マルチリンガル医師のよもやま話

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【サク読み】コロナ2022年終息説

急速な感染状況の悪化に「またか」というのが正直なところ。

実際、この冬のオミクロン株が広がった時は、『弱毒』『ただの風邪』という雰囲気が相当ありました。実際は、第6波だけで3ヶ月の間に1万人以上の死者を出しました。

BA.4 と BA.5 について

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さて、今回のBA.5はBA.1やBA.2よりも肺に感染を起こしやすい(ハムスターの実験)こともわかっていますが、重症化や致死率が特に高まったという報告は現時点でありません。

今回は、そんな暗い気分を少し慰めてくれる研究を見ていきましょう。

中国からの研究

今回ご紹介するのは中国の広東省にあります、仏山科学技術学院からの研究*1です。

コロナ2022年終息説

このような言説は過去にもいろんな人が言うてきましたが、はっきりとしたものではなく、「たぶんこうなるんちゃうかなー、(まぁ、知らんけど)」レベルでした。

しかし、今回のは、

コロナ2022年終息か

データに基づいて、2022年に終わる可能性があることを報告しています。

ふむ、少し読んでみましょうか

インフルエンザと比較

この研究では世界中の、コロナ感染者数や死者数のデータを用いており、インフルエンザと比較して見ていくという方法のようです。

インフルエンザと比較

インフルエンザにより、全世界で毎日、平均 1300人の命が失われているそうで、この数字を指標にします。また、インフルエンザの致死率はアメリカのデータを用いて0.12%を指標とします。

新型コロナウイルス感染症とインフルエンザでは、ともに死者は65歳以上の高齢者が大多数である点は共通しています。

致死率は低下

本文のグラフを参照します。少し見にくいです、すいません。

全世界の感染者数と死者数

水色の波(全世界の1日あたりの感染者数)を追いかけると、2022年に入ってから、オミクロン株の拡大により爆発的に増加していますね。

一方で、オレンジ色(全世界の1日あたりの死者数)を追いかけると、2021年以降は右下がり傾向ですね。

この減り具合を分かりやすくしたのが、赤い破線です。この下がり傾向が続けば、死者数はこれから緩やかに減っていくよという、グラフです。

致死率が低下

死者数が減って、感染者数が増えれば、当然致死率は下がります。

今の感じで同様に致死率が緩やかに下がっていくという予想を示すのが青色の破線です。

インフル並の死者数になるのは

先ほどの見にくいグラフから数字を見ていきます。

コロナによる死者数は減り続ける

2021年の1月は1日で1万3000人が亡くなっていたのは衝撃的ですね。

先ほどやったように、インフルエンザの全世界死者数が1日で1300人ですから10倍ですね。

そして、今の流れでコロナの死者が減っていくと、2024年の2月にインフルエンザと同等レベルの死者数に落ち着くという予想です。

致死率でみると

続いて、先ほどのグラフの致死率を見ていきます。

致死率も下がっていく

2020年4月の全世界での致死率は10.5%ととんでもない威力ですね。

最初に覚えた、インフルエンザの致死率が0.12%でした。その数値になるのが、予測では2023年の3月ということです。

2022年に終わるかも

これらをまとめると次のようになります。

まとめると

 

全世界での新型コロナの致死率がインフルエンザ同等になるのが、2023年3月の予想ということで、これを『終息』の指標とすれば、2022年中にほぼ終わりと考えれるということです。

致死率を指標にすれば2022年に終息

(全世界での)致死率を指標にするならば、2022年いっぱいでインフルエンザ並みとなり、『終息』といえる。ただし、2023年までは、死者数はインフルエンザの2~3倍出ることになりそうです。

過去のインフルエンザによるパンデミックもすべて1年~2年で落ち着いた*2ことを考慮しても、この結果は妥当であると述べています。

感染とワクチン

世界中で大多数の人がワクチン接種を受けたり、感染したりである程度の免疫ができたことで、致死率が下がっていき終息に向かっています。

免疫逃避変異株

ここからが重要です。

免疫逃避する変異株の登場

感染や接種による免疫をかいくぐる変異種が登場するだろうと。しかし、繰り返される感染などで人々の『集団免疫』はその度に強化されるため、往々にしてそれらの毒性は強くないとされます。

(この研究はまだBA.4やBA.5が見つかる前のものです。)

今、拡大しているBA.5も免疫逃避すると言われていますね。しかし、重症者が急増している様子はなさそうです。

ただ、重症化無くジワジワと体力を弱らせて死亡というのが第6波では多かったです。まだ楽観視はできません。

さいごに

コロナ禍が始まって2年半以上経ちましたが、一向に先が見えません。

現代では世界中が流通などでつながっています。人々の往来も過去にはないくらいに頻繁に行われています。そういう意味では、医療後進国も含めた世界全体での状況を俯瞰する必要があります。

今回ご紹介した研究はまさにそれで、全世界での死者数や致死率の推移を見ながら、いつくらいにインフルエンザレベルに落ち着くかというものでした。

では、また(^.^)ノ

*1:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9088340/pdf/JMV-94-2845.pdf

*2:Saunders‐Hastings PR, Krewski D. Reviewing the history of pandemic influenza: understanding patterns of emergence and transmission. Pathogens. 2016;5:66