数日前まで同じ職場にいた後輩からリクエストで「日韓通貨スワップ」。
最近は日韓関係が悪くなるにつれて、
日本「延長する気はない」
韓国「日本がお願いするなら結んであげてもいい」
というお互いの子供の喧嘩?みたいなことで、事実上破棄になっている状況です。今回はこの日韓スワップ協定を根本から学んでみましょう。
通貨スワップ協定
アジア通貨危機についてこないだまとめましたね。途上国は経済が順調に行っていても海外での出来事などにより急に輸出が冷え込み不景気になることがあります。
景気がいいときは海外からの資本がどんどん入るのですが、先進国での景気や経済政策に振り回されその後極端に経済状況が悪化、自国通貨が暴落すると、海外からの投資額を返済できなくなるわけです。
こうしてその国の通貨の価値が暴落したときに、お金を融通し合って助け合いましょうというのが通貨スワップです。
▼アジア通貨危機についてはコチラ▼
swapと言う単語は「交換する」と言う意味です。
例えば、日米通貨スワップでは、前もって融通し合う交換レートが決まっています。つまり「1ドル=○○円で貸し合いましょう」となっています。
日本が通貨危機になった時はアメリカからドルで、アメリカが通貨危機になった場合は日本から円でお金を貸すことになっています。
日米通貨スワップは額が無制限で、無期限の契約となっています!
円とウォンの関係
これは説明不要かもしれませんが、円はドルやユーロと同じく基軸通貨です。別名国際通貨とも呼ばれ世界的に信用の高い通貨です。
いつ暴落するかわからないような不安定な通貨では取引したい国はありません。なので、取引をするときはこのような国際通貨で行います。
ですので日韓の貿易の大半はウォンではなく円で行っています。
ちなみに韓国の外貨準備高は4000億ドルくらいで、日本は1兆2500億ドルくらいなので韓国の3倍くらい持っているわけですね。主にはアメリカの国債として持っています。
日韓通貨スワップ協定
日本銀行と韓国銀行(つまりお互いの中央銀行)がこのスワップ協定を結んだのは2005年です。
1997年にアジア通貨危機でかなり痛い目にあった韓国は、その再発予防としてこういったスワップを結ぶことが重要課題でした。
この通貨スワップは韓国にはさらにメリットがあります。
それは、「円」という保険です。韓国の経済状況が悪くなっても、安定した日本の「円」が借りれるからウォンが大暴落する心配はないのです。
この「有事に円を融通してもらえる」という”保険” を手にしたため、韓国は海外からの投資を受けやすくなりました。
日本はメリットなし?
「はっきり言ってない」これが答えです。そもそもこの通貨スワップは”助け合う”というものですが、実質は日本が韓国を助けるための協定なのです。
「円」は世界で認められる安定した基軸通貨です。
さらに言うと、万が一のことになった時に、日本はアメリカとのスワップ協定により無制限に無期限でお金を融通してもらえるのです。しかもこちらも基軸通貨のドルで!
下記に日韓双方のメリット、デメリットをまとめます。
よく言われるのは『日本にはメリットがなく、韓国にはデメリットがない』。これはこの通貨スワップの基本を知れば正しいことがわかりますね。
日韓スワップの終了
さて、韓国にとっては重要なはずのスワップ協定はなぜ破棄になったのでしょう。理由は単純です。日韓関係が悪くなったからです。
この流れを見ると2005年に日本銀行と韓国銀行でスワップを締結しています。これは上でもありましたが、円とウォンでのスワップでした。
2008年リーマンショックで世界的に不況となり韓国通貨危機となりました。このときに、韓国銀行は日本の財務省に働きかけ、財務省との間で「ドル建て」でのスワップを締結したのです。
その後は、上図の通り、日韓関係が悪くなり、何より天皇謝罪発言では多くの日本人を怒らせました。当然日本側は、スワップ終了期限が来たら延長はしないとし、韓国も「今の状況で延長は不要」として2015年に終了しました。
スワップ終了後の動き
2015年に終了したものの、必要が生じた場合はまた結びましょうというよくわからん感じでいた両国でした。
2015年と言えば、日韓の協力的な未来のために、安倍総理大臣と朴槿恵大統領が慰安婦合意を結びました。これについてはまた別記事で詳しく解説しますが、アメリカのオバマ大統領の仲介の元、国際的に正式な合意です。
「日韓間の慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」
この合意に日韓の両外務大臣がサインした国と国の約束です。
2016年に釜山にある日本領事館前に市民団体により慰安婦像を設置されました。これは慰安婦合意(2015)に違反すると日本は抗議しましたが、撤去されませんでした。
これに日本も怒り、日韓スワップの話し合いは無期限で中断としました。
アメリカとの為替スワップ
2020年3月に韓国銀行はアメリカのFRBという組織と6ヶ月限定で600億ドルの為替スワップを結びました。
この為替スワップは通貨スワップと違って、FRBは韓国銀行経由で韓国の民間銀行に600億ドル貸しつけました。しかも短い6か月後に利子付けて返さないといけません。
今韓国経済は少し傾いており、新型コロナウイルス感染症でさらに悪化しています。アメリカの資本がたくさん入っている韓国にもしものことがあっては韓国にいるアメリカ企業も危ないわけです。
その前に韓国から撤退するでしょうが、撤退前に保持しているウォンをドルに換えたいですよね?それなのに韓国内にあるドルが足りないと交換できません。
それは困るので、今回お金を貸したのが理由だろうと考えられています。尚、アメリカは今回韓国だけでなく他のいくつかの国とも同様の為替スワップを結びました。
ただ、意図的かどうかは別として韓国内の報道では「通貨スワップ」締結とされています。そこはご判断おまかせします。↓
まとめ
いかがでしたか?日韓のスワップ問題が少しお判りいただけましたでしょうか?
日韓通貨スワップ協定は基本的には外貨準備高が少なく、通貨信用度が低い(=外国での経済に影響を受けやすい)韓国を助けるための協定でした。
韓国からしては、経済危機にならなくても、日本の「円」がバックにあるということで海外に安心感を与え投資を増やしてもらえるメリットもあります。
日本には基本的にはメリットはありません。
日本としては韓国が友好国、同盟国であれば、結ぶといったところでしょうか。
韓国も国内の世論を意識していま日本に軟化した態度が取りにくこともあり、なかなか難しい話ですね。