マルチリンガル医師のよもやま話

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BA.4 と BA. 5 の意味するものとは

昨年末にオミクロン株の流行が始まり、日本でも遅れて入ってきました。

その後、マイナーチェンジしたBA.2というものが見つかりました。2~3月の寒い間は日本でも暴れましたが、それ以降はわりと静かになりました。

しかし、世界では現在BA.4, や BA.5が大きな感染の波を作っています。今回は nature briefing の記事*1を引用しつつ、BA.4, BA.5について見ていきましょう。

南アフリカで発見

オミクロン株が最初に発見されたのは南アフリカでしたね。(ボツワナ説?もあります)そして、今回のBA.4とBA.5が最初に指摘されたも南アフリカで、感染拡大し、他国でも発見されるようになりました。

BA.4、BA.5は致死率低い?

どうやら、今までのオミクロン株よりもさらに重症化率や致死率は低そうです。これはうれしい話です。ワクチンや既感染により免疫記憶を持つ(=重症化予防)人が多くなっていることが要因と考えられています。

BA.4とBA.5

BA.4やBA.5はBA.1よりもBA.2❨ステルスオミクロン❩に似ているようです。

細胞への接着能up、免疫逃避能up

ただ、イヤな特徴としてヒトの細胞への接着能がupしており、さらにワクチンや既感染により得た免疫を逃避する能力(=感染しやすさ)が高いのです。

BA.2とされたものが実は・・・

よく似ていることが原因で、過去にBA.2とされてきたものを調べてみると、実際はBA.4 だったり BA.5 だったことがわかったものもあり、現在出されている割合以上にBA.4やBA.5が既に広がっている可能性があるようです。

免疫逃避能

通常、変異したものが置き換わる時は、感染力の強さがモノを言います。

今回のBA.4やBA.5に関しては、それ以上に過去の免疫を逃避する能力を有していることが、感染拡大に結び付いているようです。

免疫逃避能

これの意味することは、過去にオミクロン株やデルタ株に感染していても、BA.4やBA.5の感染を免れることはできないのです。ワクチンも恐らく同じです。(重症化予防はある程度保たれている)

となると、どうすればよいのか。

大半の人が罹るしかない

重症化率がさらに低く、過去の免疫も効果なく、ワクチンもおそらくダメで、(欧米のようなコロナ規制ない国では)大半の人がBA.4 or BA.5 に感染(無症状含む)して集団免疫に達するしかないという結論になります。

BA.2よりも致死率高い?

しかし、ハムスターを用いた研究ではBA.4 やBA.5はBA.2よりも肺に感染しやすく、致死率が高いという報告*2もあります。あまり、感染はしたくないですね。

社会への影響

それでは、BA.4やBA.5による社会への影響はどうでしょうか?

最初に見つかった南アフリカでは感染者数は多かったものの、入院患者や死者の数はそれほど増えていません。

南ア:死者増えていない

同じ南アフリカで比較して、BA.1のときと同じくらいの重症化率で、致死率は少し低いとのことです。これは安心ですね。

しかし、個人的にはこの話をそのまま受け入れるのは無理だと思います。

南アフリカは超過死亡がスゴい

このブログでは何度か扱っていますが、南アフリカは人口の9割が60歳未満の重症化リスクが低い国なのに、特にオミクロン株以降、超過死亡が圧倒的に多いのです。要因は、もちろん医療水準もあるでしょうが、ワクチン接種率の低さ(31%)*3は関係あるでしょうね。

オミクロン株では、デルタ株のときのように派手な肺炎とかがないので重症者も少ないのですが、体力ジリ貧で亡くなる人を実際何人も見てきました。

症状が派手でなく、南アフリカの人口は基本若いので受診・検査しないまま亡くなったと考えるのが超過死亡の説明として自然ですね。

南アフリカは超過死亡が!

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ポルトガルでは

国民の87%が2回以上接種済*4のポルトガルではどうでしょうか。こちらは、南アフリカと違って高齢者も多いです。

ポルトガルでは?

BA.4 or BA.5 による入院率や致死率はBA.1と同程度ということでした。日本も接種率が高く、高齢者が多いので、こちらのデータの方が参考になるでしょう。

ということは、BA.4 or BA.5 が日本で拡大すればこの前の第6波と同じ程度の致死率になるのではないかと考えられます。いくら致死率が低くても、感染者数が非常に多かったため結果的に死者も多かったですね。楽観視はできません。

今後の展望

それでは、今後コロナはどうなるのでしょうか?

①オミクロン株の亜種

これは、誰もが予想できることで、オミクロンのマイナーチェンジが続くだろうという説です。ふむ。

⓶新たな変異株の登場

そして、当たり前ですが、新たな変異株の登場。もしくは、生き残りの亜種の登場です。以前、記事にしましたが、実は今もデルタ株だけは生き残ってるんです。

デルタ株復活の可能性

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そして、最終的には、やはり新しい『風邪』になるのではないかと書かれています。

新たな風邪になる

おそらくそのように落ち着くでしょう。ちょっとややこしいインフルエンザがもう一つ増えるという形ですかね。

さいごに

いかがでしたか?

BA.4 や BA.5 は免疫逃避能が指摘されており、過去の感染やワクチンによる予防は期待できません。

重症化率や致死率が低いのであれば、個人でできる範囲の対策をするしかありません。しかし、むやみやたらに感染するという方法は危険です。ハムスターでは肺に感染しやすいという研究もあります。

結局、新たな風邪に落ち着くまでは、最低限の対策をする必要がありそうです。

では、また(^.^)ノ