マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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コロナは体内に長期残存

コロナ禍に入って4年以上経ち、”後遺症” (PASC) に関しても少しずつですが、知見が集まってきました。

感染者の約10%が後遺症に悩んでいます。

そういった人たちの血中ではコルチゾールというストレスに対抗するホルモンが減少*1していたり、体内に潜むヘルペスウイルスが活性化*2していたりするとの報告もあります。

今回も新たな研究の内容*3を見ていきましょう。

14カ月も残存

風邪をひいて、2週間くらい咳が残る・・・なんてことは以前からたまにありました。

しかし、半年も1年も、後遺症が続く風邪なんて聞いたことありませんね。

コロナウイルスの外側にあるトゲトゲのスパイクタンパクは、人間の細胞に感染する際のカギです。このスパイクタンパクを検出する高感度検査を行いました。

14か月後もウイルス残存

すると、一部の人の体内では感染後14カ月たった時点でもまだウイルスが残存していることがわかりました。

重症化して入院した人たちや、入院まで行かなくても症状が強かった人たちではウイルス残存しやすいということもわかりました。

後遺症の仮説

となると、そもそも体内でウイルスがたくさん複製されると、症状が強くなり、一部は重症化し、ウイルス量が多いために長らく排出しきれず残存し後遺症になるという仮説ができてきます。

”組織バンク”

この研究はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で行われました。

UCSFは、世界初の”コロナ組織バンク”を立ち上げました*4

UNSF:コロナ組織バンク

コロナ患者から提供してもらった血液やリンパ節、脊髄液などのコロナ関連の”組織”を保管し研究するのが目的です。

今回この組織バンクをフル活用し、後遺症患者の”組織”をさらに詳しく調べました。

2年後も組織の中に活性あるRNAの断片

すると、感染後2年経ったにもかかわらず、組織内では活性のあるRNAの断片が見つかったのです。その人自体は再感染のエピソードもありませんでした。

つまり、2年間組織で残存していたのです。

結合組織で反応

元々、研究者らは新型コロナウイルスが組織に残存し、組織で免疫反応を起こし(=持続感染)、後遺症を生じていると考えていました。

実際、調べてみても、組織内で長く残存できることがわかりました。

組織に残存した断片に免疫応答

つまり、彼らの考える通り、組織に残存したウイルスの断片に対して、我々の免疫機能が応答して症状が出ているようなのです。

また、一部の組織検体では、検出されたウイルスがいまだに感染力も持っていそうだということもわかりました。恐るべし・・・

日本だって

過去記事でも紹介しましたが、日本の岡山大学の研究者らからも似たような結果*5が以前発表されています。

コロナは全身性疾患

普通のかぜやインフルエンザは局所的な疾患ですが、新型コロナは全身性の疾患であるということを忘れてはいけません。

コロナの侵入口となるACE2受容体は肺だけでなく、血管内皮や腸管にもあります。だからこそ、嘔吐や下痢などの症状を呈する人や、血栓ができやすかったりするのです。

ウイルスを排出しきれないと後遺症

そして、論文の graphic abstract を見るとわかりやすいですが、青色のグラフは後遺症なく回復した人のウイルス量です。

10日未満でウイルス量は完全に0になっています。

しかし、重症化した人(赤い線)や中程度の症状(黒い線)の人たちは一度下がるけど、完全に排出しきれずに体内に長く残っていることがわかります。

これは免疫応答が弱いためではないかとされます。

さいごに

「コロナなったけど、ちょっと熱出ただけ。」という人が結構多いです。

あくまでこれはCMである『個人の感想です』ってやつですね。

オミクロン株になったこと、ワクチン接種が進んだことで、脅威でないウイルスという認識になっていますが、厄介なウイルスであることは変わりありません。

後遺症に関しては、少しずつ解明されつつありますが、まだまだ分からないことも多いです。

しかし、もし今後遺症に悩んでいる人がいたら教えてあげてください。

多くの場合は3か月くらい、長くても1年くらいでほとんど後遺症は治ります。これは、イスラエルが国家レベルで調査*6した研究結果です。

では、また(^^♪