マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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米『頼むからマスクしてくれ』

2022年に入って脱・コロナ禍の先陣を切ったのはイギリスなどの欧州と、アメリカでした。理由は簡単、国民の暴発を避けるためです。

長く続くコロナ禍とその規制で、国民たちは苛立ち、元々『マスク=病人』の文化の中では自発的にマスクをつける人は少数派になりました。

今回はアメリカの現状*1を見ていきましょう。

#BringBackMask

マスクをつけるのは病人という認識のアメリカ文化の中で、コロナ死を少しでも減らすためには、『マスク義務』を敷くしかありませんでした

しかし、アメリカは義務や強制を嫌う『自由の国』です。このような制度は長くは続けられません。そうして、2022年はコロナ規制をすべてなくしました。

2022年12月9日 NY市『屋内マスク勧告』

しかし、そのアメリカでTwitterなどのSNSで盛り上がっているのが #BringBackMask (もう一度マスクを着けよう)です。

マスク着用で感染リスク低下

多くの人がマスクをする『ユニバーサルマスク』で感染リスクが減らされることは証明されています。当たり前ですが、感染者の飛沫をある程度抑えるからです。

もちろんこれは実世界のデータでも確認されております。

マスク着用撤廃で感染急増

これはボストンの学校でのマスク着用義務を撤廃した後、すぐにみんなが外した学校群と、しばらく経ってから外した学校群、着用継続の学校群でコロナ陽性者を比較した研究*2です。

マスクをずっとつけていた学校群(黒実線)では常に他のマスクを外した学校群と比べ大きく感染が少ないことがわかります。

インフル大暴れ

今回のアメリカでのマスク回帰の主因はコロナだけではありません。

史上最多のインフルエンザ感染者

1997年まで遡ってもアメリカ史上最多のインフルエンザ感染者数を記録しています。

インフルエンザ爆増(Vox記事より引用)

もちろんコロナ禍を経験して以降、人々の意識が少し高まり、たくさん検査を受けるようになったのも加味しても異常な数です。

また、インフルエンザによる重症者の入院も同じように爆増しています。

インフルエンザ入院患者も爆増

ものすごい勢いで増えていますね。そして、こうなると何が起きるかって?

当然、一定数は死にます。さらに、ベッドが埋まるので以降の重症者患者の入院が難しくなり、他疾患の患者も入院が困難に。いわゆる医療崩壊ってやつです。

また今年は、インフルエンザのワクチン接種率も伸び悩んでいるようです。コロナワクチンの接種も複数回あったので、「もう打つのイヤ」ってなっているからだそう*3です。

トリプルデミック

しかし、アメリカの状況はさらに悪いんです。

コロナとインフルのツインデミックだけでなく、RSウイルスも流行し、トリプルデミックなのです。

RSウイルスも大流行

3つも呼吸器ウイルス感染症が同時流行すると、そりゃ医療崩壊しますわ。

では、なぜ、2022年このようなトリプルデミックが起きているのでしょうか?

集団免疫の低下

ま、これは当然予想されていたことなのですが、【厳格なコロナ規制とその反動】が原因です。

厳格なコロナ規制とその解除

この2点は非常に重要です。

これについては過去記事でもわかりやすく解説しています。

www.multilingual-doctor.com

今回はこの2つをじっくりと確認しましょう。

1.集団免疫の低下

これは、百聞は一見に如かずです。

北半球でも南半球でもインフルエンザの大流行はこの2年間なかったのです。

2020年、2021年インフルエンザ流行なし

今までは、毎冬にインフルエンザが流行すると、自分は感染までしないでも、周りの感染者から少しばかりウイルスを食らってて、インフルに対する免疫が多少は働かされていたわけです。

この2年間インフルエンザに曝露されることなく来た人々が、急にマスクなし、行動制限なしとなるとどうなるでしょうか?

2022年 豪州でも大流行

はい。南半球で先に冬が来たオーストラリアでも大流行が起きました。

2.子供が一気に感染

これは、本当に痛しかゆしの問題です。

要は新型コロナ登場で、世界ではすでに660万人以上が死亡*4しました。少しでも死者を減らそうと世界各国でロックダウンを含む厳しい感染対策を行いました。

過剰な感染対策がアダになったかも?

小児においては登園・登校自粛や、頻繁な手洗い・消毒など感染対策により感染症そのものを大幅に減らせたのですが、それにより、みんながポツポツと散発的に初期感染していくべき疾患(RSウイルスも)にかかれないまま2年間を過ごしたのです。

そして、規制緩和とともにRSウイルスなどが流行すると、そこで一気にみんな初期感染しました。初期感染ではどうしても症状が強いので、一定の割合で重症者も出てしまいます。

つまり、厳しい規制のあとに一気に緩和したことが原因で小児科病棟は溢れているということです。

日本は大丈夫?

さて、アメリカではコロナだけでなく、インフルエンザ、RSウイルスも大流行し病棟がひっ迫しています。これが、#BringBackMask と叫ばれる理由です。

このしんどい冬の間だけでも感染の勢いを抑えようということですね。

ところで、日本はどうでしょうか?インフルエンザ大丈夫?

東京都インフルエンザ感染状況

東京都のインフルエンザの状況*5を見てみると、2022年(赤い線)はまだまだ落ち着いていそうです。実際、2020年や2021年よりは増えていますが、アメリカのような爆増はありません。

日本人は、まだ多くマスクしているのが大きいでしょう。

脱マスクは夏にすべきであり、今冬に議論しているのは本当に意味不明です。

 

では、また(^^♪