福島第一原発の事故から12年、処理水の海洋放出が始まります。
この問題は過去にも記事にしていますが、しっかりと再確認しておきましょう~
福島に原発
戦後のエネルギー革命により石炭から石油に資源が移ったことで、福島にあった常盤炭田が閉山することになりました。日本の高度経済成長に乗り遅れた福島は産業誘致を探っており、ちょうど人口の少ない地域で原発を作りたかった東京電力と利害が一致しました*1。
実際、原発を作ると、国からの多額の交付金がもらえるので、町や県としてはかなり潤うのです。
▼福島に原発ができた理由▼
福島県の双葉町と大熊町の議会で全会一致で話は進み、最終6号機まで福島県で作られました。
ちなみに、原爆により多数の命を奪われたこの日本に原子力発電所が作られたのかは過去記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
▼被爆国日本が原発導入▼
メルトダウン
原発の仕組みは、超簡単に言うと、原子力のエネルギーで水を沸騰させてその蒸気がタービンを回して発電します。
原子力から得られるエネルギーは莫大で、停止後も熱を産生し続けます。
2011年の地震で制御棒が働き原発は停止しますが、冷却し続けなければいけません。そのためには海水をくみ上げてくる電力が必要です。
まさかの津波で非常用ディーゼル発電機が使えなくなってしまい、冷却水の供給がうまくいきません。結局、熱を放ち続けた燃料棒が溶け出し、外へ出てしまいました。
これがメルトダウンです。
汚染水と処理水
原発事故で溶けだした燃料が固まったものを燃料デブリといいます。この燃料デブリも熱を発生させ、放射能を出すので常時水をかけて冷却していないといけません。
このときの冷却水は直接燃料デブリに接触しているので高濃度の放射性物質を含んでおり、汚染水と呼ばれます。この汚染水を直接海に流したり、外部に出すと危険です。
そのため一時的にそれらをタンクに詰めて敷地内に保管しています。
ところが、保管スペースももう余裕がなくなってしまいました。
こうなった際には、汚染水から放射線物質を除去した処理水を海洋放出するのが技術面、コスト面からも一番理にかなっています。
実際、処理水の海洋放出は世界中で行われています。
汚染水から放射性物質を取り除くのに使われるのがALPS(多核種除去設備)という装置です。
一部の国はわざと『汚染水』という言葉を使いますが、海洋放出するのは『処理水』です。ただの印象操作ですね。
トリチウムとは
さて、このALPSでほとんどの放射性物質が除去できるのですが、取り除けないものがあります。それがトリチウム(三重水素)です。水素と同じ性質で水中にあるので取り除くのが難しいのです。
トリチウムは非常に不安定で、なんとか安定した分子に変わるために放射線を出すわけです。
トリチウムから出る放射線はβ線で空気中を5mmしか進まないので、紙1枚で遮れるため外部被ばくの心配はないとされます*2。
また、自然界にも存在しており、雨水にも含まれています。
人工的にトリチウムができるのが、原発からの発生です。基本的に濃度がかなり薄ければリスクは低い放射能物質とされ、国内外でも基準以下の濃度に薄めて、海洋放出する方策が一般的です。
福島第一原発からは、WHOが示す飲料水の基準の1/7のレベルまで濃度を薄めて放出します。
全放射線量
科学の話をするときは、『割合(濃度)』と同時に『総量』も考えなければいけません。
福島の処理水から出される総線量860兆Bqと計算されています。そして1年当たり最大22兆Bq を数十年かけて放出します。この値は大きすぎるのでしょうか?海外に目を向けてみましょう。
もうお分かりの通り、韓国の月城原発や中国の大亜湾原発の最大値と比較しても福島第一原発の年間の排出総量の方が少ないんです。
前の反日・文政権ではワーワー言うてましたが、尹大統領になってからは『科学的に問題なし』と韓国内への理解を求めて*3います。
さらに、尹政権は10億ウォン(約1億円)を投じて”科学的な安全性”を公報*4までしています。さすがMr.正義感!
▼韓国・月城原発の秘密▼
魚は大丈夫?
試算上は、海洋放出によりその海で獲れた魚を現状と同じくらい食べるとして、人体への影響は自然放射線の100万分の1~7万分の1と極めて小さい*5とされます。
しかし、予想と実際は違ったりしますので、海洋放出前後で海の放射性物質の濃度変化を定期的にモニタリング*6して見ていきます。
あと、中国が文句を言うていますが、それについて・・・
日本の南にある太平洋の海流(黒潮)は西から東です、中国とは反対方向。
何なら中国や韓国の原発が海洋放出したものがコチラに流れてくるのです。
福島から海洋放出すると、赤い矢印の方向へ行きます。
さいごに
いかがでしたか?
福島原発事故から海洋放出についてわかりやすくまとめてみました。
科学的事実とヒトの”感じ”は違います。科学的にはそうだとわかっていてもすぐには受け入れられないこともあります。
僕も雷が鳴ったら今でも外には出れません。(笑)
科学的には雷に打たれる確率は1000万分の1で宝くじ1等に当たるレベルといわれています。
人間とはそういうものなんですね~
では、また(^^♪
*1:横須賀正雄「東電・福島原子力発電所の用地交渉報告」『用地補償実務例 第1』、日本ダム協会、1968年。
*2:https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/no2/
*3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2023082200675&g=pol
*4:https://news.yahoo.co.jp/articles/e3f3aa8ad2f85c9978d9cbf5f987358cd218f81c
*5:https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/no5/
*6:https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/monitoring/