マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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【サク読み】祈りとコロナの関係

コロナ禍など大きな災害が起きると、人々は不安に駆られます。

その中で、何を信じるか・・・それは人それぞれ違うものです。

”計画されたパンデミック”とか”ワクチンにマイクロチップ”とかいう頭おかしい陰謀論はさておき、今回のテーマは”祈り”です。

祈りは効くのか?

今回ご紹介する研究*1は、宗教での”祈り”がコロナ感染者に効果があるのかを調べた、なんともinterestingなブラジルからの研究です。

サンパウロの病院で、コロナ禍初期(2020年9月~12月)のコロナ患者を対象に調査したものです。オミクロン株以前ですね。

この研究の参加者について

この時期に入院となったのは244人でしたが、この中で参加拒否の人(37人)もいます。また、変なバイアスを除くために、超高齢とかガン末期とかで既に衰弱した人たち(8人)は除いています。

というわけで最終的に199人が研究に組み込まれました。

ランダムに祈り群(100人)と通常群(99人)の2つのグループに分けられました。

両群で平均年齢(61-62歳)や性別に偏りはありません。

二重盲試験

そして重要なのは、二重盲試験なので、患者も自分がどっちの群か知らないし、担当医もその患者がどっちの群か知らないです。つまり、意図的な操作はできません。

祈り群

さて、祈り群(100人)は、通常群(99人)と同じように医療行為を受けた上に、教祖様たちからのお祈りが受けられるという特典つきw

教祖様があなたの為にお祈りします

お祈りの時に、「○○さんを救いたまえ」となるので、名前が必要になりますが、さすがにプライバシーの問題があるので、各患者は数字とイニシャルが割り当てられ、それを使って祈祷してもらいました。

コロナ禍なので『テレ祈祷』

本来なら直接病室でパワーをもらいたいですが、コロナ禍初期という背景もあり、テレ祈祷でした。ご自宅からお祈りしていただきました。

また、直接会ってお祈りしてもらうと、患者の心理面でバイアスがかかる恐れがあるのでダメですね。

ここまでくると、うさんくさい新興宗教の臭いがプンプンしますが、論文を読み進めると・・・

プロテスタント系のボランティア

プロテスタント系の聖職者がボランティアで参加してくれたそうです。

これは、失礼しました( ゚Д゚ ;)

ということで、気を取り直してみていきましょう。

80分の祈り

各リーダーは、毎日 朝昼夕と80分ずつ、計240分(=4時間)自宅でお祈りをします。

1日に4時間祈ります

すごい長いですね。各宗教リーダーに何人の患者が割り当てられたかは記載がないのでわかりません。多分、80分の間に担当の患者全員分を祈るということかと思います。

で、次に、どういったことをお祈りするのかについてですが・・・

お祈りの内容

救命、人工呼吸器の回避・早期離脱、早期退院

こういったことをお祈りすることとなっています。

で、最終的に、この祈り群と通常群で、上の図の1~5を比較するというのがこの研究の目的です。

結果発表

さぁ、いよいよ結果の発表です。

死者数・死亡率は変わらない

祈り群も通常群も8人ずつ死亡しました。『死者数、死亡率ともに差はなかった』というのが結果です。

その他の項目については下記のようになりました。

両群で特に差はなかった

集中治療が必要な割合や人工呼吸が必要な割合、全入院期間なども両群で差はありませんでした。

はい、まぁ、当然っちゃ当然ですね(笑)

さいごに

いかがでしたか?

今回の研究は、大規模とは言えませんが、そこそこの数を扱って、二重盲試験を行っているので信頼できるものです。

しかし、捉え方は色々あります。

全く無意味という見方もできれば、やっても悪いことはないとも言えます。

また、今回はコロナ禍初期という特殊な状況であったため遠隔祈祷でしたが、直接パワーを受けたら変わるかもしれません。(しかし、その場合は患者が自分が祈られているとわかってしまうので、心理面でバイアスが)

さらに言うと、コロナでは差はなかったけど、例えば癌など他の病気ではもしかしたら差がある?かもしれませんとも考えれないこともないです。(まどろっこしい 笑)

皆さんはどう考えますか?

 

では、また(^^♪