日本での新型コロナの新規陽性者数が前週比2倍という絶賛急増中であります。
メディアでは、オミクロン株以降、手のひらを返したように楽観的な報道が目立ちますが。
今回は、BA.5の報道のさらに一歩先について、データを見ながら学んでみましょう。
ポルトガルのニュース
BA.5が日本よりも先に始まった国を参考にするのは重要です。ポルトガルは高齢者も多く、ワクチン接種率も高いので日本には参考になるだろうというのは納得です。(人種という大きな違いはありますが)
ポルトガルについてはこのような報道がありました。
ポルトガルでは、約2ヶ月ほどでBA.5の波は過ぎて、ほぼ収束していると。そして、感染者数は過去最多になったけど、重症者や入院者数は過去最少だったという報道です。
これを見ると、楽観視できそうですが、本当にそうなんでしょうか??
このニュースは『あるもの』が欠落しています。それを念頭に今からデータを見ていきましょう。
国の基本データ
今回は、先にBA.5の波が終わりかけのポルトガル、南アフリカと日本を合わせた3国を見ていきます。オミクロン株(BA.1)もその亜種のBA.5も南アフリカで最初に見つかったとされます。
まずは、それぞれの国の人口を見ていきましょう。
日本はめちゃくちゃ多いんですね。南アフリカの2倍、ポルトガルの12.5倍です。
これは非常に重要でこれだけ人口規模が違うと、感染者数や死者数を単純に比較してはいけません。なので、『10万人あたり』とか『100万人あたり』の数字で比較します。
次に年齢層*1見ていきましょう。
日本とポルトガルの人口ピラミッドは似ていますね。一方で、南アフリカは高齢者が少なく、人口の9割が60歳未満という集団です。
ということは、南アフリカが一番若くて体力のある人口割合が高く、重症者や死者は少ないはずですね。ここまで抑えておいてください。
新規陽性者数の比較
(以下、Our World in Data*2を利用)
それでは、3国の100万人当たりの新規陽性者数を比較して見てみましょう。
ちょっと見にくいですが、ポルトガルが非常に多く、日本は少なく、南アフリカはめちゃくちゃ少ないですね。
ただ、南アフリカは医療体制的にも検査が十分にできないという点を考慮しなければいけません。実際は、もっと多いと想定されます。
新規死者数の比較
続いて3国の新規死者数(100万人あたり)を比較します。
これも見にくいですが、当然、コロナ陽性者が多い所で死者が多いはずです。なので、ポルトガルが一番多いですね。
日本やポルトガルのように高齢者が多い国では、陽性者数が増えると当然死者も増えるのです。
一方、新規陽性者数が一番少なかった南アフリカは、オミクロン初期で死者がかなり出ていることもわかりますね。さきほど言ったように検査体制もあり、過小評価されていますから、当然コロナ死者も過小評価されます。
コロナによる影響をさらに広く見るために超過死亡でも比べてみましょう。
はい、南アフリカ圧倒ですね。これは、先ほどまで言ってた通り、コロナ陽性者が過小評価されたために、検査されずに亡くなった人がたくさんいるということです。
日本はごくわずか。というか、日本は過去2年間がマイナスだったので、その反動が今出ているのもあります。
『弱毒』と言われるオミクロン株で一番被害を受けたのはどこですか?もちろん、人口の9割が60歳未満の南アフリカですね。
ワクチン接種率
これらの死者数の差はなんでしょうか。もちろん南アフリカにはエイズ患者が多く、免疫不全の人が多いのも理由の一つでしょう。あとは、ワクチンの接種率です。
南アフリカでは2回以上の接種率は35%ほどです。もちろん、若い人が多いから打たないというのもありますし、エボラなどもっともっと致死率が高い感染症が蔓延するアフリカでコロナは脅威でないと思われているのもあります。
抜け落ちているもの
さて、話は戻って、最初に紹介したポルトガルのニュースで抜け落ちているもの、それは死者数です。
自分の患者さんでもそうですが、オミクロン株による第6波のとき、重症化して亡くなったのではなく、軽症~中等症のままなかなか改善せず亡くなったり、持病が悪化して亡くなった人が多かったのです。
つまり、重症者数と死者数に乖離があったのです。なので、重症者数だけでなく死者数にも言及が必要なんです。
ポルトガルではオミクロン初期の波で最大1日に59人、BA.5の波で最大1日に51人死者*3が出いています。日本の人口に換算すると1日に600~700人が死亡していることになります。
もちろん、人種、マスク、気候など相違点がたくさんありますから日本でそこまでにはならないでしょう。
ただ、ポルトガルのBA.5の波を見ると、オミクロン初期の波と同じような山を描いていますね。
つまり、日本でも第6波と同じような死者数(=1万人以上)が第7波で見られることも想定されるわけです。
まとめ
今回、この3国の比較でわかったこととしては、次のようになります。
日本やポルトガルのように高齢者が多い国では、当たり前ですが、感染爆発があると死者が増えます。
今回のニュースからしっかりと学ぶべきことは次のようになります。
とりあえずできることは限られています。高齢者・脆弱者の方は追加接種で命を守り、他の人は2ヶ月ほど感染対策しつつ嵐が過ぎるのを待つのみです。
コロナは決して『ただの風邪』ではありません!(もちろん軽く終わった人にとってはそういう感想かもしれませんが。)
では、また(^.^)ノ