マルチリンガル医師のよもやま話

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水道水と発がん性のおはなし

水道水にはカルキが入っています。

日本語で次亜塩素酸カルシウムといい、ドイツ語のChlorkalk からカルキと呼ばれます。

消毒のために、人体に影響のないとされる0.1mg/L〜0.4mg/L程度の濃度で調整されています。

ちなみにドイツなどでは水質がよく、塩素は少なくても大丈夫とのことで、0.05mg/L以下となっているようです。

さて、今回のテーマはカルキとがんについて*1です。

トリハロメタン

水道水に含まれるカルキの問題点として以前から知られていることは、カルキが水中の有機物と反応すると発生するトリハロメタンです。

トリハロメタンは総称で、有名なものでクロロホルム (CHCl3) があります。これなら聞いたことがありますよね。

中枢神経作用もあることから、100年前くらいは吸入麻酔としても使われていました。

しかし、毒性があることがわかり、さらには『発がん性物質だろう』とされています。

トリハロメタンとは

現代でも有機溶剤として広く使われており、油性インクやクリーニングの染み抜きなどが有名ですね。

水道水中のトリハロメタン濃度は基準値が設定されており、アメリカでは80ppb未満、EUでは100ppb未満です。

しかしながら、米国環境分化会(EWG) によると、地域によっては最大200ppbほど*2になっているようです。

発がん性

今回、30以上の研究をまとめた大規模な研究*3によると、トリハロメタンの濃度は40ppbを超えると、発がん性リスクとなることがわかったのです。

また、トリハロメタンの摂取は、膀胱がん大腸がんのリスクを上げること、そして男性が特に影響を受けやすいことも報告されています。最近では卵巣がんのリスク増加に関連することも報告*4されています。

つまり、「このくらいで人体に影響はほぼないだろう」として作られた現行の基準では、高すぎるのです。

そして先ほど出てきた米国環境分化会は、人体に安全なトリハロメタン濃度は 0.15ppb 以下だとしています。(ま、それは現実的に無理・・・)

これを満たす水道水なんて当然ありません。

カルキは不要?

発がん性物質が水道水に含まれているとわかると、その原因となるカルキの使用はやめるべきでしょうか?

カルキを入れることで、多くの飲水関連の感染症を大幅に減らしました。

例えば、カルキが使われるようになった1900年代から40年間で乳幼児死亡は約75%減少、小児死亡の約65%を減少させたという記録があります。

腸チフス、肺炎、結核が大きく減りました。

そういう意味ではカルキによる水道水の殺菌は、人類の偉大な業績の1つです。

ここの部分を忘れて、単細胞的に「反カルキ」になってはいけません。

カルキによる水道水の殺菌は現時点でやめるのは非現実的です。

また、カルキ入りの水道水を一生飲んでも、まったく何も異常が出ない人が多く、まれにカルキが原因で病気となる人がいるかもしれない程度としか現在は言えないのです。

どのくらいの濃度の水道水を飲み続けると影響が出るのか、そんなものもわかっていません。

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対策は?

現時点でわかっていることをもう一度まとめましょう。

水道水に含まれるカルキからの副産物でトリハロメタンという物質ができ、それがどうやら発がん性がありそうだと。

いろいろな研究で安全な数値はバラバラだが、だいたい40ppbを超えるとリスクが上がり始めると。

しかしながら、カルキを入れない水道水は現時点では非現実的。

では、どうすればよいか?

もう、普段から水道水をよく飲む日本人はみんな知ってますよね。

沸騰させてカルキ抜きや浄水器を使うだけです。

ただ、沸騰については注意が必要で、沸騰したらすぐ抜けるわけではありません。沸騰直後はトリハロメタンが一時的に3倍以上に増えます。

10分沸騰させたら、ほぼ0になります。

そして、カルキが抜けた水は殺菌作用がなくなっているので早めに飲むこと、お茶にしたなら冷蔵庫へ!

日本はどうなの?

ここまで、アメリカの状況から解説してきましたが、一番の関心は日本はどうなの?ですよね・・・

厚生労働省は水質基準で総トリハロメタンは 100ppb 未満としています。

「え、これじゃ最新知見の40ppb超えてるじゃん!!ヤバい!」

そうでもないようです。100ppbを超えないようにしなさい!としていますが、東京都は50ppb以下、千葉県は30ppb以下、という風に設定しています。

さらに、実際の全国の水道のほとんどのところは20ppb以下で保たれている*5ようです。

つまり、あまり心配は要らないです。

問題は、こうした研究結果を利用して『危険性』という言葉だけを煽り、クソ高い浄水器を買わせるやつらがいるということです。

 

こうした知識を勉強する理由は、「カモにされないため」だと僕はいつも考えております。

では、また\(^o^)/