マルチリンガル医師のよもやま話

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北京五輪から学ぶ将来の五輪の問題点

2008年に夏期、そして2022年に冬季の両オリンピックを開催した北京。

今大会もコロナ禍という特殊な環境下で開かれ、ジャンプでの失格者続出や、15歳のドーピング問題や、話題のテニスの彭帥選手とIOCのバッハ会長の対面など話題は多かったですね。

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今回のテーマは今大会から考えるオリンピックの将来です。

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今回はCNNの記事*1を中心に見ていきましょう。

地球温暖化と冬季五輪

ここ最近のオリンピックのテーマは『環境に優しい』です。

地球温暖化が進むと冬の気温も上がり、雪が減るのではないかという予測は我々庶民でも容易にできます。

実際、将来の冬季五輪に関する論文*2では、非常に興味深い予測がなされています。

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21世紀末に冬季五輪にふさわしい環境

温室効果ガスの排出がいまのまま進めば、今世紀末には冬季五輪開催に適した場所は非常に少なく、過去の21開催都市の中でたった1つしかないと。論文読んでみると、その1都市は札幌となってました。

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将来はさらに人工雪に頼るようになる

そして、気温上昇に伴い自然降雪はあまりに不安定なので、将来は人工雪にもっと頼っていくようになるだろうと書かれています。

ま、ここ最近の冬季五輪では、程度の差はあれ人工雪は使われています。てか、一般のスキー場とかもそうですよね。

そもそも適してない?

このように将来的には冬季五輪開催にふさわしい都市は減っていきます。

ところで、今回の北京はどうなのでしょう?

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元々スノースポーツには適さない

雪が必須の屋外会場のある地域は、この冬は特に降水量が少ないのは事実なのですが、そもそも平年も特に冬季五輪に適した環境ではないのです。

会場周辺の年間降雪量が平均で20cmらしく、日本で言えば、埼玉県熊谷市や京都市と同じレベル*3です。

そもそも雪も降らない場所で、冬季五輪を開催する理由がまったくわからないのですが。。。

人工雪の進化

ってなわけで、今回の五輪は、雪が降らない地域なので、人工雪の使用率は90%*4というとんでもない割合。笑

さて、人工雪を作る上で、めちゃくちゃ重要な要素が『気温』です。そりゃそうですね、温度が高いと雪なんて溶けますから。

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北京は氷点下にならない

しかし、北京の2月の気候では氷点下になることはほぼないのです。もちろん山など高地にある会場ではもう少し気温は低いですが。

ところが最近の人工雪は、氷点下にならなくても問題なく作れるようです。

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氷点下でなくても人工雪は作れる

もはや沖縄でも冬季五輪開催できるんちゃう?笑

ただ、僕たちの思うような粉雪や綿雪みたなフワフワではなく、硬いかき氷みたいな雪なんだそうです。

莫大なエネルギーと水

人工雪を作るには通常は、水と圧縮空気を混ぜ込んで空に向けてノズルで噴射します。圧縮空気によって、放たれた水滴が冷却されて細かい氷ができます。さらにその効率を上げるためにヨウ化銀などの核化剤が使われます。

自然雪のようなきれいな六角形ではなく、人工雪は球形になるそうです。

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人工雪を作るには莫大なエネルギーと水が必要

人工雪を作るには莫大なエネルギーと水が必要となります。先ほども書いたように気温が氷点下にいかない北京ではなおさらです。

そしてのIOCの試算によると、今大会の人工雪に必要な水の量は4900万ガロンと。

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北京五輪の人工雪に使われる水の量

つまり、1億8500万リットルで、1億人の1日の飲水量に匹敵する莫大な量ですね。

『持続可能な五輪』

IOCは常々『持続可能な五輪』を謳っています。そして、北京五輪は『最も環境に優しい五輪』と主張しています。本当でしょうか?

これに対してはCNNの別記事*5を参照します。

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自然保護地域に作られたスキー場

延慶のスキー場は元々自然保護地域に指定された場所に作られました。これにより、自然保護地域の生態系は損なわれたという批判があります。

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北京五輪による環境破壊の懸念

また北京原産のヤマネコやノガンの棲家がこの開発により奪われたという指摘*6もあります。

さいごに

いかがでしたか?

今回の史上初の夏季・冬季五輪開催を行った北京。

しかし、北京自体は元々雪の多い地域ではなく、冬季五輪に適した環境ではありません。そのため、90%以上は人工雪で対応しましたが、そのためには莫大なエネルギーと水が使われました。

また、スキー場も環境保全地区を切り開いて作られ、生態系への影響は必須です。

これは将来の五輪を考える上で重要です。

将来的には、地球温暖化により、冬季五輪を開催するには人工雪はさらに重要となります。

また、会場を準備するために新たに森林を切り開くオリンピックは環境に優しく、持続可能なのだろうかという議論が必要となりそうです。

 

では、また(^.^)ノ

 

2月22日は竹島の日

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