マルチリンガル医師のよもやま話

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紅茶は救世主だった?

大阪万博でも、英国のパビリオンではアフタヌーンティーを頂けるそうな、そういやなんぁ「写真と違ってショボすぎる」と話題でしたが・・・

この英国=紅茶の面白い話*1を学んでいきましょう~

中国から世界へ

紅茶の歴史について少し復習しておきましょう。

お茶を飲む文化はもともと中国から発展しました。17世紀には近隣のインドスリランカにその文化が入っていたことが、文献から確認されています。

言語学的な話をすると、中国・広東省からシルクロードなど陸路などで伝わった国ではチャやチャイと発音される一方、福建省からで伝わった国々ではテーとかティーになります。

チャ?チャイ?ティー?

ま、日本は陸路(中国→朝鮮)+海路(朝鮮→日本)ですが、スタートは広東省ということで、茶(チャ)ですね。

ちなみに欧州にお茶が入ったのは、日本経由のようです。

鎖国中の日本は長崎県の平戸にオランダ商館があり、そこからジャワ島経由でオランダに入ったようです。

その後、30年ほどかけて徐々に欧州へ広まっていきました。

この頃は、欧州でもみな緑茶を飲んでいたのです。

英国で紅茶人気

英国内でも緑茶文化が浸透していくと、17世紀後半にはアフタヌーンティーの文化が定着していました。

そしてこの頃、植民地であるインドに東インド会社を設立し、アジア貿易の拠点としました。主には香辛料や中国産の茶葉(紅茶)を英国に輸出していました。

この紅茶が英国の貴族で大ウケし、当時は貴重だった砂糖と一緒に飲むなど”お高い薬”として受け入れられました。

ところで、英語で紅茶はred teaではなくblack teaと言います。なぜでしょう?

硬水で入れる紅茶

日本や中国の水は軟水でカルシウムやマグネシウムが少ないので、本来の素材を引き出せ、お茶や出汁などの用途に適しています。

一方、英国の水は硬水で、下痢しやすく飲用に適さないとさえ言われます。

この硬水で紅茶を入れると、苦みが減り、まろやかになり、色が濃くなります。

だから、black teaなんですね。

で、硬水の影響でかなりさっぱりした黒い紅茶に、コクを入れるためにミルクと砂糖を足すミルクティーが英国で人気となりました。

紅茶で死亡率低下?

さて、ここまで見てきたところで本題には入りましょう。

2023年、米・コロラド大学ボルダー校の研究*2*3が話題となりました。

関税が高すぎる

元々、英国で紅茶は富裕層だけの飲み物でした。それは、国が戦争にお金がかかるので紅茶にバカ高い関税をかけて税収としていたからです。

つまり、庶民はなかなか飲めなかったのです。

しかし、東インド会社が借金にまみれており、それを救う目的で紅茶をたくさん売れるように、英国での紅茶の関税を大幅に引き下げました。こうして1784年以降、英国内での紅茶の消費量は爆発的に増えました

東インド会社の危機

同時に、この頃から英国内の死亡率が急減しています。

この時期の英国では、賃金上昇もなく、労働者の生活水準も大きく変化はありませんでした。

長い間、この死亡率の急低下は謎に包まれていました

水質問題

そもそも当時、英国で死亡率が高かった理由は感染症です。

急激に人口が増える中、下水処理がまだまだ発展しておらず、水質は非常に悪く、飲水の感染症で死亡するケースが多かったのです。

しかし、当時は微生物による”感染症”などというものは解明されておらず、誰も水を疑うことはありませんでした。

そこで、研究者らは当時の、川の上流地域、中流地域、下流地域と分けて死亡率などを調べました。

ご察しの通り、上流地域は水質は比較的よく、下流地域は水質が悪いです。

それらの地域ごとに死亡率を確認すると、紅茶習慣が広まった後では、水質の悪い地域で特に死亡率の低下が顕著でした。

アフタヌーンティーで死亡率低下?

要は、水質の悪い下流地域では感染症が酷く死亡率が高かったけれど、紅茶の習慣が定着してから飲水による感染症の死亡率を大きく引き下げたということです。

結核は減っていない

死因なども調べると、赤痢などの水質に関連する感染症では、死亡率が低下していましたが、結核などの空気感染症による死亡率は変化していなかったのです。

さらにもう一つ、紅茶を飲まないような乳幼児を調べると、その年代の死亡率も変化がありませんでした。

まとめると、紅茶が大衆化して以降、紅茶を飲まない乳幼児のを除いて、水に関連する感染症の死亡率だけが大きく低下したということになります。

しかし、結核などの他の感染症は減っていないので、医療水準が大きく発展したわけではありません。

となると、紅茶を飲む習慣が死亡率低下につながったと考えられるのです。

お湯を沸かす習慣が原因

紅茶の葉自体が感染症を減らしたのではなく、意図せず水を沸かす習慣が根付いたことがこの死亡率低下に繋がったようです。

今の時代では当たり前の殺菌方法ですが、当時は誰もそんなこと考えず、ただただおいしい紅茶を飲むのを楽しんだんですね。

 

では、また(^^♪

 

紅茶派?コーヒー派?

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