完全に春めきました。昼間もすごく暖かいですね。
さて連日TVの速報で見る「都内で新たな感染者100人」これを見て、あなたはどう考えますか?
「え?今日あったかいのに、嘘だろ?」
「どんどん新規感染者が増えてる、やばい」
色々考えがあると思います。
正直、この速報での新規感染者数のみが独り歩きしているように感じております。今日はその一歩先を見てみましょう!
感染者数速報
さて、連日「新規感染者数」が速報で流れ、東京では昨日過去最多の100人以上、全国で368名が陽性確認されました。
ネットのコメントでは「自粛要請しといてこんなもんかよ!!」とか「暖かくなったらマシになるって嘘かよ」などなどコメントがありました。
まず、今日暖かいから感染者数が少ないは大きな間違いです。
WHOの報告では新型コロナウイルスの潜伏期は最長2週間としていますので、今日の感染者の報告数は主に1-2週間ほど前からあって近日発症したということです。
つまり、先週末に「外出自粛要請」をした結果が反映されるのも、暖かくなったことも反映されるのはまだ先なのです。
今の時期に増えている原因は3/20-22の3連休外出が多かったことです↓↓↓
なので粛々と受け止めて不要不急に外出しないのをしばらく続けることが重要です。
さらに言うと、この時期に欧州に旅行に行って帰ってきて感染が確認された人たちがいることです。。
検査数が少ない
さらに何度もこのブログで書いていますが日本での現在のRT-PCR検査は「重症者の発見」と「クラスターの発見」に重きをおいているため、(上図で言うとネズミ取り式ですな)無症状者は基本的に検査の対象になっていません。これについては過去の記事を参照してください↓
検査数が少ないので、実際の現役感染者数(検査で陽性)は当然はもっともっといます。ここ最近検査数が増えているので当然陽性者が増えても当然なのです。
感染者が出たときに「先日20人で会食をした」となると、その日の検査数はその20人も一気に増えるわけです。クラスター探しの検査ですからね。
なので、速報での感染者数に過敏に反応するのはナンセンスです。1つの「目安」として、「検査数」と「感染者数」を見ることが大事です。
東洋経済より:https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
東洋経済さんが、厚生労働省のデータをもとに作成されているグラフです。ここ最近はずっとは増加傾向ですね。
検査数が多い日に、陽性者が多いのは当たり前ですね。
※ただし、検査が増えているということは、”感染が疑わしい”人が多くなったということの裏返しともとれますので気を引き締めるためには意味がありますね。
重傷者の割合
速報:100人の新規感染者
この100人が「重症」なのか「軽症」なのかで全然意味が違います。そこまでの報道が望ましいと思います。
今世界のデータでわかってる中で、新型コロナウイルスの感染者のうち8割は無症状または軽症で、残りの2割の人が重症または死亡とわかっています。
ちなみにしつこいですが日本では検査を絞って(ネズミ取り式)いますので、日本での数字を知らないといけません。厚生労働省が公開しているデータ(04/04まで)では・・・
厚生労働省より
まず、RT-PCR検査をした4万2882名のうち、PCR陽性が2935人なので、陽性率は6.84%となります。
厚生労働省より2
基本的には陽性となったら入院などをするという方針だったので、陽性患者(2935人)の大部分は上の表の現在「入院治療を要する」の2227人になっていますね。また、559人は退院しています。
重要な重症患者ですが、「人工呼吸又は集中治療室」は69名で、入院治療中が2227人でしたね?なので計算上、入院患者のうち重症の割合は3.10%となります。海外では20%が重症者でしたが日本では重症は3%ほどだったのです。しかも、検査数が少ないので本当は分母がもっと多く、重症率はさらに低いです。
つまり、速報で「新規陽性患者100名」と出たらだいたい3-4人が重症と考えられます。
死亡率を見てみましょうか。69人で全陽性患者(退院含む)は2935人なので、全陽性患者の2.35%ということになります。
海外の致死率の報告は低いです。なぜなら検査数が多く、無症状の陽性患者も分母に含まれるからです。
3月末に医学誌のランセット(Lancet) に載せられた論文では新型コロナウイルスの死亡率は0.66%(以前の報告は1%)でした。
ちなみに季節性のインフルエンザの死亡率は世界では0.1%くらいで、日本では0.001%で毎年3000人がインフルエンザで亡くなっています。
ちなみにSARSは致死率は約10%、MERSは約35%と相当恐ろしい数字でした。
最終的には殆どが感染
集団免疫(herd immunity)という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか?herdというのは動物の「群れ」を意味します。
この理論は、予防接種の基となる考えで、ザックリ言うと全人口の7割以上が感染したら、その伝染病は広がらなくなるという考えです。
新規感染者が減り続けやがて「収束」するという状況になります。
ドイツのメルケル首相が「最終的に全人口の6ー7割が感染する」といったことは別に恐怖のシナリオではなく、収束前の最終段階は当然こうなるわけです。
つまり収束が来る頃には日本国民も6-7割は既感染しているのです!家がきれいからかからないとか、病気ないからかからないとかそんなの関係ないです。みんな感染しないと免疫ができません。
イギリスは最初「集団免疫に任せる」として外出自粛などを行いませんでした。(その後方針転換をしました。)ところが、これは大きな盲点があります。
