あけましておめでとうございます。
年末に韓国の俳優、イ・ソンギュン氏が麻薬捜査を受けている所、公園の車内で遺体で見つかりました。
世界的にも有名になった映画『パラサイト~半地下の家族~』や『コーヒープリンス1号店』に出演されていました。
偶然、年末、パラサイトの映画を初めてみました(笑)今回はこの半地下にまつわる話をひも解いていきましょう。
漢江の奇跡
朝鮮戦争(1950~)で焼け野原になった韓国は北朝鮮よりも貧しい極貧国でした。
1961年の軍事クーデターで政権を掌握したのが朴正煕(パクチョンヒ)大統領です。
その後、ベトナム戦争特需と、日韓基本条約締結(1965)などで一気に経済成長を果たしました。これがいわゆる『漢江の奇跡』です。
韓国が急に豊かになっていくのを気に食わないのは、北朝鮮です。
北朝鮮が韓国にちょっかいを出すことが続き、南北は一触即発の状態が続いていました。
そして、北朝鮮は、ゲリラ部隊を作り韓国に潜入させる計画を立てました。
青瓦台襲撃未遂
1968年1月、北朝鮮は青瓦台(韓国・大統領府)を襲撃し、朴正煕大統領の暗殺を企てました。
休戦ラインから韓国領内に侵入した北の部隊(31名)は、市民にバレていました。その通報を受け、韓国当局は警戒を強めていたため、青瓦台襲撃は未遂で終わりました。
北の部隊は1人だけ逮捕され、残りは射殺 or 自爆と言われていますが、2人は生きて北に逃げたという説*1もあります。
逮捕された北の少尉は、「朴正煕の首を取りに来た」と証言しました。
大統領ブチギレ
自分を殺しに来たことを知った大統領はブチギレて、北朝鮮に報復することにしました。そこで、アメリカにヘルプを求めました。
しかし、アメリカはベトナム戦争で手いっぱいでした。さらに、北進した挙句、ソ連まで参加してくるとまた大きな戦争になることを恐れ、米軍派遣を拒否しました。
それでも怒りの収まらない朴大統領は、KCIAトップの提案により極秘の金日成暗殺部隊(684部隊)の創設を決めました。
▼KCIAは怖い組織?▼
この684部隊は、青瓦台襲撃未遂の北の部隊と同じ31人で組織し、”斬首作戦”の指示が降りるまで仁川(インチョン)付近の実尾島(シルミド)で訓練をしました。
建築基準法改正
その後も、北朝鮮は韓国に侵入しテロ行為を行いました。
国民を守るために、1970年、建築基準法を改正し、新築の住居には地下に防空壕を作ることを義務付けました。これが半地下の正体です。
北からの脅威もあり、特に北部に位置する人口密集地帯・ソウルではこの半地下防空壕がどんどん作られるようになりました。
南北融和
1970年、アメリカではニクソン大統領が誕生しました。
ベトナム戦争の泥沼化を嫌い、さらにその戦争によりアジア各国との関係を置き去りにしてしまったことを顧み、路線変更をしました。
米軍はベトナム戦争から撤退し、対立する中国と対話をし、緊張した南北朝鮮を和らげるために在韓米軍を縮小するということを行いました。
すると、1971年 北朝鮮が韓国に統一会談を提案し、南北融和ムードができました。
それと同時に684部隊の存在意義もなくなりました。
国としてはこの機密部隊を公にするわけにはいかないので、部隊を実尾島に幽閉しました。この悪待遇に怒った部隊が反乱を起こし、バスジャックして青瓦台に向かったのが実尾島(シルミド)事件です。
半地下の貸し出し
当初は防空壕として作られていたため、そこに人が住むことは禁じられていましたが、南北融和ムードとともに”防空壕”も不要になりました。
1980年代になると、首都・ソウルの人口はさらに増え、住居不足が深刻になっていました。そこで、半地下を賃貸することが認められました。
日光が届かず、常に薄暗く、夏には非常に蒸し暑く、カビが生えやすい劣悪な環境ではありますが、安い家賃で住める半地下は特に若者に重宝されました。
映画により有名になったこの半地下は韓国社会の貧富の差の象徴となりました。
半地下の衰退
防空壕が不要になり、新築で敢えて作る理由はないのですが、住居不足のソウルでは需要があるので半地下を作り貸す人たちがいます。
映画『パラサイト』でもありましたが、豪雨で半地下の家が水没するといったことが実際に起こりました。
2022年8月、ソウル集中豪雨で半地下が水没し、家から脱出できない住民が4人死亡しました。それにより、ソウル市は今後の新築で半地下を作ることを禁止し、既存の半地下物件についても段階的に人が住むことをなくしていくように決めました*2。
具体的には、半地下に住んでいた人たちが住めるような安価な公営住宅を作るなどが案として盛り込まれています。
さいごに
いかがでしたか?
今回はシルミドとパラサイトという2つの韓国映画のつながりを時代背景から考えてみました。
なかなか興味深いものですな~
では、また(^^♪