マルチリンガル医師のよもやま話

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日本のお金「円」 ~お金の教養シリーズ~

2024年から日本円お札が刷新されますね。一万円札は東京証券取引所などを設立した渋沢栄一が選ばれました。「日本資本主義の父」とも呼ばれた偉大な人です。来年はNHKの大河ドラマも彼の人生を描いたものを行うそうです。

さて、今日は「日本円」について色々とお話ししたいと思います。

 

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三貨制度からの移行

江戸時代の日本では三貨制度と言って、金・銀・銭の3種類が貨幣として流通していました。3つのお金を交換する必要があり、それにより両替商が発達しました。ご察しの通り、国の中に3つの貨幣があるのはややこしく、さらに偽造金銀銭が多く流通したことで、明治政府としては統一貨幣を作るのが急務でした。

また、四角形のお金では使用により四隅が摩耗し、品質の低下が起こることから、円形の通貨の制定が望まれました。

 

新貨条例

大隈重信らの尽力でついに明治4年(1871年)に新貨条例を制定しました。この条例では以下のような変更が起こりました。

・単位「両」→「圓(円)」

・方形→円形

・10進法のお金

円の下にも補助単位の「銭」と「厘」も導入しました。

もう1つ重要なのは1円硬貨に含まれる金の量を1.5gとし、アメリカ1ドルと同じにしました。これにより円とドルも連動することになったわけです。

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大隈 重信

通貨単位「圓(円)」

この「圓(円)」という単位は中国の単位に由来しています。形が円なので「圓(円)」となったそうです。中国語で「圓」はyuanと発音します。これと同じ発音で「元」というものがあり、こちらの方が画数が少なく楽なので、「元」という単位に置き換わりました。※中国の通貨は「人民元」

ちなみに、韓国の通貨単位もこの「圓」からできており、韓国語の読み方は(ウォン)なので、韓国の通貨は「ウォン」ですね。

さて、日本の通貨「円」は英語表記ではyenですね。これにも歴史が絡んでいます。「円」という字は元々読みは【ゑん】でした。16世紀ごろまでは日本国内では「え」も「ゑ」も発音に区別なく「いぇ(ye)」と発音していました。その影響がしばらく続き、英語表記されたときに「えん」→「yen」と書かれたことが今に残っているのです。

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金本位制とは

外国と貿易をするときに外国のお金の価値と自国のお金の価値は当然違います。不安定な国のお金をもらっても困ります。そこでイギリスで1816年に金本位制というシステムができました。

金(gold)は有限でその価値は世界共通のため、それを使って貿易をしようということです。しかし、実際問題、金(gold)を持ち運ぶのは困難なので、金(gold)と同価値で交換できるお金を作りました。

この金本位制に参加した国々は各国が保有する金(gold)に合わせて通貨を流通させました。こうして、通貨に金(gold)による「お墨付き」を与えました。この制度は当時発展しまくってたイギリスから一気に世界に広まり、日本でも導入されました。

中国をはじめとした東アジアでは銀を用いた銀本位制と言うシステムを使っていました。実は日本はこの銀本位制も一時併用していました。

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管理通貨制度

金本位制はその後100年以上継続されました。

しかし、第一次世界大戦のとき、敗戦国が戦争賠償金を支払う際に金(gold)を用いて支払いました。当然敗戦国の通貨の価値は低いですから、戦勝国は金(gold)で欲しいですね。

そうすると敗戦国の金(gold)の国内保有量が大幅に減ってしまい、金(gold)を国の貨幣の担保として使えなくなりました。つまり、金本位制が維持できない国が増えだしたのです。

日本でも1931年に金本位制は崩壊し、管理通貨制度に変わりました。管理通貨制度とは国が経済状況などを鑑みて紙幣をする枚数を調整するシステムです。

 

戦後の日本円

世界大戦後の賠償金などから金本位制を辞める国々が増えました。その時は米ドルが一番安定しているので、米ドルが金本位制の代わりとなり、各国の貨幣の価値のバランスを保つこととなりました。

固定相場制により日本円も1ドル=360円と決定されました。諸説ありますが「円」は360°なので 360円となったという噂もあります。これは所詮噂レベルです。

その後、米ドルの価値が急落したときに、日本の経済成長期も重なり日本円の価値が高まってきて、1973年に固定相場制から現在の変動相場制に変更となりました。これが、毎日ニュースでやっている、【今日は1ドル=○○円】というものですね。

 

最後に

お金と言う言葉に「金」が使われる理由には諸説ありますが、金本位制を考えたら納得できますね。

ちなみに「銀行」という言葉も日本語に訳すときに「金行」か「銀行」かで意見が割れたようです。記事でも扱いましたが日本は金本位制、銀本位制を併用していました。結局、「きんこう」よりも「ぎんこう」の方が発音がしやすいため銀行になったようです。