マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

MENU

『北朝鮮で女性の地位向上』

ここ最近、韓国では脱北者から得た北朝鮮の現状を公開しており、連日ニュースになっております。

前代の文政権では、バリバリの『北・マンセー(万歳)』主義でしたが、現在の尹政権北に対して強硬姿勢です。

韓国では4月に総選挙があり、今は得票の為には重要な時期です。与党が国民にも北朝鮮の惨状をどんどん出すのも納得がいきます。

さて、今回は北朝鮮で女性の地位向上?との話題*1を見ていきましょう。

李氏朝鮮での身分

いつものように歴史の基礎知識を・・・

李氏朝鮮時代では、前の高麗という国を全否定するために国教であった仏教を排除し、中国モデルの儒教を朝鮮に植え付けることにしました。

なぜでしょうか?理由は統治しやすくするためです。

李氏朝鮮時代

儒教では、男尊女卑地位の上下が明確とされています。上の者に逆らうなんてあり得ない。国を統治するには早急にこの概念を植え付けることが必要とされました。

これにより、男尊女卑、身分の上下が完全に正当化されます。さらに、これに小中華思想事大主義がついてきて中国>朝鮮>日本の図式が出来上がったのです。

これが、日本を毛嫌いする理由の一つ。

小中華思想とは

www.multilingual-doctor.com

さて、次に李氏朝鮮の身分制度を見ていきましょう。

一番偉いのは当然王であり、次いで王族です。

王族の次に身分が高いのは両班(ヤンバン)と呼ばれる人たちです。

ま、こういった豪族は世襲で子供はまた両班、特に義務はなく儒学の勉強だけして科挙に合格すれば維持できるというシステム。納税などの義務もない。

李氏朝鮮の身分

その下に、医師などの技術職である中人(チュンイン)、農民らの常人(サンイン)または良人(ヤンイン)が続きます。ここまでは良民とされる”人間扱い”です。

その下には差別の対象、賤民があり、奴婢(ノビ)と白丁(ペクチョン)があります。犯罪者などは奴婢にされますが、その後、お金を稼いで良民に復帰なんて可能性が残されています。

一方、白丁は一生そのままです。現代の”喜び組”や”風俗嬢”的な妓生(キーセン)や、仏教の僧侶らもこの一番下の身分に置かれました。

奴隷解放

韓国の歴史ドラマを見ると、色鮮やかな服を着ていますが、あれは身分が服ですぐにわかるようにしていました。

朝鮮では儒教を取り入れたことで、国民の管理はしやすくなりましたが弊害もありました。両班ら上級国民は、自分たちに逆らえないことをいいことに、賤民を奴隷として売買してこき使っていました

両班の急増・・・

当初は国民の5-6%と言われていた両班は、19世紀には50%とも60%とも(※諸説あり)膨れ上がっていました。それは、中人らは、後に格上げされることもあったり、お金を積んだりで両班の地位を得るものが増えたからです。

1910年、日韓併合で日本の一部となった朝鮮では、近代化が進みます。

日本は戸籍制度を朝鮮に導入し、今まで”人”でなかった奴婢や白丁らも”人”にしました。そして、教育を受ける機会も与えました。これが、朝鮮半島の身分解放です。

両班の反発と反日

こうなると、これを快く思わないのが、国民の大多数に膨れ上がった特権階級、元・両班の人たちです。

はい、これが、反日の基礎となっています。

実際、伊藤博文を暗殺した安重根両班出身ですね。

『日本人はチョッパリ』

www.multilingual-doctor.com

女性の地位が向上?

やっと、本題。(笑)

儒学だけをやり続けた上級国民・両班が長く支配した朝鮮半島では今でも儒教の影響は大きいです。北朝鮮でも、家父長制で男が偉いとされています。

「女性の地位が向上した」

韓国統一部が公開した報告書によると、脱北者らのインタビューを通じて、北朝鮮で女性の地位が高まってきていることを確認しています。

しかし、何を元に「地位が上がった」と判断しているのでしょうか?

それは、配給です。

配給制崩壊か

長らく食糧難の北朝鮮。一方でアメリカの気を引こうとロケット乱射中。

経済制裁を掛けられ、コロナの影響もあり国民の生活はさらに苦しくなっています。

北朝鮮では貴重な食糧を国が管理し、国民に配給するシステムを取っています。

「金正恩執権以降、配給なんてない」

金正恩がトップになって以降、配給を受けていないという声が圧倒的に多いことからも、配給は実質崩壊していると考えられます。

ある脱北者の発言が紹介されています。

昔は「夫が中心」だった

金正恩のおじいちゃんの金日成のときは、特に商売で金を稼がなくても、夫が配給をもらってくるだけで、食事に困らなかったといいます。

配給は夫を基準に行われるため、まさに”大黒柱”的な存在でした。

『昼間の電灯』

しかし、配給制が崩壊している今、夫の地位はさんざんたるものです。

今の夫は「昼間の電灯」、役立たず

配給ももらえなく、お金も稼げない夫は、家庭内では邪魔者です。昼間の電灯と呼ばれているそうです。

なんで男は稼げないの??と思いますよね・・

当然、北朝鮮の男性は仕事をしています。しかし、多くが国家の仕事や兵役なのです。これの対価として配給があったのですが・・・

今は仕方なく女性が、外に出てお金を稼いできています。多くはチャンマダン(闇市場)ですね。

チャンマダンとは

チャンマダンは禁止されており、警察が監視していますが、結局は賄賂で目をつぶることが多いようです。

離婚できない

家族を養うのが難しいとなれば、唯一の稼ぎ手の女性は離婚を考えることもあるかもしれません。一人でも養う人が減れば子供たちを食べさせられます。

離婚経験者も増えている

しかし、北朝鮮では離婚はそれほど容易なものではありません。

例えば、エリート階級では離婚してしまうと、夫は建設現場などの肉体労働の方へ左遷になります。

離婚は不利益大きい

また、両親が離婚していると、子供の進学や結婚で大きな不利益を得ることになるようです。

家庭内では女性の地位は、夫の地位低下により相対的に上がりましたが、社会における女性の地位は決して上がっていないというのが、韓国統一部の見解です。

さいごに

終戦後、日本から独立を果たした朝鮮半島は2つの国に分かれました。

北側はソ連が支配し、戦前の日本を理想?とした金王朝のための国。そして、南側には資本主義で韓国ができました。

韓国も豊かになり、先進国に仲間入りしそうな水準です。

しかし、背景にはやはりまだ”両班”の体質が残っています。

実際に韓国では、国会議員、公務員、大学教授、財閥一族が現代版両班だと言われています*2

では、また(^^♪