マルチリンガル医師のよもやま話

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夫婦別姓問題、少し視野を広げてみると・・・

ここ最近よく耳にする『選択的夫婦別姓』という問題。

正直、僕は男なので関係ないし”興味ない”です。(笑)というと怒られる時代なのかもしれません。(というか、実際ほとんどの人らは今の結婚のシステムに疑問を抱いていないでしょう。)

せっかくなので今回は夫婦別姓について、さらに広い視野で学んでみましょう。

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まずは基本~姓と氏~

現代では多くの場合『姓』『氏』は同じ意味で使われています。

これは日本史を思い出すと大化の改新(645年)以降、律令体制ができ氏姓制度と言うものができました。

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氏姓制度

〇〇氏っていうのが、いわゆる苗字ですな。鈴木とか山田とか。で、姓(かばね)というのは元々は朝廷内での立場を表す、役職でした。有名なものがです。臣をまとめるリーダーが大臣で、これは今の内閣にも続いていますね。

この時代の人物を見ると、苗字と名前の間に『の』が入る人と入らない人がいますね。その違いはご存じですか?

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「の」が入る人、入らない人

昔からの血縁関係の”蘇我”や”源”を名乗っていると、「あーあの、有名な 源一族の!!」というイメージですかね。例えばその源一族の中でも、支配地域や出身地を苗字にした人は「の」をつけずに読みます。これは地縁関係です。

いかがですか、何となく「氏」「姓」「苗字」を理解できましたでしょうか?

朝鮮半島の姓についてはコチラ

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夫婦別氏問題の基本

先ほど学んだように、”夫婦別問題”は歴史的に考えると、正しくは、”夫婦別問題”ということです。

それはさておき、まずは現行の法律を見てみましょう。

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法律ではどうなっているのか?

結婚後の苗字について規定しているのは民法750条と戸籍法74条にあります。要は入籍したら、どちらかの氏を選ばなければいけないということですね。

つまりは、必ずしも女性が苗字を変えなくてもいい!!ただ、日本では慣例的に女性が男性の家に”嫁ぐ”というくらいで、夫の氏を名乗ることが慣習で、実際96%の夫婦が夫の氏を名乗っています。そうすると「女性の人権侵害だ」などとフェミニストたちは主張するわけです。

そう、結婚すると、書類、名札、クレジットカード、口座・・・たくさんの変更手続きが必要になります。それを女性だけに負わせるのはどういうことだ!というわけです。

正直、これだけの問題であれば、夫婦で話し合って、妻の名字にすればいいだけですねw だって、法律上はどちらかの氏を名乗ればいいので。夫が名義変更すればいいです。

海外の状況

海外ではどうなっているのでしょうか?

東アジアは儒教の影響が強く残っており、血縁を重視します。つまり、夫婦は血はつながっていないので別”氏”であるべきと考える国が多いのです。韓国ドラマを見ると夫婦別氏なのがすぐわかりますね。子供は基本的には父側の氏を名乗ることが一般的ですが、いまは話し合いで母方の氏を名乗ることも可能です。

中国では夫婦別氏・夫婦同氏は選択できます。子の氏は伝統的には父の氏を名乗りますが、韓国同様、母方の氏も選択できるようになりました。

その他のアジアの国々でも夫婦別姓、または選択できるという国がほとんどです。

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海外での状況

 

 また欧州でもすべての国で婚姻後の氏は選択可能としています。アメリカでは、同性婚も含めて、婚姻後の氏は選択できます。子供の氏については、州によって異なりますが、比較的自由に選べるところが多いようです。

こういったこともあり、日本も世界のように結婚後の氏を選択できるようにすべきではないかということが今の問題です。

家制度

さて、世界で唯一、婚姻後夫婦同氏としている日本はなぜこうなったのでしょう?先ほども書きましたが儒教の影響があれば夫婦別氏となるはずですね。その理由は、家制度にあります。

1898年(明治31年)に制定された民法の中で、『家族』とはどんなものであると規定されたものが家制度です。要は、1つの家(=戸籍)を単位として、その構成員について書いています。家の主を戸主と呼び、その他のメンバーを家族と呼びます。戸主に統率権限を与えました。

『親父が言うことは絶対だ』とかいうやや古風な考えは戸主で絶対権があるからなんですねー。

この家制度では、結婚した女性はその”家”(=戸籍)に入るので、わかりやすく、みんな同じ氏とするべきであるよね~というわけです。

この家制度自体は、戸主の権限が強すぎるという問題があり、戦後1947年に日本国憲法ができるとともに廃止されました。

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戸籍制度

戸籍制度、かつては中国・韓国・台湾でもありましたが、今は日本のみです。

戸籍制度自体は大化の改新(645年)以降にできました。戸籍を利用して税をしっかりと徴収するシステムが長く続きました。また、今でいう国勢調査のように人口の動態を見るのにも使われていました。

国勢調査についてはコチラ

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そして、近代の戸籍制度の礎となっているのが1871年の壬申戸籍です。当時は欧米列強の脅威の中、近代国家への道を歩む管理体系づくりの一環で戸籍も整備されました。1898年の家制度の考えの元、『家』を単位に管理していました。

第二次世界大戦が終えた後は、家制度を廃止し、夫婦とその子供の2世代を1つの単位とする方式に変えました。

この戸籍制度が昔から脈々と続いていたことで、私たち日本人は家系図を作ることができます。”戦国武将の末裔”であるだとかそういったものも戸籍のおかげでわかるのです。

戸籍のない海外では、日本でいうところのマイナンバー制度、要は”個人”で管理をするわけです。ここは大きな違いですね。

慣習と時代の流れ

ここまで来て、少し話が見えてきたと思います。日本は昔から戸籍という管理方法を用いてきました。これは『家』単位での管理です。世界では、『個人』ごとの管理が主流です。

『家』ごとの管理である戸籍を続ける限り、日本としては ”家族” は同一氏であるべきだし、その方が管理も楽だよね~っていう考え方なのです。

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しかしながらここ最近、女性の社会進出に伴い、女性の権利の主張が強く叫ばれるようになりました。となると、昔の価値観で作られた日本の”慣習”や”文化”は当然合うはずもありませんね。

夫婦別姓を主張する人たちは、実はこの苗字の問題なんてものすごい小さな問題であり、本当の狙いは最終的には戸籍制度の廃止だと考えれます。戸籍のメリットでもある過去をさかのぼれる家系図は、逆に差別などにもつながるからですね。具体例はあえて書きませんが。

また、いずれの主張をする人たちも、それらしい理由を述べますが、必ず表には出さないウラの理由があります。はい。

日本人は”家”を大切にしてきたという伝統と、世界の流れや時代の変化とをうまくバランスを取っていく必要がありますね。間を取って、職場では旧姓利用可などの方法も議論されていますし。

 

では、また(^^♪