マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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『がん保険なんて不要』ほんま?

『二人に一人ががんになる時代』

みなさんはがん保険に入っていますか?

今回から2回に分けてがん保険について学んでいきたいと思います~♪

まず、”がん保険は入るべきか”について考えてみましょう~

『2人に1人が癌に』

40年前と比較すると、癌の罹患者数は3倍弱になっています。

これは、戦後の団塊の世代が癌になりやすい高齢者になったことや、医療機器の発達で癌が見つかりやすくなったことが関係しています。

それだけでなく、ここ20-30年では、50歳未満での若年性癌も増加しています。

若年性大腸癌急増

www.multilingual-doctor.com

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さて、よく生命保険のCMなどで「2人に1人ががんになる時代」なんて言われますね。

『2人に1人ががんになる時代』

これは生涯で”がん”と診断される確率が男性では60%以上、女性では45%くらいで、男女合わせては50%というデータ*1から来たものです。

ちなみに、3人に1人ががんで亡くなります。

これを聞くと、お金の不安が出てきて、がん保険に入ろう!となります。

30歳の場合

冷静にデータで見てみましょう。

例えば、30歳の男性が10年間で何かしらがんと診断される確率は0.5%、50歳までに2%、60歳までには7%です*2l。

30歳男性ががんになる確率

ちなみに80歳になる50年後までみると、がんと診断される確率は42%となります。

つまり、『2人に1人ががんになる』とうのは30代男性にとっては50年以上先の話です。

30歳女性の場合は少し変わってきます。

30歳女性ががんになる確率

先ほどの30歳男性と比べると、若いうちでもがんになる確率が3倍くらい高いのです。

これは乳がん子宮がんが比較的若い年齢でも発生するからです*3

とりあえず男性と比較して女性は若くても癌になりやすいことを頭に入れておきましょう。

がん保険に入るか

自動車保険火災保険はなぜ入りますか?

みんなが入ってるから。笑 

それも正解w 通常の基準は、『可能性はすごく低いけど、もしそうなってしまったらお金キツイよね』っていうのをカバーするものです。

正解はない

なので、お金にかなり余裕があって別に癌になっても治療費も余裕だし休職しても問題ないなら入る必要はありません。

ただ、一般庶民では話は違います。

もし働き盛りでがんになると、今後の事、仕事の事、お金の事、たくさんの不安が一気に転がり込んできます。そんな中で1つでも不安を消してくれる精神安定剤としての意味はあります。

なので、『入っててよかった』という声を耳にするわけです。

がん保険に入った人の声

逆の考えでは、2人に1人は癌にならないので、保険料払うだけになる可能性も50%あるということです。

しかし、『入らなかったらよかった』なんて声はあまり聞きません。

だって、そもそも”保険”とはそういう物だからです。

『後から入ればいい』?

一般にがんになる人が増えるのは50代からです。

すると、今なる可能性は極めて低いから、「50歳くらいになってから加入すればいい」という考えをされる人もいるでしょう。

どうせ入るならば若いうちに

保険会社をナメてはいけません。

彼らは統計学のプロらが集まって年代別罹患率死亡率から緻密な計算をして、保険料を設定し絶対に大儲けできるようにできているのです。

つまり、『50歳から加入したら得やん』思想の人も見抜かれています。

後から入る方が総支払額多い

計算すると、50歳から加入した場合の掛け金の総額は、30歳から払い続けている場合よりも断然高くなるように設定されているのです。(もちろん54歳とか加入後すぐにがんになれば話は別ですが。)

