11年前の3月11日、東北地方太平洋沖地震が起き、福島第一原発で事故が起きたことは記憶に新しいです。現在は現場にたまった処理水の問題がよく話題となりますね。
▼処理水の海洋放出▼
日本は、世界で唯一の原爆被爆国です。その日本がどのようにして原発を導入したのでしょうか?
今回は、日本が原発導入した裏側に迫っていきましょう。
マンハッタン計画
第一次世界大戦の後、ナチスが核兵器開発を進めているという情報をアインシュタインらユダヤ系科学者がアメリカのルーズベルト大統領に知らせました。
1942年になり、アメリカはマンハッタン計画という核兵器開発プロジェクトを開始しました。1945年 ヒトラーの自殺⇒ドイツ降伏により核兵器を使う機会が失われました。
しかし、アメリカとしては来たるべきソ連との戦いを前に、原爆の威力を見せつけておきたかった。そして、その被害を受けたのが広島と長崎でした。
それはウラン型とプルトニウム型のわざわざ違うタイプの原爆を使った実験でした。広島、長崎では原爆が落とされ、それぞれ14万人以上*1、7万人以上*2、合わせて21万人以上が亡くなりました。
詳しくは過去記事ご参照ください↓
米ソ冷戦とIAEA
日本に原爆を落としたことでその威力を世界に知らしめたアメリカでしたが、ソ連も遅れながら核実験を進めていきました。ソ連が水爆実験に成功*3するとアメリカは焦りを感じます。世界中が核戦争に巻き込まれる恐れがあるからです。
そこで、アメリカが打った手は、”原子力の平和利用”*4です。
IAEA(国際原子力機関)という組織を作り、世界の核を共同管理し、核兵器に使う原子力をエネルギー資源として利用しようというものです。
実際はアメリカはこの呼びかけにより、他国を出し抜いて核の主導権を握りたかったのです。その後も、ちゃっかり水爆実験などを行なっていました。
日本では反核運動
日本は原爆被爆国です。当然、日本では『反核運動』が根強かったのです。
そんな中、アメリカの水爆実験による第五福竜丸事件が発生しました。
ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験により、マグロ漁業をしていた日本の漁船が大量被曝しました。第五福竜丸の乗組員は帰国後入院しますが、放射能被曝により死亡*5し日本に大きな衝撃を与えました。
これにより日本の反核運動はさらに熱を増したのです。
ソ連らは日本国内の動きに目を付け、反核運動を利用し、日本の共産化を企みました。日本にいる共産主義者たちもヒートアップ。日米両政府はこの流れに非常に危機感を抱きました。
正力松太郎
ここで登場するのが、正力松太郎です。正力は読売新聞の社主で、読売巨人軍を作った人です。
また、正力はCIAの協力者だったことが、後にアメリカの機密文書*6で公開されました。コードネームは"podam"。彼は政界と財界に幅広い人脈がありました。
正力は一度はA級戦犯として巣鴨拘置所に収容されましたが1947年に不起訴となっており、それ以降CIAの工作員として任務を果たしました。
毒をもって毒を制す
アメリカは原発の平和利用で、日本や西側諸国と原発協定を結ぶことで同盟国の結束を固めソ連を牽制したかったのです。
ソ連が一足先に原発の技術提供を東欧や中国に始めており、アメリカは焦りを感じていたのです。
そこで、原子力の平和利用を正力に提案し、正力は首を縦に振りました。
日本は資源がなく、復興による電力不足が生じると貧困がさらに進み共産化に傾く恐れがあると考えたからです。
毒をもって毒を制す。この合言葉を元に原子力の平和利用を日本で大々的にキャンペーンし、反核思想を抑えることになりました。
実は、これらはアメリカによる日本に対する心理作戦だった*7のです。作戦調整委員会の目的は日本での反核を抑え、核の平和利用を受け入れさせることでした。ここに協力したのが正力らです。
読売新聞のキャンペーン
読売新聞は、1953年に日本初のテレビ局である日本テレビを開局、CIAのコードネームはpodaltonです。
1955年から読売新聞と日本テレビで原子力の平和利用キャンペーンが続けられました。その一環として、読売新聞がアメリカから招いた原子力平和利用使節団の特集も組まれました。
するとその年、正力は衆議院選挙に立候補し、国会議員になりました。
人脈の広い正力は経団連にも働きかけ*8、日本の慢性的な電力不足を解消するために原発が必要であると念を押しました。
大々的なキャンペーンとともに日本人の原子力に対する印象は変わっていき、ついには日本に原発が作られることとなりました。
▼福島に原発がある理由▼
原発の別の目的?
約70年の時を経て、今もなお日本では原発が元気に稼働しています。
ロシアによるウクライナ侵攻により再び注目を浴びているのが核の保有の議論です。ウクライナが核を保有していないから容易に侵略されたという考えです。
実は昔はウクライナは世界3位の核保有国でした*9。1994年に保有する核をすべてロシアに移転し核を放棄しました。その代わりに、侵略された場合は英・米・露が支援するという取り決めをかわしました。
しかし、そのロシアが裏切ってウクライナに侵攻し、英・米は助けていません。こちらにも裏切られたのです。
▼ウクライナ侵攻わかりやすく▼
原発を保有することは潜在的に核兵器をもつこととなり、抑止力として働くという考えがあります。
原発の使用済み燃料を核兵器に転用は可能*10とされています。これが自国への侵略を防ぐ一役を買っているのかもしれません。
さいごに
いかがでしたか?
世界で唯一の被爆国である日本では、『核』や『原子力』には強い反発がありました。
しかし、米ソの冷戦において『原子力の平和利用』が進められました。その中で、原発の技術移転というのは同盟国の結束を高める道具となりました。
日本の共産化を防ぐという日米共通の目的は原発の導入により達成されました。日本に対する心理戦略、プロパガンダが功を奏したのです。
その裏にはCIAの協力者である正力らや読売新聞・日本テレビの影響が大きかったのです。
メディアによる洗脳というのは実際あったのですね。
では、また(^.^)ノ
*1:https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/48/9400.html
*2:http://city.nagasaki.ajisai-call.jp/faq/show/3705?site_domain=default
*3:http://nuclearweaponarchive.org/Russia/Sovtestsum.html
*4:https://web.archive.org/web/20070509221500/http://www.eisenhower.archives.gov/atom1.htm
*6:https://www.archives.gov/iwg/declassified-records/rg-263-cia-records/second-release-name-files
*7:https://www.trumanlibrary.gov/library/truman-papers/harry-s-truman-papers-staff-member-and-office-files-psychological-strategy
*8:https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yhal.oj/Mori/Mori1Q/Miscellaneous/IMG_0034.pdf
*9:https://www.nonproliferation.org/wp-content/uploads/npr/pikaye13.pdf
*10:https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20211102/se1/00m/020/056000c