マルチリンガル医師のよもやま話

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アノ果物でがんリスク半減!?

昔は高級だったけど、今では誰でも食べられるあの果物が、がん予防効果があるようです。

ってなわけで、早速その研究を見ていきましょう。*1

リンチ症候群

遺伝性大腸がんとして知られるリンチ症候群というものがあります。

全大腸がんの数%がリンチ症候群だと言われています。特徴は、①40代での若年発症、②大腸がん発症率80%、③子宮内膜や卵巣などにがんを合併 などがあります。

300人〜500人に1人の割合でリンチ症候群の患者がいると言われています。(日本ではそれよりも少ないと言われています)

リンチ症候群とは

遺伝性(常染色体優性遺伝)であり、親に1人リンチ症候群がいれば、子供は50%の確率でリンチ症候群となります。

このように生まれ持っての遺伝子的影響でがん化しやすいものは防ぎようがないのが現実です。

難消化性でんぷん

大腸がんは食事など生活習慣による影響も大きいことは過去に何度も書いております。

若年性大腸がんの原因?

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遺伝性の大腸がんも当然、外部因子として食事などの生活習慣はある程度影響があると考えられます。

なので、この部分で少しでもリスクを下げよと考えるのが至極当然です。

過去の記事でも書いたように、食物繊維をたくさん摂ることで、腸内細菌で善玉菌を増やし、慢性炎症を減らすことでがんのリスクを下げることができます。

腸内での慢性炎症が悪

今回のテーマはその食物繊維の中でも、難消化性でんぷんというものにスポットライトが当たっています。

これはバナナやオーツ麦、乾燥種子などに多く含まれているもので、小腸では消化されず、大腸で発酵し善玉菌のエサとなります。

短鎖脂肪酸

難消化性でんぷんは発酵する過程で、酪酸などの短鎖脂肪酸を作ります。

研究者らはこの酪酸などの短鎖脂肪酸が、がん抑制作用に働くと考えています。

肝臓でコレステロールから生成される胆汁酸は、腸内細菌により代謝され、二次胆汁酸になります。

この二次胆汁酸が多いと、腸内の炎症が増え、DNAを傷つけるなど、発がん性を持つことがわかっています。

短鎖脂肪酸とは

難消化性でんぷんは、この二次胆汁酸が多くならないように働きます。

これらの働きに目をつけ、英国で1999年から約1000人のリンチ症候群患者を集めた大規模な研究が始まりました。

ランダムに3つのグループに分けられ、①アスピリン600mg投与、②難消化性でんぷん30g投与、③プラセボ投与のいずれかを2年間内服します。

二重盲試験なので、研究者側も被検者側も誰が①〜③のどれを内服しているかわからないようになっています。

さて、どのような結果になったのでしょうか?

アスピリンでがん予防

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「大腸癌リスクを下げない」

3つのグループでの大腸がん及びその他の関連がんの発症率に差はありませんでした。

ま、当たり前ですね。笑 2年間の内服では、さすがに大きな差があるはずないですね。

また、アスピリンによるがん予防は何年もかけて効果があるということもあり、この短期間で結果を判断するのは不適切となりました。

そこで、パワーアップして長期研究に使しよう!ってなわけで、複数の近隣国も含めてがん患者データを受け、最大20年間フォローアップされました。

『大腸癌のリスクは下げない』

その結果として、なんと、難消化性でんぷん自体は大腸がんの発症リスクを下げませんでした!

しかし、大腸がん以外のリンチ症候群関連の併発がん(子宮や卵巣・・・)は50%以上もリスクを下げていたのです。

リンチ症候群の大腸がん自体は防げなくとも、腸内環境を整えることで、併発がんに対して予防効果があるのかもしれないと研究者らは言います。

消化器がん減少

併発がんの中でも、特に消化器がんが大幅に減ることがわかりました。

難消化性でんぷんを定期摂取している群では、胃がん、食道がん、胆管がん、膵がんが少なかったのです。

例えば、プラセボ群ではこれらのがんの併発は4.6%でしたが、難消化性でんぷん摂取群では1.1%だけで、リスクは7割減以上です。

リンチ症候群という発がんしやすい状況を鑑みると、これは非常に大きな結果です。

また、この大規模研究でもう一つ重要なことはわかりました。

アスピリン

過去に当ブログで扱ったアスピリンのがん予防効果です。

なんと、今回の研究では、日常のアスピリン定期内服群では大腸がんのリスクを50%減らしていたのです。

こうした結果らも、遺伝性大腸がん家系などのハイリスク患者にはアスピリンの定期内服が推奨(英国)されています。

ただし、「易出血性」の副作用があるため、誰も彼もが予防内服するのは勧められていません。

低リスク群の予防内服は推奨されない

リスクのない人のアスピリンによる一次予防に関しては、メリットはなく、むしろリスクが少し大きいという研究*2もあります。

これから先、副作用を減らすためさらに低用量で抗がん効果があるかが研究される予定です。

アスピリンでがん予防

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健康な食事から

アスピリン内服の適応はないけど、なんとかがんリスクを下げたい。

そう考えると、複数の消化器がんのリスクを減らせる難消化性でんぷんは、食事から摂れるというメリットがあります。

豆類、玄米やオートミールなどの全粒穀物に多く含まれています。

しかも、ふつうのでんぷんよりも低カロリーという。

難消化性でんぷんはグリーンバナナ長芋にも豊富に含まれています。

ただし、グリーンバナナとは要はまだ熟していないバナナのことで、硬くて苦いんだそうで、生食には向かないと言われています。

加熱して食べやすくしないと、おいしくないそうです。

なので、妥当なところでは、全粒粉パン、パスタ、長芋、豆類を食べるのがよさそうですね

 

では、また(^^♪