マルチリンガル医師のよもやま話

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なぜコロナは夏にも流行するのか

今年の夏もコロナの流行(第11波?)がありました。

現在、世界的にはコロナは、年に2回流行期が来るものと考えられています。

新型コロナ登場から4年半以上経過した今、「年2回の波」が起こる理由について*1現在考えられている理由を学んでいきましょう。

秋冬に流行

通常、呼吸器系のウイルス感染症は主に秋冬に流行します。インフルエンザがわかり易い例です。

もちろん、夏に流行する手足口病ヘルパンギーナといった”夏風邪”も昔からよく知られています。これらは高温多湿が都合がいいウイルスです。

いずれにせよ、多くの感染症は”季節性”があります。

「厄介な冬の感染症」

新型コロナ感染症が始まったとき、多くの科学者は厄介な冬の感染症がまた1つ増えたと考えました。

冬になると、気温が下がり免疫機能が下がること、そしてそういったウイルスが低温・乾燥で活性化しやすいなどといった複合的な理由があります。

冬に風邪をひきやすい理由

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ところが、2020年以降の夏季でもコロナの流行が世界的に見られました。

ウイルスの特性か、人々の行動によるものか、環境の問題か・・・

もしかしたら最初のうちだけで、いずれインフルエンザのように冬だけの流行になるのか・・・

まだまだわかっていないことが多いウイルスですが、「なぜ夏に流行するのか」を考えることが何かヒントになりそうです。

なぜ夏に流行?

一番わかりやすいのは、免疫です。

夏の中盤〜終盤にかけて、冬のワクチン接種または冬の感染でできた免疫(主に抗体)がかなり下がってきます。

時間とともに抗体価低下

そして、そこにウイルス側の”変異”で、さらに感染力が強くなったり、免疫逃避能を持つウイルスが広がります。

感染爆発⇒複製ミス⇒変異

人類の行動変容も影響を与えていそうです。

地球温暖化で年々夏の酷暑がひどくなっております。これは日本だけでなく、世界的に見られる現象です。

それにより、エアコンの効いた屋内にいる時間が増えています。涼しく、湿度も高くない屋内はウイルスにとっては活性化しやすい状況であります。

クーラーを効かせるために、窓はしっかり閉めているので、換気・空気循環が乏しいので、感染者がいれば排出されたウイルスがその空間から散らばりにくいのです。

酷暑で屋内での時間が増える

また夏のバカンスですね。日本人からしたらビックリでしょうけど、欧州では1ヶ月以上夏休み取れたりします。その間に海外旅行に行ったりします。

実際、UNWTO(国連世界観光機関)の統計*2では90年代以降、世界中で国際渡航する人が爆増しています。

旅行中に軽微な症状があっても、時差ボケなどとして軽視されたり、せっかく抑えた飛行機をキャンセルするのはもったいないので、熱あってもロキソニン飲んで旅行へ!という人たちがいるのも事実。

海外旅行で広がっている?!

こういったものの合せ技だろうと考えられています。

ま、最近、電車内でもマスクなし、咳ゲホゲホいますしねー。それが、飛行機内で8時間のフライトとかと考えると・・・( ;∀;)NO!!!!

なぜコロナだけ?

ここまで読むと、「ふむふむ」となるのですが、なぜコロナだけなのでしょうか?

他のインフルエンザとかはどうでしょうか?人間の行動変容が主な要因であれば、他のウイルスも同じようになるはずです。

なぜコロナだけ??

流行期間が少し早く始まったりはありますが、やはり秋冬に流行という年1パターンが主流です。

新型コロナが高温多湿で増えにくい*3ということは初期のころから言われていました。しかし、夏という通常ならば不利な条件でも、コロナは増えます。

これには、感染力の強さが関係していると、アメリカのウイルス感染症専門家アンドリュー・ペコシ氏*4は言います。

新型コロナは夏にも大きな波

感染力が強いため、小さな波ができれば、夏でもある程度大きな波になると言います。

もちろんインフルエンザRSウイルスも夏に存在はしますが、ベースラインがコロナに比して圧倒的に少なく、感染力もコロナほどでないので、大きな波を作ることはないと。

また、感染力が強く、爆発的に感染者が増加すると、ウイルスの複製ミスが起こりやすく、その中でも感染力が更に強く、過去の免疫をかいくぐれるものが、どんどんと幅を利かせていくのです。

ペコシ氏によると、コロナは順応性抜群の”優れた”ウイルスだと。

コロナも季節性に?

2020年以降、世界的に見て、コロナ感染の波は夏にも毎年起きています。

しかし、長期的に見てこのまま推移するかというのは現時点ではわかりません。

多くの公衆衛生の専門家らは、最終的にはインフルエンザRSウイルスのような冬に広がる季節性感染症になるだろうと考えています。

では、なぜ専門家らはそのように考えるのでしょうか?前例を見てみましょう。

スペイン風邪(1918~)

1918年、スペイン風邪が世界的に流行しました。そのスペイン風邪は5−6年かけて、最終的に冬を主とする季節性の感染症となりました。

同じように、新型コロナもいずれ季節性のものになるのではないかと考えられています。

ちなみに、コロナ禍に入って、マスク、ソーシャルディスタンスなどの感染対策が徹底されると、その間にインフルエンザなどの感染症が一瞬消えました。

人間の行動変容とインフルエンザ

人間の活動が再開すると、増え始めましたが、しばらくは季節が今までより早く流行したり不安定でしたね。

東京都のインフルエンザの定点調査を見てみると、去年が異常なのが見て取れますね。

今年(図の赤グラフ)を見るとは、以前のように戻ってきているのかもしれません。

さいごに

コロナ禍に入ってまもなく5年経ちますが、夏・冬の2回大きな波が来ています。

そして、今も決してコロナは終わっておらず、たくさんの死者を出しています。

人口100万人あたりの超過死亡数

これは、国別の100万人あたりの超過死亡の推移を見たものです。

一部の思想の人たちが、ちゃんと理解せずに、『世界一のワクチン接種率のせいで日本では超過死亡が増えている』とか意味不明なこと言うたりしますが、現実は違います。この図が答えです。

南アフリカは接種率35%ほどです、しかも、国民の9割が60歳未満という低リスクなはずの人たちです。その国がどうなっていますでしょうか?

政治観と超過死亡の悲劇

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超過死亡の原因はコロナ関連です。

オミクロン以降も、戦争もないのに、南アフリカでたくさん死者を出しています。

コロナは(少なくとも現時点ではまだ)ナメてはいけません。

今後、インフルエンザのように冬を主体とした年1回の流行になることを願うばかりです。

では、また(^^♪

オミクロンも危険

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