マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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”最強”なのに使われない旅券

日本のパスポートは『最強』という話をよく聞きますが、実は持っている人は多くないという・・・

今回はこの問題、学んでいきましょう~

日本の関所

いつもながら、少し歴史から行きましょー

治安を守る意味で、よそ者の侵入を取り締まるのは昔からあり、日本国内でも『関所』と呼ばれるものがありました。

江戸時代では『入鉄炮出女』というキーワードを習ったのを覚えていますでしょうか?

江戸の治安を守るために、鉄炮(武器)の流入を防ぐ必要がありました。

入鉄炮出女

また幕府に対する忠誠を確認するためにある”参勤交代”制度で、大名の妻はみんな人質として江戸の中に住むことが義務付けられていました。

なので、江戸から逃げようとする大名の妻(出女)を取り締まる必要がありました。

特別な事情で、この関所を通過するにはそれぞれ鉄炮手形女手形というものが必要でした。パスポートですな(笑)

徳川家康と海外交易

関ヶ原の戦い(1600)で全国統一を果たした徳川家康は、海外と積極的に関わっていこうとしました。

貿易や政治目的で船に乗って海外へ行く場合も、その使いの者が、正式な日本の代表であると示したり、海賊ではなちゃんとした貿易業者であるとお墨付きを与える必要がありました。その役割を果たしたのが”朱印状”でした。パスポート的な。

朱印状

そして、朱印状を持って渡航する船を朱印船と呼び、中国から絹を入手して銀と交換したり、東南アジアで砂糖を入手したりに重宝されました。

ところが、海外と交易を増やすと、海外から物質だけでなく”人”も入ってくるようになりました。

朱印船

中でも、アジアでキリスト教を広めたい勢力が流入したことに幕府は悩んでいました。

勢いを増すキリスト教の布教により、幕府は禁教令(1612)を出し、さらに貿易の管理を徹底しました。

これが、鎖国の始まりです。

現代版パスポート

やっと、本題に(笑)

passport という言葉を見ると、port(港)をpass(通過)するというのがわかります。

要は港(or空港)についてからその国の内部へ入るときの許可証ですね。

現在のような形式が完成したのは、第一次世界大戦後に当時の国際連盟が標準化を提言してからのようです。

で、パスポートの強さを示すパスポートインデックスというものがあります。これは、いくつの国でビザなし入国が可能かを示すものです。

パスポートの強さ

2023年1月の段階で日本のパスポートでは193か国で、5年連続の世界一*1でした。これが『最強』たる所以です。2位には192か国でシンガポールと韓国が続きます。

ところが、2023年7月には日本は韓国とともに189か国となり、3位になりました。

社会情勢も大きく関係

ノービザで入国できるのは、その国の政情が安定していて、現地で多く消費し経済に貢献するなどがあります。あと、重要なのは政治関係です。

仲の悪い国は『ダメダメ』、となるので政情によって数が増えたり減ったりするのです。

大体どこでも行けるけど

政情により、数か国減ったり増えたりしますが、日本の信頼度は高く、常に上位ランキングにいるわけで、大体の国に自由に観光に行けます。

ところが、その”最強パスポート”を持つ日本人はたった6人に1人*2だと言います。

6人に1人しか持っていない

コロナ禍で海外旅行に行く機会がなかってまだその名残か・・・というわけではありません。実は以前から保有率は低いのです。

英国人の86.5%が保有

アメリカ人は約半数が保有、そしてイギリス人は86.5%が保有しています。

ま、アメリカもメキシコやカナダと接してますから日本よりは海外に行きやすいし、イギリスに至っては欧州に近いので往来が多いです。

しかも、2020年にイギリスはEUから離脱したので、近い欧州国へ行くにもパスポートが必要です。そりゃ保有率高いよね。

パスポート保有率

お隣の韓国では42%、日本と同じ”島”の台湾では60%もある*3そうで、そうみるとやはり日本は低いですね。

『国内でも十分』

日本はコロナ前から、訪日客誘致に躍起となっており、観光環境がかなり整備されています。わざわざ海外に行かなくても国内でも十分楽しめるという下地があるようです。

国内でも十分楽しめる

コロナ前の2019年と比較すると、訪日客はだんだんと戻ってきており、ついにはコロナ前を超えました。

一方で、日本からの出国は今もコロナ前の半分くらいです。

出国数はまだまだ (引用・加筆 Bloomberg記事より)

これに関しては、2003年のSARSの時も、世界と比べて日本だけ海外旅行の回復に時間がかかったこともあり、”慎重”な人が多いというのもあるでしょう。

また、インフレや円安により海外旅行が高くなっているというのも大きく関係しているでしょう。

しかし、それ以外にも問題はありそうです。

日本発着便が高い

これは有名ですが、欧州などの飛行機と比較して日本発着の航空券は高いと言われています。

理由は、旅行代理店を通すと手数料がかかりますが、そこの部分が結構高く、航空会社がその手数料を支払うために航空運賃が高めになっています。

代理店の手数料が高い

また日本の空港使用料が高いこともあります。

これは、離発着の多い空港で空港使用料を稼いで、地方にある閑散とした赤字空港を補填しているからです。こんなもん政治家の票の為に無駄に作られた空港ですな( ゚Д゚)

空港使用料が高い

海外ではLCCがいくつも出てきて競争するので価格が下がりますが、日本では奇妙なことが起こっています。

そもそもの大手がJALANAだけしかないので価格が下がりにくい。さらにLCCは出てきても、それに対抗してJALとANAがLCCを作ったりし、新規参入を潰しにかかります。

価格競争が起こらない

ahamoやpovoで楽天モバイルを潰しにかかるのと同じ構図。

そして、経営難に陥るとANAとかJALの傘下に入ることも多く、結局日本では競争力が働きにくいんですね。

休暇が少ない

あと、特に欧州と比較してハッキリしているのが日本人は休みがとりにくいという点です。

祝日の数は多い方なのですが、休暇は圧倒的に少ないのです。

長期休暇が取りにくい

日本人が取得できる休暇の最大の日数は平均で8.76日*4と先進国で最少でした。

逆に一番多いのはドイツで21.17日日本の3倍近いですね。

こういった長い休暇の取りづらさも海外旅行のハードルを上げていますね。

 

では、また(^^♪