この2択しかない

「どうせ入るつもりなら若いうちに」 これに尽きます。

がん保険不要論

『Youtubeで勉強してます』っていう意識高い系の若い人たちは増えています。

すると、だいたいそういうコンテンツでは、医療保険不要、がん保険不要という風に言われています。

まずそれは、発信している人らがお金持ちだからです。入院しても収入が減らないとか、貯金が莫大とかです。

お金持ちと一般人は『価値観』違う

10年後がんになって手術して、抗がん剤治療して、しばらく休職・・・

これで子供の教育費、生活費などに何ら影響ないわ~ってくらい余裕のある人は医療保険もがん保険も不要です。

公的医療保険

日本の公的医療保険制度は本当に最強で、現役世代でも3割の負担で治療が受けられます。

で、この公的医療保険には高額療養費制度という物があるんです。これこそが、『医療保険・がん保険不要論』の主たる根拠です。

高額療養費制度とは

例えば、手術を受けたり抗がん剤治療をするとすごい額のお金がかかります。そのうちの3割が自己負担になります。

しかし、それでも病院から『今月50万円』とか請求されたら、どうですか??キツいですね。

なので、収入に応じて、1カ月当たりの医療費の自己負担額の上限があります。

年収500万円なら9万くらい、年収1000万円で17万くらいと、年収1160万以上は28万くらいになります。

さらに言うておくと、公務員の場合は一部負担金が月に2万5000円を超えた分は共済組合から返戻を受けることができるので、実質2万5000円/月 が上限です。

長期の支払いに耐えられるか?

公務員の特例はさておき、高額療養費制度のおかげで月9万円となる医療費が、2-3か月で済めばさほど痛くないでしょうが、もし何年も治療が続くなら大きな負担になる人が多いです。

進行癌抗がん剤を長期にいく場合などは、年収によりますが年間100~300万円以上の自己負担がかかりることもあります。

また、ニュースでご覧の通り、この高額療養費上限引き上げの検討がされています*4。将来的には段階的に上げるでしょう。

給料どうなる?

次に給料についても考えてみましょう。

会社員の人は、雇用中にがんになって仕事を休むことになっても、受けられる保証があります。

まず、有給休暇をフルに使って給料をもらいつつ、消化しきれば『休職』にし、手続きをすれば、傷病手当金(標準報酬日額の2/3)を最長1年6カ月受け取れます。

これは本当に精神的に大きな支えになります。

個人事業主は注意が必要

ただ注意が必要なのは、個人事業主です。

仕事を休めば、収入なし、当然有給なんてありません

さらにほとんどの個人事業主は市町村の国民健康保険に加入しており、傷病手当金という制度がありません!

個人事業主は、もしもに備えて様々なバックアップの準備が必要です。

働くうちは安い定期保険などに入るなどを検討する

セルフがん保険

がん保険入らない場合、どうすればいいのでしょうか?

とりあえず、セルフがん保険をすればいいです。

要は、がん保険がわりの貯金で、今すぐに200万くらいをそれだけのために口座を作っておくだけです。

セルフがん保険

なぜかというと、安いがん保険の保障内容はだいたい、診断一時金100万円入院給付金 5000~1万円/日 くらいです。

がんになって保険で受け取れるのもこのくらいだからです。

口座を分けておくと、いざというときにすんなり使えます。

口座を分けていないと、出し惜しみします。それが人間の"性"です。

まとめ

がん保険に入るべきかという議論は人によって答えが違います。

若い人が癌になる可能性は極めて低いです。しかし、女性は若くても乳がんや子宮がんになる可能性が意外とあります!

日本には、高額療養費制度があり、毎月の医療費には上限があります。

また会社員ならば、有給や加入する健康保険からの傷病手当金も利用できます。

さらに公務員は一部負担金返戻制度があるので、2万5000円/月 以上かかりません。

一方で、そこそこ年収のある個人事業主は、若くしてがんになるとピンチです。

高額療養費の上限も高いし、治療中は当然収入激減です。

これらを踏まえて、保険の基本『可能性は低いけど、なったらお金キツイ』ってのを判断して決めるとよいです。

セルフがん保険も一つの手です★

次回は『がん保険の闇』を学びましょー( ̄ー ̄)ニヤリ

では、また(^^♪