マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

MENU

もう誰も逃げられない?XBB.1.5とは

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、とんでもない感染力で、ワクチンや既感染の免疫逃避する新たな亜種が広がり始めているようです。

今回もニュース記事*1を使いつつ解説していきます。

米国で急拡大

さて、いまアメリカで急速に広まっているウイルスに注目が集まっているわけですが、CDCによると*2、その亜種は XBB.1.5 だそうです。

XBB.1.5が急拡大(米国)

まず、日本で今の感染の主体はBA.5なのですが、それはアメリカではほとんど駆逐されており、BA.5から派生したBQ.1系統も徐々に減り始めています。BQ.1.1はケルベロスなんて異名もありましたが、減少に転じています。

そして、中国でいま広がっているBF.7もBA.5から派生したものですが、アメリカでは拡大することなく減っていきます。

BA.5系統は駆逐か

つまり、XBB.1.5はBA.5系統よりもさらに感染力が強く広がりやすいということになります。当然、いまBA.5が主の日本にXBB.1.5が入れば・・・

組み換え体

ところで、XBB.1.5と言う名前を聞いてもピンと来ないですね。では、XBB系列について少し学びましょう。

実はこのXBBもオミクロン株の1種であり、新たな変異株ではありません。いままでは、BAとかBFとかBQとかついてたのにいきなり『X』かよとなりますね(笑)

XBBはBJ.1とBM.1.1.1の組み換え体

実はこの『X』には意味があって、”混じり合う”ということなんです。で、XBBはBJ.1BM.1.1.1の組み替え体なのです。組み換え体は、細胞が同時に2つのウイルスに感染したときに起こります。

さらに、BJ.1(BA.2.10.1)とBM.1.1.1(BA.2.75)はそれぞれBA.2の亜種なので、つまり、XBBはBA.2系統だとわかりますね。

XBBはBA.2の亜種

ところで、BM.1.1.1はBA.2.75のことなのですが、これどっかで聞き覚えないですか?はい、そうです、ケンタウロス(笑)

ケンタウロスは誇大広告?

www.multilingual-doctor.com

免疫逃避能

XBBはBA.2系統と言うところまではよろしいでしょうか?

次に行きましょう。実はXBB系統は既に昨年インドやシンガポールなどで流行していました。

2022年シンガポールなどで流行

当時を振り返ると、シンガポールではたしかにXBBによる感染の波が起きましたが、それによって入院数や死者数が既存のオミクロン株の波と比して増えていませんでした。

ここで重要となるのは、オミクロン株に対する免疫です。

オミクロン株に対する免疫

それを得るには、2価ワクチンを接種するか、既感染かどちらかになります。これらによりオミクロン株に対していくらかの免疫を保持する国民の割合が高ければ被害は小さく終わると考えられます。

というのも、免疫逃避と言っても、ワクチンや既感染が完全無効になるわけじゃないからです。

シンガポールの感染

では、シンガポールではどのようにして、XBBの波を乗り切ったのでしょうか?

シンガポールでオミクロン対応2価ワクチンがスタートしたのは10月14日からです。つまり、XBBの波が始まった頃で、全然間に合っていませんね(笑)

シンガポールでの2価ワクチン

さらに、12月の段階で人口の7%*3ほどしか打ってないからです。

ということは、つまり、そうです。既感染での免疫保有者が多かったのです。

国民の6割以上が既感染?

2022年8月の時点で、シンガポールの国民の60%が既感染しているだろうと推定*4されており、実際の当時の公式発表でも人口の30%以上が感染済でした。また、感染者の多くがオミクロン株での感染なので、ある程度の免疫を維持していた人が多かったのでしょう。

アメリカの状況

さて、アメリカではどうなのでしょうか?

実は、65歳以上の高齢者のオミクロン対応の2価ワクチンの接種率が低い*5ことが心配されています。

高齢者の2価の接種率低い

しかし、アメリカの感染者数はけた違いでしたね、”既感染”による免疫も相当あるはずです。

アメリカは既感染者が多い

アメリカでは、去年の4月の段階で国民の60%以上が既感染*6抗体検査からわかっています。オミクロン株に感染した数もけた違いなので、それによる一定の免疫を持つ人が多いということです。

なので、免疫逃避能を持つXBB系統が広がっても、甚大な被害とまではいかないのではないかということです。

日本では?

気になるのは、今後の日本です。

日本でのオミクロン株対応 2価ワクチンの接種率は、年末時点で35.0%(65歳以上 58.9%)*7と伸び悩んでいます。

一方で、マスク、手洗いなどの感染対策をしっかりやってきた日本の既感染はというと、抗体検査から全国平均26.5%(2022年12月)でした。沖縄では46.6%、大阪では40.7%と高い地域もありました。

日本の抗体保有率

つまり、日本では、ワクチン接種、既感染によるオミクロン株への免疫はアメリカやシンガポールより低いわけです。

てことは、BA.5よりも感染力が強く、免疫逃避能を有するXBB.1.5が日本に入ると、かなりの感染者を出すことが予想され、そうなると致死率は低くとも一定数の死者がさらに増えることになります。

さいごに

いかがでしたか?アメリカで急増しているXBB.1.5について学びました。

どうのこうので、BA.2の亜種の組み替え体です。厄介なのは免疫逃避能が強く、ワクチンや既感染で得た免疫をすり抜けると言われていますが、100%すり抜けるなんてことはないでしょう。

既に昨年の10月にシンガポールでXBB系統は流行しており、どうやらオミクロン株への既感染による免疫がある程度は効いてそうです。

日本では、既感染者は多くなく、2価ワクチンの接種率もそれほど高くないことから、オミクロン株に対する免疫を持つ人も多くないようです。

いずれにしても、アメリカの状況はしばらく注視する必要がありそうです。本当に厄介なウイルスです。

では、また(^^♪