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デンマークの『with コロナ』はいかに?

世界に先駆け、2月1日にコロナに関する規制を完全に撤廃したデンマーク。

あれから、3週間以上が過ぎました。さて、with コロナの道を歩んだデンマークはどうなっているのでしょうか?

デンマークの英字ニュース*1から学びましょう。

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デンマークについて

まずは、基礎知識から。

デンマークは、ドイツの北側に位置しており、首都はコペンハーゲンです。人口は約580万人*2日本の1/20の比較的小さな国ですね。

デニッシュ(Danish)はその名の通り、デンマークのパンで日本でも有名ですね。

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デンマークの基礎知識

あと、北欧といえば、『高福祉』ですね。世界幸福度ランキングでは2016年に1位、2021年は2位*3という高さです。ちなみに日本は56位。。

デンマークも日本と同じく、国民皆保険の制度があります。

つまり、税金がめちゃくちゃ高いけど、その分、医療費や教育費、介護費が無料となることで全般的な幸福度が高い国だということです。

規制撤廃と死者増加

デンマークでは接種率が82%*4と高いことと、オミクロン株(BA.1)及びステルスオミクロン株(BA.2)による医療逼迫は脅威ではないという判断から2月1日以降すべての規制を撤廃し、with コロナを開始しました。詳しくは過去記事をご参照ください。

欧州で規制撤廃の方向へ

www.multilingual-doctor.com

そんな中、「デンマークで死者が急増している」という話は聞いたことがあるのではないでしょうか?

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デンマークで死者が増加

たしかに、規制撤廃後増えているのがわかります。1日当たり30~40人です。

では、他国と比べてみましょう。人口の差をなくすために、人口100万人あたりの死者数で比べます。

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人口100万人あたりの1日死者数

デンマークでは規制緩和後、1日死者数が急増していますね。

一方で、同じくらいにほとんどの規制を撤廃したイギリスは急増していません。イギリスは2月24日に隔離措置をなくし、完全撤廃となります。

話が煩雑になるので今回はデンマークのみにフォーカスします。

SSIの反論

アメリカの疫学者が、この死者数の増加をもとに、デンマークの規制撤廃をTwitterで批判しました。

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アメリカの疫学者のツイート

これに対して、デンマーク感染症対策センター(SSI)は、次のように反論しています。

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『コロナ感染があった死者』

これわかりにくい言い回しですが、どうですか?

要するに、コロナが直接の死因だった人数ではなくて、死んだときにコロナ陽性だった人数に過ぎないと。

これは、日本でもコロナ死者は死亡時に『陽性』の人がカウントされているのは前から知られていますね。

たまたま陽性

デンマークの新聞記事によると、規制撤廃後コロナによる入院患者はめまぐるしく増え、それに伴いコロナ陽性の死者数も増えたと。

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規制撤廃⇒入院患者・死者急増

死者は増えているが、それはその人たちが亡くなる時、またはその直前にたまたまコロナ陽性になっただけだという主張です。

デンマークの基準では死亡した30日以内にコロナ陽性であれば『コロナ死』とカウントします。(※英国では28日以内。どこも似たり寄ったり)

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別の理由で入院して感染

入院中の多くの患者は、コロナ以外の理由で入院し、その後コロナ陽性になったと。これは、コロナの市中蔓延が非常に高い水準であることが原因であり、オミクロン株の毒性が強いというわけではないという説明です。

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米フロリダ『半数は別の理由で入院』

そういえば、1月にアメリカからも似たような報道*5がありましたね。

致死率は増えていない

感染症対策センター(SSI)は、致死率についてホームページで次のように説明しています。

2021年末はデルタ株の影響で75歳以上の死者がみられていたが、2022年に入ってからは致死率は低下し、想定の範囲内になりました。

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オミクロンは致死率低い

陽性者が急増しているのに致死率が低下しているという事実は、オミクロン株が過去のデルタ株などと比べて致死的でないことを意味しています。

基礎疾患が増悪

これも、以前から耳にする情報ですが、オミクロン株自体では死ににくいが、オミクロン株感染により、基礎疾患や元々の状態が悪くなります。

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die of コロナでなく die with コロナ

オミクロン株は、それ自身の致死率が低い代わりに、とんでもない感染力を持っています。それゆえ、感染者数が急増すると、それに伴い一定の死者が出ることは事実です。

また、基礎疾患のある人や高齢者がオミクロン株に感染することで、元々の病状が悪化し、最終的に死に至る『コロナ関連死』が増えるということもわかりました。

さいごに

いかがでしたか?

世界に先駆けて規制撤廃したデンマークではコロナ死者が急増しています。しかし、その死者というのは、多くは別の理由で入院した患者が、コロナ感染を契機に状態が悪くなり最終的に死亡したというものです。

新型コロナウイルスは変異を続け、消え去ることはなさそうです。どこかのタイミングで日本も『社会的終息』の決断が必要です。

その時の問題は、規制撤廃による関連死亡者数の増加を許容できるかどうかです。

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インフルエンザの年間死亡者数

たとえば、日本のインフルエンザによる年間死者数*6は、コロナ前の2015~2019年で約1500~3500人です。

また、インフルエンザに罹ったことで全身状態が悪くなっての死亡も含めた『インフルエンザ関連死』は約1万人とされます。つまり、このくらいの数字は今まで日本社会は許容してきたのです。

今後も、先に進めた国の情報をupdateしていきましょう♪

 

では、また(^.^)ノ