マルチリンガル医師のよもやま話

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米:小児がん増加の原因は・・・

若年でのがん患者は稀ではありますが、ここ30年程で急に増えていることは何度もご紹介しています。

今回はさらにイヤな話題ですが、アメリカで『小児がんが増えている』という話*1について学んでいきましょう。

小児がんの増加

まず小児がんは非常に稀です。不安になりすぎないようにしてください。

しかしながら、アメリカではここ50年の間で20歳未満の小児がんは35%増加しています。

小児がんでは、白血病脳腫瘍リンパ腫などが多いです。

アメリカで小児がんが増加している

成人のがんは長年の生活習慣などが大きく影響することがわかっていますが、小児がんはまだ『長年』生きてませんからそれらの影響は少ないためです。

遺伝性のものや、血液系のがんが多くなります。

一方で、意外かもしれませんが、同時期に高齢者のがんは減っています。

これは、癌の研究が進んだり、検診の普及により減っていると考えられています。

有害化合物

欧米の17の施設の研究者や医者らが共同で行った研究*2ではある原因が指摘されました。

1950年から比較すると、”有害化合物”の使用は50倍に増えており、さらに2050年までには今の3倍になると予測されています。

この”有害化合物”とは、プラスチック製造などに使われるBPAや、最近日本でも話題のPFASなどのことです。

BPAやPFAS

これらの物質は現在の生活のあらゆるものに使われており、我々も毎日それらに触れたり、含まれた空気を吸っているのです。

今着ている服にも、さっき食べたハンバーガーの包装紙にも、化粧品にも・・・

体内に入ると、ほとんどすべての臓器に広がり、”慢性的な炎症”を引き起こすことで癌化などに関連するとされます。

これらの物質はまた、性ホルモンにも影響を与え、不妊にも関連していると考えられています。

最近の女子は初潮が早い

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ハーバード大学の研究*3ではBPAにたくさんさらされると、早死にのリスクが上がるとしています。

プラスチックの問題点

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胎盤移行

母親の体内に取り込まれたこれらの有害物質が、胎盤を通じて胎児に移行することがわかっています。

胎児はまだ臓器も未熟で、危険物質への対抗措置も備えていません

また、生まれた後も問題は待ち構えています。

赤ちゃんを取り囲むリスク

赤ちゃんの頃はおもちゃなどをしょっちゅう口に入れたりしますね。おもちゃにも合成プラスチックが使われていたりします。

そして母乳にも・・・

母乳からもマイクロプラスチックが見つかっており、それらを飲む赤ちゃんの体内に入るのです。

他にもスウェーデンの研究では、母親がヒ素に曝露されていると、生まれてきた子供が悪性リンパ腫などになりやすいこともわかっています。

タトゥーと悪性リンパ腫

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ヒ素は和歌山のカレー事件で有名になりましたが、自然界にも地殻などに存在しており、日本はヒ素の含有が多いこともわかっています。

米や魚介類とともに我々の体内に入ってきており、日本人は欧米人に比べ摂取量多いです。

『ひじきと米には注意』

ちなみにイギリスでは、ヒジキはヒ素含有多く食べるな*4と、スウェーデンでは米には地中からのヒ素が流れ込み、毎日米を食べるのはリスクが高い*5と国が言っています。

日本政府は、そんなこと言ったら農家の票を失うので、決して言いません。

肺がんのリスクが上がる

さて、ヒ素摂取量が多い喫煙者は肺がんのリスクが上がる*6ことも知られています。

魚を食べることは健康的なイメージがありますが、実際はヒ素がたくさん含まれているのに食べ過ぎると高血圧になる可能性*7も指摘されています。

PFAS

近年、水道水に含まれるとニュースで話題になっているPFAS

PFAS有機フッ素化合物の総称、『フッ素加工』っていうものありますよね、フライパンとかも。

熱に強く、水や油をはじく特性があり、様々な物に使用されています。

妊娠中にPFASに曝露されると、その子が白血病になるリスクが上がるという研究*8*9が発表されました。

妊婦は注意が必要

PFASは環境内や体内で分解するには何千年もかかることから『永遠の化学物質』とも呼ばれます。

防水加工や焦げつきにくい調理器具などについたPFASは、食器などを洗うと水の中に溶け込むし、食物のパッケージにPFASが使用されていれば、食物に付着します。

こうして体内に永久化学物質PFASが入ってしまうのです。

重要なことを最後に!

PFASというのは総称です。つまり、その中には1万種類以上あります。

それらの全てに発がん性が認められているわけではありません。

一部のPFASは毒性がわかり製造禁止になっています。

つまり、いま市場に出回ってるものはそこまで気にしなくてもいいです。ただ、可能ならば避けたらいいんじゃない?ってとこですね。

さいごに

いかがでしたか?

我々の日常生活にありふれた商品に使われる化学物質や、魚や米にたくさん含まれるヒ素などの重金属が我々の体内に蓄積されていきます。

また、妊娠中にこれらにたくさん曝露されると、小児がんのリスクを上げる可能性も指摘されています。

さいごに日本の小児がんの状況について確認しておきましょう。

国内では毎年2000〜2300人発生しており、7500人に1人という割合でやはり非常に稀です。

さらに過去からの推移を見ると、日本では小児がんが増えているというデータはなく、むしろ少し減っています。少し安心ですね。

一方、アメリカでは年間9500人くらいの小児がんが発生し、増加傾向です。

この差の起こる理由はわかりませんが、今後日本でも増えてくるのかなども注視していく必要があります。

 

では、また(^o^)ノ