マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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接種進んでウィズコロナが成功のカギ?

日本は今までロックダウンなどはありませんでしたが、まじめな国民たちの感染対策を講じてきたため、先進国の中でも被害が少なく来れました。

世界では規制をなくしており、日本でもかなりゆっくりですが前に進んでおります。

今回は、『規制緩和』でわかってきたことを元に日本の進む道を見ていきましょう。

抗体の種類

コロナワクチンは、コロナウイルスの外側にあるスパイク蛋白の一部の遺伝子情報だけ含まれています。つまり、接種後に体内で作られるのはスパイク蛋白のみで、ウイルス自体は作られません。これに対してできる抗体はS抗体のみです。

S抗体とN抗体

実際の感染では、S抗体だけでなく、ウイルス自体に対するN抗体も産生されます。

なので、理論上は『実感染』の方が、ワクチン接種よりも強い免疫ができるのではといのはなんとなーく想像できますね。

つまりは、本当に『ただの風邪』で、目立った合併症もなく、とんでもなく感染力が強いなどでなければ!!ワクチンなんてそもそも不要ですね。感染すりゃいいんです。

本当にただの風邪ならば・・・

しかし、実際どうでしょうか?

初期の頃は重症肺炎も起きるし致死率も高かったし、自ら進んで『感染したいわ』なんて変わり者は多くはなかったですね。だからこそワクチン接種が進んだのです。

オミクロン株以降

オミクロン株以降、重症肺炎などになる可能性は低くなりましたが、少なくとも高齢者に関しては2価ワクチンの追加接種が入院・死亡を大いに減らす(6~8割)ことはリアルワールドでも次々に報告*1*2が挙がっています。

2価ワクチンの効果

高齢者はそもそも免疫機能が強くなく、またワクチンの効果も長く続かないということです。

一方で、若い健康な人に関しては、いまの状況は、致死率は全然高くないけどちょっとややこしいウイルス感染症になっています。

以前から言ってますが、若くて健康な人は2回接種(可能なら3回まで)で十分です。

ウィズコロナ

2022年、欧米ではコロナに対する制限を全廃していきました。隔離やマスクも「個人に任せる」となっています。

これの背景には国民たちの不満が爆発しそうという政治的なものもありますが、接種がある程度進んだことがありましたね。

ウィズコロナへ転換

いつまでもロックダウンばっかりやってられません。接種が進み、重症化しやすいウイルスはとりあえずはいなくなりました。ならば、高齢者の一定数の死者を受け入れて社会を回しましょうという考えです。

社会を回すであろう健康な人なら2回接種終えてれば長期に重症化は予防されるわけだし、感染しても医療機関への負担にもならないだろうという想定の下、切り替えが進んだわけです。

ハイブリッド免疫

ところが、時間とともに、意外な事実がわかり始めました。

様々な規制を撤廃していった欧米は感染者数も死者数も爆増する気配がないのです。もちろん、ちゃんとカウントしなくなったというのもあります。

ハイブリッド免疫とは

注目を浴びているのがハイブリッド免疫です。

ハイブリッド免疫とは、ワクチン接種+実際の感染で、これらの順序は問いません。接種が先か感染が先か関係ありません。

で、このハイブリッド免疫を持っていたら、未接種で既感染の人よりも、接種済みで未感染の人よりも、今後感染しにくく、しても重症化しにくいというのが指摘*3されはじめました。

既感染の割合

例えば、シンガポールでは2022年8月の時点*4で、アメリカでは2022年4月の時点で国民の60%以上が感染*5していることがわかっています。

マスク、手洗いなどの感染対策をしっかりやってきた日本の既感染はというと、抗体検査から2022年12月で全国平均26.5%*6でした。

コロナ死者数の推移

それでは、2022年以降のコロナ死者数の推移を見てみましょう。そこに感染者数が60%を超えたところを太い矢印で示してみると、アメリカもシンガポールも60%を超えた以降は死者で大きな波はないんですね。

感染者数の少ない日本だけ、新たな波の度に死者増加の山が起きてます。

重症化95%抑制

で、先日Lancetの関連誌に掲載されたシステマティック・レビュー*7でもこのハイブリッド免疫の効果を裏付ける結果が出ています。

ハイブリッド免疫は有効

さっきも書きましたが、感染ではS抗体N抗体もできますが、ワクチンではS抗体だけしかできません。これは最初からわかっていることです。

『だからといって感染したくない!』という話でした。

あえて感染することは絶対薦めませんが、逆にもうかかってしまった人は、未接種でも24.7%、さらに2回接種済みなら41.8%、3回目接種済みなら46.5%感染しにくくなるわけです。(1年間)

日本のこれから

日本では接種率が80%でしたね。つまり、ハイブリッド免疫が強く効果を発揮できる下地があるわけです。

「わざわざ感染しなさい」というのはまともな医者は言いません。

これから日本も感染症対策を緩めていくことで、当然感染者は増加し、しばらくは死者もそれなりに出るでしょう。

その後、国民の既感染が例えば60%などになったらそれ以降は死者の大きな波は来にくいだろうとも予想できますね。

日本はめちゃくちゃ優秀

日本は今まで感染の勢いをなるべく遅らせる方向で国民一丸となってやってきました。その結果、他の先進国と比較しても累積死者数は圧倒的に低いです。この高齢化社会でです。

このやり方は、『死者を少なくする』がゴールならば大成功です。

次は、『元の生活に戻る』というゴールを目指して、なるべく被害を少なく進むのが目標です。

先行した海外からの科学的データがわかってきたことで、普通の生活でのハイブリッド免疫を狙っていくのがよいのでしょう。

 

では、また(^^♪