マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

MENU

がんワクチンの進歩

人類が長生きするようになり、「がん患者」が増え続けています。

また便利な生活と引き換えに、環境汚染、超加工食品、運動量減少などもまたその増加に輪をかけています。

そんな中、人類は『がんワクチン』も手に入れようとしているようです*1

今回は進捗状況を学んでみましょう♪

加齢と免疫低下

がんが発生するメカニズムについてザックリと確認しておきましょう。

我々の体は日々、新陳代謝で新しい細胞がどんどん生まれています。

それらは遺伝子の設計図をもとに複製して作成されるのです。

しかし、時折、”出来損ない細胞”が登場します。これには、遺伝的な問題が関与する場合もあります。

また、長く生きていくと、様々な”発がん物質”にさらされていることも忘れてはいけません。

こうした影響で、年齢を重ねるごとに、異常細胞ができやすくなります。1日に数千個のがん細胞が作られるともいわれています。

免疫システムががん細胞を排除

我々の免疫機能がしっかりしていると、異常な細胞を見つけて壊してくれるので、それは増殖しません。

50代に入ると、一般的に免疫機能は低くなるターンに入り、帯状疱疹やがんが増え始めます。

そうすると、日々作られる異常細胞を完全に抑える能力が衰えているので、厄介な異常細胞を見逃してしまうと・・・

ということは、免疫機能が若い頃のようにしっかりしていれば!と考えるのが自然ですね。

体が変わる年代

www.multilingual-doctor.com

丸山ワクチン

そんなこんなで、免疫を強化させる方法として、ワクチンという手段が考えられます。

がんワクチンのほとんどは「予防」ではなく、がん患者に接種して免疫を高めて攻撃する「治療」ワクチンです。

実は日本でできた丸山ワクチンというものがあり、聞いたことがあるかもしれません。

丸山ワクチンは、80年前に丸山千里氏により結核の治療薬として開発されました。

その後、結核患者やハンセン病患者に進行性がんの患者が少ないことに丸山氏は気づきました。

丸山ワクチン

そこで結核菌から有害な毒素を除去して作られた丸山ワクチンが、がんの進行抑制につながると考えられました。

医薬品として申請しますが、効果を示すデータ不十分であり認められませんでした。

また、愛知県がんセンターや東北大学が臨床試験を行いましたが、有効性は認められませんでした。

こうした動きに、支持者らは、「扱いが不公平」「わざと承認しない」などと言っています。

どっかで聞いたことあるな、コロナ禍でのイベルメクチンと同じ(笑)

イベルメクチンの闇

www.multilingual-doctor.com

ちなみに、JGOG(婦人科悪性腫瘍研究機構)が1992年から二重盲検の臨床試験を行いましたが、その結果は、丸山ワクチンの方がプラセボ群よりも5年生存率が有意に低かった(P=0.039)のです。

2004年から行った放射線との組み合わせ両方での二重盲検試験でもハッキリした効果は示せませんでした。

なので、効果がはっきりないものは残念ながら承認されません。

万能がんワクチン

さて、今回の話は、フロリダ大学から『万能がんワクチン』の開発に前進したというものです。

がんワクチンと呼ばれるものは、色々開発段階にありますが、その殆どは、がんの中の何か特定のターゲットを自らの免疫に攻撃させるように仕向けるものです。

例えば、デンドレオン社のプロヴェンジは進行性前立腺癌に承認されていますし、コロナワクチンで有名になったモデルナ社のmRNAワクチンは悪性黒色腫や肺癌の治療用で、現在治験の最終段階(フェーズ3)まで来ています。

モデルナとがんワクチン

しかし、これらのワクチンは特定のがんだけが対象になります。

活動性のがんは我々の免疫をだまし、かいくぐり、静かに眠っています。

一方で、今回の万能がんワクチンの仕組みは、mRNA技術を用いて、その眠ったがん細胞をわざと起こして、免疫細胞に認識させて攻撃するというものです。特定のがんの一部をターゲットにするのではなく、免疫システムを刺激させるのです。

万能がんワクチンの効果

今までのマウスの研究では、多くの種のがんで腫瘍の縮小や転移の減少、生存期間の延長が示されています。

現在、既にヒトでの臨床試験を今行っているそうです。

ちなみにもうお気づきかもしれませんが、mRNAワクチンと言えば、コロナワクチンで初めて実用化されましたね。

この方法は免疫を賦活化するのに優れていると考えられており、がん治療への応用が以前から期待されていました。

コロナワクチンで癌治療効果up

実際、mRNA型のコロナワクチンを接種したがん患者では、免疫チェックポイント阻害薬とのコンビで、生存期間が延びるなど、効果が上がると報告されました。

予防ワクチンの開発

ここまで見てきて、みなさんの思っていたイメージとは大きく違ったと思います。

がんワクチンは、治療の1つの武器であり、予防ではないのです。

今回の”万能がんワクチン”についても、治療であり予防ではないです。

現時点で、がんの予防として使われるものは、感染が原因のがんです。

例えば、子宮頸がんワクチンが有名どころですね。

子宮頸がんワクチン打つべし

www.multilingual-doctor.com

実はそれ以外にも現在”予防ワクチン”が計画されているものがあります。

なぜ感染なら予防できるのか、それは相手(原因)がわかっているからです。

近年、遺伝子学はどんどん進み、がんの原因となる遺伝子などが次々にわかってきました。これらのがん抗原を用いたワクチンが考えられています。

そのがん抗原に対して免疫を高めることで、がんの予防につながると考えられています。

で、今回ご紹介した万能がんワクチンは多くのがんに共通するがん抗原を使うとういうことなので、最終的にはこれを用いて予防ワクチンも理論上は作れるというわけです。

ここからは時間をかけて、安全性・効果をしっかりと確認するということになります。

 

では、また(^^♪