マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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日本人大量失踪の謎

日本人は毎年8万人以上が行方不明*1になっていることをご存知でしょうか?

正直、僕も知らなかったのですが、何度か海外のメディアが日本のこの奇妙な失踪について報道しており、 驚いたことがあります。

今回は、この辺、少し学んでいきましょう*2

蒸発

海外メディアで、日本の失踪について、johatsuという言葉を用いて報じています。

そうです、蒸発です。今年の3月にはドイツのドキュメンタリー映画『蒸発』が日本で公開となります。

これは、日本人の”蒸発”についてのドキュメンタリーです。それほどに、海外の人からすれば、愛する家族や自分の愛着のある町での生活を捨てることは理解しにくく、奇異に見えるのです。

もちろん8万人の行方不明者のすべてが”夜逃げ”なわけではありませんが、大部分がこれにあたると考えられています。

厳格な日本の社会では、『恥』『不名誉』という恐怖文化が根付いています

他にも借金地獄、ストーカー被害、それらから逃れる最終手段の1つとして、突然とその場から消えるのです。

いわば、人生のリセット。

なぜ消える?

人により事情は違いますが、金銭の問題、家族の恥(犯罪など)、失業などが多くの原因です。

自身の経営する会社の倒産は、金銭的問題だけでなく、自身の面子をも潰します。

終身雇用が当たり前だった日本の枠組みでは、その"一生の職"を失うことは死以上の不名誉(←記事の意見)とも考えられます。

取材をすると、会社をクビになり、家族の前から突然消える人や、希望の大学に受からずに消える若者までいることに海外メディアは驚きを隠せずにいます。

彼らを突き動かすものは『恥』という強い感情です。

日本社会では、世間体というものが非情に大きな力を持っています。

生活のあらゆるものが、その世間体に組み込まれており、会社をクビになるとか離婚するとか、何度も浪人するなどのこうした1つの要素でも、その人の人生で大きな汚点と見なされがちです。

また、日本では『他人に迷惑をかける』ことは、大きなタブーなのです。

こうした社会では、1つの汚点でも世間体を気にし、自分の家族に迷惑をかけないために、蒸発することは解決策として使われてきました。

時代とともに、蒸発者の理由も多様化していきました。

失業者以外にも、恋人からのDVストーカーから逃れるための"唯一の手段"として蒸発があるのです。

さらには、うつ病やギャンブル依存者たちが、環境を大きく変えるための最後の手段ともなります。

そして、中には、特段大きな理由はないものの、「新天地での人生リセット」をする人もいます。

夜逃げ後の生活

夜逃げは引っ越しとは違います。新天地に住民票を移しません。移したら見つかるからです。

借金、恥、DV、ストーカーなどから逃げ切れ、束の間の安息をすると、新たな問題が生じてきます。

孤独感、家族を残してきた罪悪感、そして持ってきたお金が段々と尽きていきます。

住民票を移していないので、運転免許や保険証、マイナカードの更新ができません。つまり安定した就職先を見つけるのもかなり難しいのです。

退職後だと、保険証もそのうち使えなくなるので、病院受診も自費になります。

お金がない中で10割負担は厳しく、病院もいけなくなります。

残された家族

続いて、残された家族に焦点を当ててみましょう。

突然、家人が何も言わず姿を消し、えも言えぬ悲しみを感じています。

生きているか死んでいるかもわからない状態で待ち続ける家族の心は空洞になります。

蒸発者との会話を思い出しながら、「私が何か悪いことしただろうか」と自問自答する家族のストレスは計り知れません。

また、家族の大黒柱が蒸発した場合は、これからの生活で金銭面の問題が待ち構えています。借金があったのならなおさらです。取り立てに来られるリスクが。

『夜逃げ』なんてことは、不名誉で恥ずかしく、周りには家族は話せません。出張や単身赴任という言葉でお茶を濁さなければなりません。

警察に相談しようものの事件性がなければなかなか取り合ってもらえず、探偵を雇う人もいますがほとんどは結果は出ません。

残された家族の苦しみは想像を絶します。

夜逃げの真実

自分のいる場所から忽然と消え去るまでの間、どれだけの苦しみや重圧下に置かれていたのでしょうか。

日本社会では、失敗や信頼を失うこと、他人に迷惑をかけることは『大きな恥』とされます。

この厳格な社会で、もうこれ以上生きられないと極限に至ったときの現実的な選択肢が夜逃げなのです。

しかし、取材を通じてわかったことは、夜逃げという”人生やり直しボタン”は幻想にすぎませんでした。現在のストレスから解放されても、さらなる困難が待ち伏せていることがほとんどです。

偽名を使い、住む場所を変えても、その人自身は変わらないのです。

罪悪感、孤独感、過去のトラウマ・・・これらは夜逃げ後も付きまといます。

要は原因となっている病気の治療をせずに、症状の緩和だけをおこなっている状態です。

結局根本的な解決にはならないようです。

アメリカでは?

さて、基本的に疑り深い私は、「日本で大量失踪が異常」とか言うけど、海外本真に少ないの??と考えてしまうのです。

人口が日本の2.5倍くらいのアメリカでの失踪者数を調べてみると・・・

外務省によれば、毎年アメリカでは約56万人が行方不明になる*3そうです。

おいおい、日本の7倍やん( 一一)笑

しかし、これらのうち、50万件ほどは年内に行方不明登録解除されるのです。

つまり、身代金目的の誘拐や、未成年の家出がこれらに当たるそうです。

なので、実際は年間9万5000人くらいがいなくなっているということです。日本の1.2倍くらいなので人口比的には少ないということですね。

さらに、日本のように自らの意思で失踪する人は少ないそうです。

日本では、『プライバシー保護』があまりに強すぎて、本人が拒めば家族ですら住所を知りえないことや、キャッシュレスがそこまで進んでいないので現金で生活できるで、「跡がつきにくい」ということも日本で夜逃げが今も多くいる一因となっているようです。

 

なるほど、夜逃げとは日本社会が生み出した独自の文化なのですな~

 

では、また(^^♪