マルチリンガル医師のよもやま話

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【サク読み】中国でペスト発生!

中国のモンゴル自治区内でペストが発生したことが報じられています。

ペストは昔、”黒死病”とよばれ恐れられてきたものです。

このニュースをどう考えればよいのでしょうか??

中国でペスト発生

お盆が始まってすぐ、ロイター通信から不穏なニュース*1が出ていました。

内モンゴルでペスト発生

中国の内モンゴルで8月7日に腺ペスト発生し、その家族2人が8月12日に同様に腺ペスト(後で解説)を発症しました。

この文を見て気になったと思いますが・・・内モンゴル!確認しておきましょう。

内モンゴルと外モンゴル

モンゴルはロシアと中国により分割されて、中国に近い側を内モンゴル、遠い側を外モンゴルと、中国が勝手に呼んでいます。(笑)

色々、本当に色々あった後に、独立出来たのが外モンゴルで、これは現在のモンゴルです。強い力士の出身地ですな。

一方で、独立させてもらえず中国に飲み込まれたのが内モンゴル自治区です。

現在は漢民族が大量入植して同化政策・・・ウイグルと同じです。

ウイグル問題とは

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ペストとは

さて、ここからはペストについて学んでおきましょう。

記事の英語ではplagueとありましたね。これは【疫病】という意味です。

で、Pestというのは plague にあたるドイツ語です。

ペストの意味は

つまり、昔、バタバタ死んでいく恐ろしい伝染病というのが”ペスト(疫病)”なんです。

実際、感染者の致死率は60~90%*2と言われており、医療の発達した現代では、治療が適切に行われても致死率は10%くらいとかなり高いです。

14世紀の大流行では、ヨーロッパの人口の1/3がペストで亡くなったと言われています。

ちなみに、日本の感染症分類ではエボラと同じ1類感染症となっています。

原因は細菌

ペストの原因となるのはウイルスではなく、細菌です。

日本の細菌学者:北里柴三郎が発見したと言われてますが、それとは別にスイスの医師が先に発見したとも言われています。

元々はネズミやネコ、リスなどの血を吸ったノミからヒトに感染する*3ことがわかっています。

野生動物は触らない!食べない!

中国やモンゴルでは以前から野生動物との接触からヒトに感染が起きています。

実は、今回、外モンゴルでもペストが発生しており、その人たちはマーモットという野生動物を食べた後に感染しています。

新型コロナの初期の頃もコウモリや野生動物を食べる文化が問題視されていましたね。

感染すると・・・

症状の出方により名前が変わります。

大多数は感染すると、感染部近くのリンパ節がパンパンに腫れ、リンパ腺経由でどんどん広がり他のリンパ節も腫れていきます。これは腺ペストと呼ばれます。

一方で、約1割ほどの症例はリンパ腺ではなく、血液内をペスト菌が循環し、細菌が増えすぎて敗血症という重篤な状態に陥ります。

黒死病

その影響で、手足が壊死して黒く腐っていき、数日で死亡します。その見た目から”黒死病”と呼ばれてきました。

腺ペストでも敗血症ペストでもいずれ菌が肺に行きつくと肺ペストと呼ばれる病態になり、呼吸困難・血痰などを起こします。

ヒト⇒ヒト感染

感染症で重要なのはヒトからヒトに感染するかどうかです。

当然、過去に大流行したということからも想像つく通りヒトからヒトに感染します。

腺ペストでは、感染者の体液に触れると感染しますし、肺ペストでは感染者の飛沫で感染します。

抗生剤の適切な治療を行っても高い致死率のペストが、さらに大流行を何度も起こしてきたその感染力を考えるともう太刀打ちできません。

尚、ワクチンはありません

汚染地域

そんな恐ろしい感染症が2023年に急遽復活したのか??

いいえ。実は、日本ではないだけで、アフリカでは今でも普通にある感染症なんです。

ペスト”汚染地域” (1998, WHO)

少し古いですがWHOの地図を見ればわかりますが、中国やモンゴルでもチラホラ感染者がいる”汚染地域”とされています。

やはり、野生動物と近いですからね。

近年は、世界中が飛行機で移動しやすくなりました。インバウンドでお金だけでなく感染症も日本に入ります。

さいごに

コロナやサル痘で騒いでた割に、もっと怖いペストは静かな反応です。

中国の発表によれば、この3人感染者の隔離をちゃんとしたから、それ以降は特に感染者はいないと言っています。

それが本当だと祈るばかりですね。

海外旅行が身近になり、海外の感染症がどんどん入ってきます。また、地球温暖化で今まで熱帯特有だった感染症も、見られるようになります。

感染症って、こわいね~

 

では、また(^^♪