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ブースター接種は現時点で『不要』!

(2021/09/25 追記)

9月24日 CDCはブースター接種に対する指針を発表しました。当記事で説明した結論とほぼ合致しています。

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最近よく耳にする、抗体価低下やブースターショット。この辺、スーパーわかりやすく書いていきます(^^)/

少し長いですが、お付き合いください。

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2種類の獲得免疫

まず自然免疫と獲得免疫という2つがあります。

まず自然免疫は元々備わったもので、異物が何であれ侵入有れば即対応し攻撃してくれます。

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自然免疫と獲得免疫

で、次の段階で、侵入者を分析・記憶してその異物に特化した攻撃を行うのが獲得免疫です。感染によって初めて獲得できる免疫という意味です。

そして、獲得免疫はさらに、液性免疫細胞性免疫と大きく2つに分かれます。

1.液性免疫

液性免疫は外敵(抗原)に対して抗体を作り、抗体がひっつくことで"目印"となって他の免疫細胞に敵の位置を知らせます。

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液性免疫とは

血液中に作られた抗体が十分にいれば、次にその抗原が来たら即座に引っ付いて感染を免れます。つまり、体内には入るけど発症しません。

ところが、多くの抗体は数か月~数年で消える、つまり、寿命があります。期間は、抗原により異なります。

ちなみに、生まれたての赤ちゃんはお母さんの色々な抗体をもらったまま生まれますが、6ヶ月ほどで切れてしまいます。だからこの時期に熱を出したりしますよね。

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抗体には寿命がある
1-1 抗体価低下の意味

いま、新型コロナでは半年くらいで抗体価がかなり下がると言われていますね。では、抗体価が下がると、また感染してしまうのでしょうか??

実は、一部の免疫細胞は”免疫記憶”*1としてリンパ節などに残り、次回同じ抗原に曝露されると迅速に抗体を作ります。

つまり、感染後時間とともに抗体価が減るのは当然で、次回抗原に曝露したときに、この免疫記憶でさっと抗体を増やし対応するのです。

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免疫記憶が存在する

抗体価が低下すると感染は起こりやすいですが、免疫がしっかりしていれば免疫記憶により抗体が作られて、重症化を免れるわけです。

1-2 終生免疫

例えば、おたふくかぜの原因となるムンプスウイルスの場合は一度感染すると終生免疫と言って、基本的にはもうかかりません

しかし、かぜやインフルエンザは人によっては毎年かかりますね。この違いは何でしょうか。

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終生免疫が得られるもの

細かい話はすっ飛ばして、インフルや”かぜ”のウイルスは変異しやすく、翌年には違うものになっているので、何度も感染します。変異により抗体がうまく機能しないからです。

一方でほとんど変異しないウイルスは、ときどきそのウイルスに曝露されても、免疫記憶された抗体が出てきて発症しないまま終わることが多く、さらにその度に血中抗体価が高くなるといわけですね。これが終生免疫です。

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終生免疫のメカニズム(イメージ)

一応、新型コロナにも終生免疫獲得できるかもとする研究*2もありますが、変異しやすいものは一般的に終生免疫が難しいとされます。

2.細胞性免疫

獲得免疫のもう一つは、細胞性免疫です。こちらは『抗体』を介さない免疫で、重症化予防に重要な働きをしています。ザックリと、司令塔とアクセルとブレーキの3つのグループに分かれます。

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細胞性免疫の役割

司令塔はサイトカインを放出し応援をどんどん呼び寄せて、アクセルは感染した細胞や癌細胞を細胞ごと壊してしまいます。戦いが終わったら、ブレーキが働きます。

この中でサイトカインの放出が暴走すると(サイトカインストーム)、自らの細胞がやられ、新型コロナでは肺が焼け野原になってしまったり、血栓ができやすくなったりします。尚、細胞性免疫にも免疫記憶があります。

ワクチンの種類

ワクチンを語る上でまず基本としてこの2つは知っておかなければいけません。

生ワクチン

生ワクチンは弱毒化ワクチンとも呼ばれます。この方がイメージはしやすいですね。

BCGやMRワクチン(麻疹・風疹)などが含まれます。

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生ワクチンとは

完全には死んでないものを入れるので、それによりまれに感染することもあります。ですので、免疫不全の患者には使えません。

一方で、メリットもしっかりあります。

実際に感染したときのように免疫反応をするので、液性免疫だけでなく細胞性免疫も獲得できることがポイントです。

それに伴い、効果も高く、持続も長いため追加接種は少なくて済むのです。

不活化ワクチン

不活化ワクチンはその名の通り”死んだ”抗原をいれるわけです。なので、免疫反応は弱く、持続期間も短いのです。普段打っているインフルエンザワクチンはコレです。あと、中国の新型コロナワクチンも不活化ですね。

