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【サク読み】アレルギーとアナフィラキシーを学ぼう

アレルギーと言えば、花粉症やアトピーのほか、特定の食物や薬物に対するアレルギーが容易に頭に浮かびます。

ハチに2回刺されたときや、今回コロナワクチンでも『アナフィラキシー』という名前を耳にすると思います。

今回はアレルギーについて少し踏み込んで見ていきましょう。

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過剰な免疫反応

免疫反応というのは基本的には自衛隊みたいなもんです。自分の体という"領地"に外敵が侵入したときに、対抗して領土を守ります。そして、この外敵のことを抗原と呼びます。

自衛隊をが存在するワケ

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当然、空気を吸ったりすると、空気中にたくさんのチリや細菌、ウイルスなどがいるわけですが、別に普段は何もありませんね。

要は、不法入国したテロリストが事件を起こす前に捕まえています。こうして気づかないところで免疫機能が働いているわけです。

アレルギーというのはこの免疫反応が強く出過ぎてしまうことで、皮疹が出たり、くしゃみがでたりの症状を伴います。いわば、過剰な免疫反応です。

アレルギーを起こす原因物質(抗原)のことをアレルゲンと呼びます。ハウスダストや、小麦、甲殻類、ペニシリン、など多岐に及びます。

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アレルギーは過剰な免疫反応

液性免疫のしくみ

外敵である抗原に対して免疫を働かして攻撃するには「こいつは外敵だ」という目印をつけてあげる必要があります。この目印が抗体です。

抗体でマーキングして、援軍に攻撃させる仕組みを液性免疫と言います。

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抗原と抗体

免疫細胞の1つであるB細胞が抗原に合わせて抗体を産生*1し、目印をつけます。すると、その目印を元に他の免疫細胞が抗原を攻撃したり、食べたりしてくれるのです。

そして、一部の免疫細胞は”免疫記憶*2としてリンパ節などに残り、次回同じ抗原が来た時に迅速に対応できるようにします。

免疫グロブリン

さて、抗体にもその性質により、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEと5種類*3に分かれます。

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IgGとIgM

一般的に細菌やウイルス感染すると最初にIgMが産生されて、遅れてIgGが主体となります。IgMは1か月ほどでなくなりますが、IgGは数か月~数年残ります。

コロナワクチンで『抗体ができた』とか『抗体いつまで残存?』と言われるのはIgGのことです。

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IgAとIgE

粘液の免疫に関与するのがIgA、そしてⅠ型アレルギーに関与するのがIgEです。目や鼻から感染するのは粘膜からの侵入ですから、そこにも自衛隊がいるのです。

IgDに関しては役割がよくわかっていません(笑)

アレルギーの分類

医学生のときにクームス分類*4というものを学びました。これでは、大きく4つに分かれます。

Ⅰ型アレルギー

一般的なアレルギーのイメージとなるものはⅠ型アレルギーになります。

これは別名、即時型アレルギーと言い、IgEが関与しており、5~10分ほどで症状が出ることが多いです。ワクチン後に15分待つ理由はこれです。

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Ⅰ型アレルギー

抗原が体内に入ると、抗体と結合し、血管が拡張したり、血管から水分が外に逃げたりします。これにより、手足がむくんだり、蕁麻疹が出たり、痒みが出たりします。

その中でも、強く全身性に症状が出るものをアナフィラキシー、さらに血圧が下がるとアナフィラキシーショックといいます。

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アナフィラキシー

アナフィラキシーの罹患者は日本では200人に1人くらいと言われています。アナフィラキシーショックで亡くなってしまうのは年間10人程度です。

Ⅳ型アレルギー

一般の方になじみが深いアレルギーのもう一つはⅣ型アレルギーです。

Ⅳ型の特徴は細胞性免疫といって、抗体を作らない免疫システムです。T細胞とよばれるものが主体となります。

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Ⅳ型アレルギー

ヘルパーT細胞サイトカインという物質を放出して、殺戮部隊であるキラーT細胞NK細胞を呼び寄せます。するとこの殺戮部隊は、敵が立てこもった基地ごと(癌細胞や、ウイルスに乗っ取られた細胞)次々とぶっ壊していきます。

これはⅠ型のようにすぐには反応が出ず、1~2日かけて反応が出ることから、遅延型アレルギーとも呼ばれます。

うるしで手がカブれる接触性皮膚炎や、腕時計やネックレスで水ぶくれができるような金属アレルギー、ツベルクリン反応などが例となります。

Ⅱ型とⅢ型

少しなじみが薄いのがⅡ型とⅢ型です。さらっといきましょう。笑

通常、液性免疫では、抗体は抗原そのものにくっつき、攻撃を促しますが、私たちの細胞にはくっつきません。細胞ごとぶっ壊すのはさっきやった細胞性免疫ですね。

ところが、Ⅱ型アレルギーでは、抗体が感染した自分の細胞にくっつき(=自己抗体)、攻撃してしまいます。

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Ⅱ型アレルギー

Ⅱ型で有名なのはB型・C型肝炎などです。感染した肝細胞が攻撃され炎症を起こしたものです。

他にも赤血球や血小板に自己抗体ができて、破壊されてしまう病気や、ペニシリンアレルギーもこのⅡ型に含まれます。

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Ⅲ型アレルギー

Ⅲ型はさらに補体と呼ばれるものが登場します。その名の通り、助っ人です。

抗原+抗体+補体の免疫複合体が血流に乗り、いろんな臓器で傷害を起こすものです。膠原病などでよくみられるタイプです。

アレルギーは増えている

日本を含む先進国ではアレルギー患者が増えています。

その理由として注目されているのが衛生仮説*5というものです。

家庭環境が清潔すぎると、アレルギーが増えるというものです。日本でも、戦後衛生面が大幅に改善したことで感染症は減る一方、アレルギーが増えたと言われています。

赤ちゃんの時にイヌを飼っていると喘息になりにくい*6などといった研究もあります。

兄弟がいると一人っ子よりもアレルギー疾患になりにくいなども言われています。菌に曝露する機会が多いからでしょうね。

要は、乳幼児期のある程度の細菌、ウイルスへの曝露が免疫系をしっかりと作り上げ、アレルギーが起こりにくくなるのでは?と考えられています。

 

では、また(^^♪

 

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