情報機関と言えば、アメリカにはCIA、イギリスにはMI6、イスラエルにはモサドなどが有名です。
日本ではCIA構想がありましたが、新聞・世論の反対が強くとん挫し、内閣情報調査室（内調）という控えめな名前の組織が存在します。
また、韓国では国家情報院があります。今回はこれについて学びましょう。
戦後の韓国
昔は韓国版CIA（KCIA）として知られた組織です。
第二次世界大戦が終わり、日本から独立した韓国の初代大統領は李承晩です。アメリカの反対を無視して竹島を勝手にこっそり韓国領と主張する李承晩ラインを引いた人です。
▼竹島は日本領です▼
で、まぁ、今回はこれは重要でないのでスルーして・・・
この李承晩が初代大統領として韓国を主導していたのですが、朝鮮戦争で北がソウルに攻め込んでくると、市民を置いて真っ先に逃げて、北朝鮮の南進を防ぐため漢江の橋を爆破して、取り残されたソウル市民がたくさん亡くなりました。
また、政治でも大統領選挙でライバル（曺 奉岩）が出てくると、『北朝鮮のスパイ』として処刑したり、日本の漁船を拿捕して漁師を虐殺したり、ムチャクチャだったわけです。
KCIA創設
段々と韓国民も李承晩への不信、怒りが増大し、1960年の不正選挙を機に四月革命が起こると、陸軍の中心人物であった朴正煕が1961年にクーデターを起こし、軍事独裁政権を作りました。
独裁政治となると、暗殺を避けるためにはその危険分子を早く知る必要があります。
ってなわけで、すぐさまKCIAという組織を創設します。表向きは、対北朝鮮諜報機関ですが、独裁に対する反政府運動も厳しく取り締まっていました。
独裁政権を批判する国民は拘束され、拷問を受け、ひどい場合は処刑されることもあり国民におびえられていました。（いまの北と同じやないか。。）
KCIAは韓国民が共産主義に傾倒することを防ぐべく、ある宗教を利用しました。それが統一教会です*1。統一教会は、反日・反共産主義という思想を持つ宗教です。
詳しくは過去記事を↓↓
▼なぜ統一教会が日本に？▼
金大中事件
軍事独裁政権もやはり国民からは当然不人気で、民主化を求める声も大きくなり始めました。その中で有力な政治家が金大中です。
国民からの支持もどんどん急上昇で、1971年の大統領選挙では、朴正煕に僅差で敗れるまで迫りました。
すると、その選挙の直後、金大中を乗せた車に大型トラックが突っ込みました。（映画かよ！）
金大中以外の3名が死亡しましたが、金大中は股関節に障害を持つも奇跡的に命を取り留めました。（映画かよ ！）
これを機に金大中は民主化を成し遂げなければならないと意志をさらに強めました。
そして、金は日本やアメリカの有力者に積極的に会い、人脈を築いていきます。
1973年、講演のために来日していた金は8月8日 ホテルグランドパレスで何者かにいきなり拉致されたのです。
在日韓国人ヤクザ
実は、金は来日時に友人からある忠告を受けていました。
神戸港まで車で連れていかれた後、工作船に乗せられて出港しました。
船に乗ると足に重りをつけられたといいます。要は海に沈めようとしたわけです。
日本政府とアメリカ政府はこの事件を察知し、すぐに行動に移しました。海上保安庁のヘリは工作船を発見し、追跡、威嚇をしたため殺害を断念したようです。
最終的には金はソウルで解放されました。日本の警視庁はKCIAとの関連を発表しました。
2007年、金大中事件にKCIAが関連していたことを韓国内の調査委員会が発表*2しました。
どうやら朴正煕の側近が、朴の信頼を回復し忠誠を見せるために拉致を計画したようです。
朴正煕暗殺未遂
このような民主運動家の拉致殺害未遂が日本で行われ、日本国内では反韓感情が高まっていました。
すると、北朝鮮は、これを利用しました。『反韓日本人が韓国大統領を狙う』というシナリオです。
日本の朝鮮総連から指示を受けた在日韓国人の文世光は、大阪の交番から拳銃を奪い、渡韓しました。そして、1974年 8月15日、日本からの独立を祝う光復節での祝辞を述べ始めた朴正煕大統領。
すると、客席から立ち上がった文が壇上目掛けて発砲し始めたのです。
朴正煕は無事でしたが、隣にいた奥様がその場で命を落としました。文が日本語を話したため、北朝鮮のたくらみ通り、『日本人が朴正煕を狙った』と伝わり、反日感情が爆発しました。
▼ソウル地下鉄と朴正煕暗殺未遂▼
これ以降、北朝鮮は日本を利用した韓国への揺さぶりが有効と考え、日本人拉致をし、日本人に成りすますスパイの養成をしていたというわけですな。
朴正煕暗殺とKCIA
未遂に終わりましたが、独裁政権は恨みを持たれるものです。
朴正煕は頻繁に”秘密の宴”を開いていました。そこにタイプの女性を用意するのもKCIAの仕事だったようです。
そして口の堅い女性を選び、脅迫で口を割らないようにもしていました。
さて、暗殺未遂から5年後の1979年10月、”秘密の宴”の席には、朴正煕、KCIAのトップ金 載圭、大統領の右腕・車 智澈がいました。朴と金は旧知の仲で、金と車はライバルです。
その中で、反政府運動の取り締まりが緩い！だのKCIAをこっぴどく叱責する時間が長く、ライバルの車も「KCIAは無能」と便乗批判。
しびれを切らした金は二人を射殺したという事件です。
KCIAのトップが大統領を・・・という恐ろしい事件が起きました。
国家情報院
朴正煕が亡くなった後、また軍事独裁政権ができました。光州事件で有名な全 斗煥大統領です。
▼光州事件について▼
何度も言っていますが独裁政権は危険分子の監視が重要。特に、朴正煕が身内に狙われた後ですから、さらに注意が必要。
そうして、KCIAはさらに強化され、国家安全企画部になりました。
反発する若者たちの民主化デモは大きくなり、そこにまたまた金大中が登場すると、全大統領は暴動の主導者として金大中を捕まえ軍法会議で死刑判決*3を下しました。（もちろん特赦）
7年後ついに韓国は民主化され、大統領となった金大中は権力の強い国家安全企画部を廃止し縮小した国家情報院を創設しました。
北風工作
もう一つ、政治的に重要な役割を担ってきたことを確認しておきましょう。
韓国の大統領は日本の総理とは比べ物にならないほどの権力があります。つまり、大統領の”お気持ち”に忖度して動かなければいけません。
有名なものは북풍공작（北風工作）というものです。
南北ホットラインで連絡を取り合っているのですが、選挙の前になると北朝鮮に38度線付近で韓国に武力挑発するように依頼していた*4ことがわかっています。
北朝鮮が攻めてくるかもしれない！となると、国民は北朝鮮に融和な態度をとる政党を嫌い、保守の政党が選挙で有利になるからです。
”北風”が吹くと保守が勝つ。
さいごに
いかがでしたか？
今回はKCIA（現・国情院）についてまとめてみました。
映画のようなことが本当に行われていることに驚きました。
情報量が多いのでご注意を♪
では、また(^^♪
*1:https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2022/07/7_1.php
*2:https://www.afpbb.com/articles/-/2302366
*3:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/1980/1980_3.html
*4:金玉斗『政権交代 韓国大統領金大中が闘い抜いた謀略戦』悠飛社、1999年、太刀川正樹 訳 ISBN 4946448578 p188~190
