現役で走る路線があります。残すところ3路線のようですが、103系がメインなのは播但線くらいです。

そちらの方も時間の問題でしょう・・・

鉄だから

さて、カラフルな塗装の電車は、見た目で乗る電車がわかるという重要な役割もありますが、全身塗装されているのには理由があります。

それは、車両が丈夫なで作られているからです。

鉄の材料は鉄鉱石酸化鉄です。これを還元したものが鉄として使用されるのです。

鉄は錆びやすい

鉄は、放置すると酸化されやすく、元の鉄鉱石の状態に戻ろうとします。これがいわゆる”錆びる”というものです。

なので、酸素が直接触れるのを可及的に減らすために、全身塗装が必要なんですね。

しかし、塗装も雨風や日光、塩などさまざまな攻撃を受けるので、3~4年に1回剥がして塗りなおしをする必要があります。これが結構お金がかかるそうですわ。(1両で1000万円以上?)

ちなみに、昔の日本の蒸気機関車は基本全部の塗装でした。トーマスはですが。

煤がつくから黒色で塗装

理由は石炭を燃やすと出る煤ですぐに黒くなるので、黒の塗装なら汚れが目立ちにくいからと省線(戦前の国鉄)が決めたからです。

ステンレス

鉄は頑丈なことで、大量輸送を行う鉄道の安全性を確保するのに適していました。

しかし、難点は重いことと錆びることです。

そこで錆びにくい鉄が登場しました、ステンレス(stainless)です。

その名の通り、サビ(stain)が少ない(less)なわけです。

ステンレス車両の登場

ステンレスは鉄に一定量のクロムを混ぜ合わせて作りますが、錆びにくいので全身塗装も不要なため、数年毎にある塗装費が浮きます。

さらに、後に軽量ステンレスが登場すると、車体の軽量化が可能となり、省エネになったのです。

そんなこんなで、全国でステンレス車両が一気に増えていったのです。

だからこそ銀色の車両が数多く見るられるのです。一応、ラインカラーとかを帯状にシールで貼ってたりします。

ステンレスの特徴

ステンレスの欠点としては硬いことです。丸みを帯びた形などに変形するのが難しく、列車の顔は角ばったものになります。

アルミ車両

ここまで見てきたように、塗装メンテナンス不要のステンレス車両がが主流となっていますが、時代とともにさらなる省エネが叫ばれるようになりました。

そのためには、車両を軽くするのが手っ取り早いです。軽自動車の燃費がいいのと同じ理屈です。

ジュースでも鉄のスチール缶とアルミ缶がありますが、アルミの方が軽いですね。比重が小さいのです。

アルミ車両の特徴

ステンレスほどではないけれど、強度もある程度確保できて軽いアルミに白羽の矢が立つのも納得です。

で、アルミはすぐに酸化して自ら皮膜を作り、錆びにくいです。

ステンレスと比較してもだいぶ軽くて、さらに気密性を保ちやすいというメリットもあります。なので、高速走行の新幹線にも使われます。

一応、アルミ車も腐食しにくいので塗装なしでもOKですが、ステンレスよりは少し汚れやすいです。

一方でアルミは鉄などと比べ単価が高いので、製造費が高額になるというデメリットもあるわけです。

それぞれの特徴をまとめると・・・

ここまでの3つの特徴をまとめると上図のようになります。

これらの中で、どれを取るかは各会社の方針もあります。

不要でも塗装

先ほども書きましたが、塗装とそのメンテナンスはすごくお金がかかるので、鉄道会社としては省略したいわけです。

ステンレス車やアルミ車では塗装なしでいいのですが、敢えて塗装している会社もあります。

有名な例で言うと、新幹線阪急京急です。

敢えて塗装をするという選択肢も

新幹線は、高速で走行するので、空気抵抗が重要です。塗装をした方が空気抵抗が滑らかになるそうですな。あと、アルミの塩害防止のために一応塗っておくというのもあるようです。

阪急と言えば、ちょっと高級なイメージを維持しておりますね。あのマルーン色でいつも鏡のようにピカピカの車体*1。この阪急の伝統を崩さぬよう、アルミ車にも塗装*2をしています。

阪急vs阪神vsJR

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一方で、京急では一度はステンレス車両で無塗装の銀色車両が増えましたが、やはり「京急と言えば赤でしょ」という伝統回帰で2018年の新製車両からステンレスでも全面塗装を行っています*3

初詣と鉄道

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自動車は?

ところで、同じように自動車はどうなのでしょうか?

ま、既にお分かりの通り、車はいろんな色がないと、バリエーションがなく誰も買わないっすよね。ってなわけで塗装があるわけです。

鉄は形を変えやすいメリットもあるので、デザイン性にも富んでいます。

ステンレス製のデロリアン

それならば、わざわざ、ステンレスや高いアルミに手を出さなくても、経験値豊富な鉄で作ればいいですね~

しかし、例外はあるのです。

例えば、コスト度外視で、速く走るために軽量化を目指す、レーシングカーなんかはアルミで作ってたり、最近はカーボンファイバーでも作ってますね。

採算度外視で軽量化重視!

あとは、高級車・・・で速い車はアルミ使ってます。

フェラーリとかランボルギーニ、ポルシェなど・・・

高級車は、アルミにより単価が上がっても、買ってくれる人がいるし、何より”速く走る”という目的がありますからね~

さいごに

いかがでしたか?

鉄道の塗装について学びました。なかなか奥が深いものです。

アルミ缶とスチール缶で言うと、アルミの強度が心配でしたが、そんなことないんですね。それも驚き。

アルミ缶は形が変わりやすいので、内側からも圧が高い炭酸飲料に適しています。

あと、アルミ缶は熱伝導がよく、冷えやすいので冷やして飲む飲み物に向いています。

一方、スチールは冷めにくいので、缶コーヒーやお茶などに向いています。

おもしろい~

では、また(^^♪