マルチリンガル医師のよもやま話

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【サク読み】昼に光を浴びましょう

夜寝るときは電気を消して暗くする方が”良質な睡眠”を得られるというのはよく聞く話です。それだけでなく、精神疾患との関連もわかったようです。

概日リズム

”体内時計”なんて風に言われますが、我々の体にも動物にも植物にも約1日のリズム概日リズム)が刻まれています。

過去の研究から人間の概日リズムは約25時間であることがわかっています。

概日リズムの個人差

概日リズムには個人差があり、夜更かしする人は少し長く、早起きする人は短いことがわかっています。

いずれにしても、社会生活での1日24時間と、体内時計は毎日少しずつズレが生じています。

このズレを調整するのが光の刺激だと言われています。

概日リズムと疾患

我々は1日を通して体温が変化し、朝は低く夕方以降に上がってきます。

他にも体内で分泌されるホルモンは時間帯による量が違うことも有名です。

通常は朝起きてから活動が始まるので、それに合わせて血圧が上がるようにカテコラミンが分泌されます。

高血圧の中でも特によくないと言われるのが夜間高血圧で、心血管系イベントのリスクが高くなります。これは概日リズムが狂っているせいで起こります。

ヒトの概日リズム

また、朝起きてから活動しやすくするために、内因性ステロイドが多く分泌されます。夕方になると減ってくるので、気管支喘息などは悪くなりやすいです。(夕方以降は副交感神経が優位になるので気管支が狭くなるのも喘息増悪の原因となります。)

ちなみに、内因性ステロイドは血糖値も高めるので、朝から昼くらいは血糖値が上がりやすくなります。なので、糖尿病患者のインスリン注射は朝に多めに打つのです。

概日リズムの乱れが長期にあると、前立腺癌・乳癌・肺癌・大腸癌などのリスク増加に関連*1していることがわかっています。

昼間に光を

オーストラリアの研究チームが約8万7000人を対象に光への露出と精神疾患との関連について調査*2しました。

すると、夜にたくさん光を浴びた人は、うつ病のリスクが対照群に比べおよそ30%高かったのです。

夜に光をたくさん⇒うつ病リスク増加

一方で、昼間にたくさん光を浴びた人は、うつ病のリスクが20%低下していました。

うつ病だけでなく、全般性不安障害、PTSD、双極性障害など、全般的な精神疾患のリスクと関連があったのです。

昼間に太陽を浴びよう

夜は電気を消して暗くして、スマホやPCのスクリーンタイムも減らし、昼間に太陽の光を浴びることで、概日リズムも微調整し、メンタルヘルスも改善しましょう。

さいごに

いかがでしたか?

時代の流れで、外に出ることが減っています。

外で遊ぶ子供が減ったことでの弊害は色々と言われています。体力の低下もしかり、近視の子供が増えている*3ことなどもしかり。

外に出て太陽を浴びることでメンタルヘルスも改善され、ビタミンDも増え免疫機能の調節もできます。

急速に便利になる一方、人間の体そのものはまだその変化に追いついていないというのが現状ですね。

では、また(^^♪

*1:Shafi, Ayesha A.; Knudsen, Karen E. (2019-08-01). “Cancer and the Circadian Clock” (英語). Cancer Research 79 (15): 3806–3814.

*2:https://www.nature.com/articles/s44220-023-00135-8

*3:https://www.aao.org/eye-health/diseases/myopia-control-in-children