最終的にはみんなが感染して収束するというゴールの部分は間違いないのですが、経過がまずいのです。一気に感染者が増えてしまうと医療崩壊を招きます。ゆるやかな増加でないといけません。
集団免疫は方法ではなく、結果として得られるものです。つまりは、外出規制など行いつつゆっくりと増えていった結果、集団免疫となるのです。時間がかかります。
それを早めるのと、重症化するのを避けるために使われるのがワクチン接種です。しかし現在は新型コロナウイルスのワクチンはありません。開発から使用には1年くらいかかるのではと言われています。
マスクと手洗い
ここ最近世界中で広がっている ”マスク着用” と "手洗い" 。CDCやWHOはじめ、アメリカもマスクは不要という姿勢でしたが、先日トランプ大統領は「着けたい人はつけても良い。俺はつけないけどね」と路線変更しました。
マスクは着用だけでの予防効果は低いですが、喉周りの保湿につながります。咳している人がつけるのはマナーだし意味がありますです。飛沫感染で移りますので、他人に飛ばさないという意味で必ず着けましょう。
手洗いに関しては日本人は比較的手洗い文化があるのですが、海外ではトイレのあとも手を洗わない人が結構いるのは有名ですね。僕もアメリカに行った時にトイレに「手を洗うことで手についた大腸菌が減らせます」みたいな張り紙何度も見かけました。
マスクと手洗いは文化の差ですね。
social distancing
最後に social distancingです。これは前も書きましたが、日本にはハグの文化がなくあまり他人とものすごい近くになることはありません。咳・くしゃみでは2mほどツバは飛ぶ(飛沫感染)のでそのくらいは距離を取ったほうがよいとされます。
同じ意味合いで人混み(満員電車やライブ会場)などを避けるのは当然ですね。どうしても電車に乗るときは比較的空いた時間(時差通勤)、空いた車両に乗ることです。
アメリカでニューヨークでは地下鉄通勤が多いことも、自動車通勤が多いサンフランシスコとの感染者数の差があるのも前回やりましたね。
サンフランシスコは早期に外出禁止令を出し、少し対応が遅れたニューヨークとは違い感染をかなり抑え込めました。このsocial distancingは現在世界共通で重要との認識です 。
▼ニューヨークとサンフランシスコの感染についてはコチラ▼
新幹線に乗る必要がある場合は、新幹線自体は常時外気と換気を行っているので、むしろ窓を閉めた自家用車より空気はきれいワケですが、指定席で他の人が周りにいない席を確保しましょう。
気温と湿度~でも長期戦~
一般にウイルス感染症というものは気温と湿度により感染力が変わることは1960年にHemmesさんが実験から証明し、Natureという雑誌に投稿しています。以降はウイルス感染の常識とされています。
低温でウイルスは活性化します。だから人間は熱を出してウイルスが生きにくい温度にします。
また湿度は50%を超えると、ウイルスは水分をまとい重くなるので地面に落ちる活動性が下がるし、多く死滅するされています。60%を超えてくると部屋にカビが生えやすくなるので注意しましょう。(笑)
3月はじめに中国から出た論文で”High Temperature and High Humidity Reduce the Transmission of COVID-19” というものがあります。
高温・高湿で新型コロナ感染が減るという意味です。この研究内では別の種のコロナウイルスを使用していますが、かなり有力な情報です。アメリカからも同様の報告があります。
今後日本は温度も湿度も上がり、梅雨になれば感染はマシになるのかもしれません。
ただし勘違いしてはいけないのは暑くなっても感染が0になるとは誰も言うていません!!しかも上でも書きましたがこのような感染症が収束するのは7割の人が感染するかワクチンができるまで時間稼ぎをして射つしかしなければいけない長期戦なのです。
あと、今ブラジルで感染者が増えていることからも気候だけでなく、医療水準、生活環境なども大きなファクターであることは間違いないです。
WHO「わからない」
WHOは気温が高くなって湿度が上がればコロナ感染は落ち着くかとの問いに、「わからない。そうならない可能性がある」と言うてましたね。
ただ、これはしゃーないんです。立場上。
WHOが「熱く湿った夏になったら大丈夫でしょう」と言ってもしそうならなかったら大ブーイングを食らうわけで、そのリスクを避けるために、「新しいウイルスなのでわからない」と。考えると納得できそうです。
BCG
これも何度かこのブログでも出てきました。
▼BCGについてはコチラ▼
これはもともと結核の免疫をつけるためのものでしたが、最近別の感染にも効果があるのではないかというオフターゲット効果が注目を浴びています。
面白いのは確かにBCGワクチンを定期接種にしている国(日本、中国、韓国、香港、シンガポール、ポルトガルなど)は感染者が少なく、接種をしていない国(イタリア、スペイン、アメリカ、フランス、イギリス)は多いように見えます。
特に陸続きで隣同士の国のスペイン(死者:1万人)とポルトガル(死者:200人)の差はかなり関連を示していそうな・・・
これについても時間をかけてわかってくるでしょう。
まとめ
連日速報で伝えられる、「新たな感染者数〇〇人」だけで一喜一憂するのはあまり意味がない。
今出ている数字は1-2週間ほど前の状況を反映している。
感染者数を報告するならば重傷者と軽症者の内訳も報道すべき。
温度と湿度の研究からは感染力が弱まることが期待されるが、集団免疫の理論から言えば長期戦となる。
いかがでしたか。速報の内容を一歩踏み込んで考えてみると色々考えさせられますね。