マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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『タトゥー入れたい』⇒やめとけ

人類が長生きになり、科学技術・医療も発展してくると、「がん」の発見が増えています。

がんは遺伝子の複製エラーにより起こるわけですが、『原因はコレ』と1つではなく、複合的な要素が組み合わさって癌化します。

特定の遺伝子を持つと癌化しやすいや、特定の化学物質(タバコ含む)に長期曝露されるとリスクが上がるなどがわかっています。

今回は、最近ファッション感覚でする人も増えているタトゥーの問題を見ていきましょう。

スウェーデンの研究

スウェーデンにあるルンド大学の研究者らが、がん登録データベースを用いた研究内容を報告*1しています。

2007~17年に悪性リンパ腫と診断された20~60歳の患者からタトゥーの有無や、あればいつ入れたなどを確認しました。

ルンド大学の研究

で、こういう研究で重要なのは、比較です!

対照群といいまして、悪性リンパ腫でない人たちで同じような年齢構成でたくさんの人数を同じように調べます。

まともな研究は、このように対照群を置いて比較しています。これがない研究は、信用度が↓↓↓です。

直近の例では、日本の反ワクチン医師らが書いて、査読のユル~い雑誌に載せて「どや、コロナワクチンで癌が増えたやろ」とやったやつは、対照群も置かずで、結局、「様々な疑義・懸念あり」と判断され、最終的に取り消し*2になりましたね。

”ワクチンで癌急増”論文は取り消しに

これは、『政府の圧力』と『製薬会社の圧力』とかそんなアホなことでなく、純粋に掲載できるレベルでないというだけです。

はい、話は戻って、ちゃんと手順を踏んだタトゥーの研究に戻りましょう。

反ワクチンの正体

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反ワクに狂わされた人生

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タトゥーでリスク増

悪性リンパ腫の診断のある群と、対照群とを比較しています。

タトゥーを入れいている人の割合は、リンパ腫群で21%、対照群で18%とリンパ腫群で多かったです。リンパ腫を患った群では少しタトゥーを入れいてる率が高いですね。

まず、世の普通の人たちの5人に1人は何らかのタトゥーが入っているというのは日本では考えられませんが・・・それはおいておいて(笑)

タトゥーを入れると21%リスク上昇

続いて、タトゥーを入れた人と入れていない人で、悪性リンパ腫の発症リスクを計算してみると、対照群よりも21%増加することがわかったそうです。

時期についても調べられており、タトゥーを入れた後、悪性リンパ腫を発症するタイミングは、2年未満では対象群と比して81%リスク増、11年目以降で19%増でした。

3~10年目については、リスクは高くなっていませんでした。

入れた直後しばらくはリスク高い

この研究からは、タトゥーにより悪性リンパ腫発症に”関連性”が認められました。また、タトゥーを入れて2年ほどはかなりリスクが高くなることもわかりました。

しかしながら、因果関係までは認められていません。

つまり、タトゥーを入れることで、悪性リンパ腫発症のリスクが上がることは確認されたけど、タトゥー自体が悪性リンパ腫の原因とまでは、この研究からは言い切れないという段階です。

メカニズム(仮説)

では、なぜタトゥーを入れると悪性リンパ腫になりやすいのでしょうか?

仮説としては次のように言われています。

そもそもタトゥーのインクには発がん性物質とされるものが含まれています。芳香族第一級アミンやヒ素、クロム、コバルト、鉛などです。

で、インクが注入されると、リンパ球など免疫系が働き、インクを定着させることがわかっています。

タトゥーでリンパ腫の理由?

また、インクがリンパ節に取り込まれるという報告もあり、これによりそこで腫瘍ができればリンパ腫になるからではないかとのこと。

で、タトゥーがカジュアルファッションとなってきた中で、感染症も含め、もう一度そのリスクについても考えるべきだと研究者らは指摘しています。

日本で急増

さて、悪性リンパ腫自体はそれほど多い癌ではありません。

アメリカでの全がんのうち4%程度*3で、10万人当たりの罹患率はずっと20-22人ほどです。

アメリカでは悪性リンパ腫増加なし

そして、過去30年を振り返ってみても特に増加しているようには見えません。

一方で、日本はどうでしょうか?

実は日本では、80年代から急増しており、昔はかなりまれだったのに、現在では10万人あたりの罹患率は29人でアメリカを超えています。

日本では悪性リンパ腫急増

はい、アメリカでは増加していないのに、日本ではこの30-40年で急増しています。

同じような経過をたどっているのが、乳がんです。

昔は少なかったのに急増した、そしてアメリカでは増えていないということから、日本人の生活習慣が欧米化したことが原因の1つとしてとらえられています。

さいごに

タトゥーを入れている人が、入れていない人と比較して悪性リンパ腫になりやすいことがわかりました。

日本では、悪性リンパ腫はこの40年間で急増しており、罹患率はアメリカを超えています。

もしかして、日本人タトゥーを入れまくってるからでしょうか?

アメリカ人で1つ以上タトゥーを入れいてるのは、人口の30%以上と言われています。

一方で日本では人口の3%程度と言われています。

それなのに、日本の方が罹患率が高い・・・となると、タトゥーだけを悪者にするのは間違いです。もっと他の要因があると考えるのが普通ですね。

いずれにしても、リスクを避ける意味ではタトゥーは入れない方がいいですね。

では、また(^^♪