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不活化ワクチンとは

免疫反応が弱いのと副反応が軽いのは表裏一体です。

次に、不活化ワクチンは手間がかかります。例えば、インフルエンザワクチンは鶏卵を使ってウイルスを増殖*3させる必要がある上に、卵1~2つからやっと1人分のワクチンが作れるのです。

つまり、短期間に大量生産はできないのもデメリットですね。

新型コロナワクチン

そして、新型コロナのパンデミックによりワクチン開発が急がれました。生ワクチンも不活化ワクチンも短期間に大量生産できません。そこで新たな技術に目が向きました。今回は字数の関係でmRNAワクチンのみに言及します。

mRNAワクチン

死者の多い欧米では一刻も早いワクチン開発が使命でした。

mRNAワクチン自体は20年ほどの基礎研究がありましたが、実用化されるのは今回が初めてです。字数の関係でしくみなどは過去記事参照ください↓

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このmRNAワクチンはウイルスそのものを使わない為、ワクチン自体で感染することはありません。しかしながら、実際感染したのと同じように免疫が働くので、生ワクチン同様に液性免疫+細胞性免疫の両方を賦活化します。

ゆえに副反応もかなり強く出ますが、しっかりした免疫ができ、感染予防、重症化予防に高い効果が出ています。

接種後に作られた抗体は徐々に減りますが、免疫記憶で抗体価が下がっても発症や重症化を防ぎます。つまり、抗体価が下がったからと言ってワクチンの効果が切れたとは言えません。

mRNAワクチンの誤情報

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ファイザー”元社長”は嘘

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変異の影響

元々不安定なRNAウイルスであるコロナウイルスが、頻繁に変異しており、ワクチンでできた抗体(武漢型)の効果が低下することが懸念されています。

ただ、変異といってもウイルス自体が完全に変わるわけではないので、完全に無効になることはないと考えられています。

これはスパイク蛋白だけに的を絞って抗体をつくるワクチンの長所ですね。

デルタ株の威力

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もちろん、多少は効果は落ちます。デルタ株ではブレイクスルー感染も起こっていますが、頻度はまれ*4*5です。

また、重症化予防は90%以上保てている*6というのは、免疫記憶がしっかり効いている証拠です。

ブレイクスルー感染

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ブースター接種

現状は『抗体価が下がってる→ブースター』というロジックですね。つまり、感染予防が目的ということです。

つまり、感染したら重症化するリスクがある高齢者や基礎疾患のある人は、感染予防が重要なのでブースター打つべきですね。

それ以外の人は、免疫記憶がしっかりしていて、ワクチンが変異株に対応可能ならば重症化する可能性も低いはずですね?ならば、少なくとも現時点ではブースター不要です。

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ブースター接種不要の条件

というのも、デルタ株出現で有効率は多少落ちましたが、重症化や死亡を抑制*7、つまり、ワクチンも効いてるし、免疫記憶が働いていることが間違いないからです。

今後は免疫記憶がどのくらい長期に保たれるか、抗体がどこまでの変異に耐えられるかを見ていく必要があります。見るのは、重症化抑制の割合です。

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ワクチン2回接種完了者は

つい、先日Lancet誌に掲載された論文*8で、WHOや米FDAの研究者らは、今ブースターをやる必要性は高くなく、接種率が低い国に余剰ワクチンを回す方が全体として利益が大きいとまとめています。

英国のアストラゼネカワクチン開発に携わったオックスフォード大学のサラ・ギルバート教授も、いまでもワクチン効果は十分強く、全員へのブースターは不要*9と主張しています。

さいごに

いかがでしたか?少し長いですが、ご理解はいただけたでしょうか?

今回のmRNAワクチンは、不活化ワクチンと違い、液性免疫+細胞性免疫の両方を誘導します。それゆえ強い副反応が出ますが、効果も非常に高いです。

いま、報道されている『抗体価』というのは、当然寿命があるので下がって当然なのです。免疫記憶が機能していて、大きな変異を起こさない限りは、現時点ではブースター接種は不要です。しばらく様子を見ればよさそうです。

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『抗体価が下がってる』

しかし、免疫が弱い高齢者や、基礎疾患がある人たちは、いざという時に自らの力で抗体産生ができない可能性があります。そういった人はブースター接種が必要でしょう。

では、また(^^♪

 

集団免疫ムリ!接種必要

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