マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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人類の顔がサルと違う理由

私たちヒトの祖先はサルです。

しかし、ヒトとサルの顔を見てみると、大きく違います。

なぜ私たちの顔はサルと違っているのでしょうか?

進化の過程をひも解いてみましょう*1

ネアンデルタール人

約4万年前までユーラシア大陸に住んでいたと言われるネアンデルタール人

大規模な気候変動や、疫病で絶滅し、現代のホモサピエンスにとってかわられたと言われています。

野蛮で残忍な類人猿と考えてこられたネアンデルタール人は、近年の研究では大きく印象が変化しています。

火起こしをし、食料の保存、調理、衣服、装飾品、彫刻にいたるまで幅広い知識と技術を得ていたと考えられています。

また、ネアンデルタール人も言葉を話していた

*2とも考えられています。

そして絶滅はしたものの、現生人(ホモサピエンス)との間での混血があったこともわかっており、現代の私たちヒトにもネアンデルタール人の遺伝子は残っていると考えられています。

ネアンデルタール人の顔の特徴と言えば、骨格がゴツゴツしており、突出したおでこに大きな鼻、頑丈なあごがあります。

現代の人類は、小さく、平たく、より繊細な顔をしています。

この違いはなぜ生まれたのでしょうか?

成長過程の違い

今回、ヨーロッパの研究者らが発表した研究論文*3は、この顔の違いの謎に迫っています。

3Dスキャン、幾何学的モデリング、顕微鏡による表面分析を組み合わせ、研究チームは乳児期から成人期にかけての顔の骨の発達をマッピングしました。

すると面白いことがわかりました。

現代人の顔の骨の成長は思春期で止まることを見つけたのです。

一方で、ネアンデルタール人やその親戚のチンパンジーでは、それ以降も骨の形成が続きゴツゴツした頑丈な顔を作り出すのだと言います。

顔の骨の成長が早く止まるので、現代人の顔は相対的に小さくなっています。

ネアンデルタール顔

チンパンジーやネアンデルタール人の顔は前に突き出しています。

私たち現代人はなぜ平たい顔なのでしょうか?

研究者らは世界中から集めた現代人128体、チンパンジー33体、ネアンデルタール人13体の頭蓋骨を徹底的に調べました。

ネアンデルタール人やチンパンジーは思春期以降も顔の骨が形成されていくので、分厚く頑丈となり、徐々に前へと突き出ていきました。

特にネアンデルタール人では、鼻や頬の周りの骨の形成が活発で、大きく突き出た鼻になったようです。

これは、過去の研究*4でもわかっており、冷たく乾燥した空気を温めて湿り気を与えるために進化したようです。

また、賛否はあるものの、硬いものを食べるために強い咀嚼力が必要でありあご周りの骨も発達したとされます。

現代人の平たい顔

それでは、現代人はなぜ思春期で顔の骨の成長が止まり、小顔化したのでしょうか?

専門用語でグラシライゼーション(gracilization)と言うそうで、進化の過程で骨が小さくなることを表します。

なぜ、このような進化をしたのでしょうか?諸説ありますが・・・

人類がどんどんと知恵や技術を習得し、食べ物を柔らかくし食べやすくなったため、咀嚼力がそれほど必要でなくなった点です。

これは有名ですよね。やわらかいものばかり食べる現代人はどんどん顎が小さくなっているってやつです。

あごの骨が小さくなると、それをひっぱる顔の筋肉も小さくて済むため、スリムになっていき、その分だけ、脳が大きくなるスペースもできたのです。

こうして、人類はさらに知恵・技術を発展させることができたというのです。

自己家畜化

もう一つの説も見ておきましょう。

それは『自己家畜化』仮説です。

野生の動物は獰猛でいつ襲ってくるかわかりません。しかし、小さいときから慣れさせて、「敵じゃない」「脅威はないぞ」と教え込み、身の回りに危険がないと穏やかな性格の”家畜”となります。

これと同じことが自然と人類同士でも行っていたのだろうという考えです。

思考・言語を手にした人類は、効率的に狩りをしたり、物を作ったり、傷の手当てをしたり、する中で、仲間との『協力』という強い武器を手に入れました。

この”人間社会”で生きる中で、自分たちに脅威となる”人”は淘汰されていきます。

こうした自己家畜化により、仲間への思いやり・信頼がすすむことで、攻撃性を落とし、男性ホルモンの1つであるテストステロンが低下し、骨の形成が低くなったという物です。

さいごに

いかがでしたか?

我々現代人がネアンデルタール人と顔が異なるのは、骨の形成に違いがあることがわかりました。

それは、人類が知恵・技術を持ち、仲間と協力し合う”社会”を形成していく中で、より柔らかいものを食べ、衣服や家で寒さをしのぎ、攻撃性をなくす『自己家畜化』をしたことで、大きなあごや、大きな鼻、攻撃的なイカつい顔というのが、段々と必要性が薄れていったということのようです。

また、それらの変化により、脳の容積がさらに大きくできる余地もでき、人類は繁栄したのだと。

おもしろかった。

 

では、また(^^♪