マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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日本の近未来?米・コロナの禍根

「アメリカでは誰もマスクをしていない」「コロナを気にしてるのは日本だけ」

残念ながら、こういう主張は、自分の主義主張に合う理由を探して、アメリカの都合のいい部分だけを強調しているだけです。

今回は、アメリカの現在の状況を少し覗いてみて、日本の近未来を学んでみましょう。

アメリカの現況

とりあえず、まず状況を確認しておきましょう。

日本だけ嵐??

2022年に入って、どんどんと規制を撤廃していったイギリスやアメリカは現在かなり感染者数も少なく見え、一方で、日本だけが大荒れしているように見えます。

なんてったって、世界一の感染者数、我らが日本♪♪笑

死者数はそれほど変わらない

ところが、死者数を見てみると面白いことに気づきます。

3国ともそんなに変わらないんです。

となると、視野の広い読者の皆さんはもうカラクリはお判りの通り。

日本が世界一の感染者数

前回、アメリカの現在の検査の体制についても解説しましたが、要は陽性者数を日本のようにちゃんとカウントしてませんということです。

日本が感染者数世界一の理由

www.multilingual-doctor.com

アメリカでは、この春から家庭内検査が普及しています。

CDC:家庭内検査を受けるとき

で、家庭内で抗原検査をして陽性だったらどうなるか。

5日間の自宅待機で隔離してください、その後もしばらく感染させる可能性あるのでマスクはしてください。状態が悪くなったら病院に行ってください。

CDC:家庭内検査陽性のとき

これだけです。つまり、陽性であっても、もう報告も要らないんです。

つまり、現在出ている数字と言うのは、状態が悪くなって受診した人たちの陽性者数と死者数ということです。

あと、アメリカでは日本のような国民皆保険でないので、貧しい人は病院受診はしません。つまり、統計には出ていない感染者がいるということも重要ですね。

日本も全数報告廃止

現在、日本でも全数報告を廃止しようと動いています。自分で抗原検査キットも買えるように進めています。これは、アメリカの春以降と同じ動きです。

要は、「日本人がこれだけマスクして、ワクチンも打って、対策してるのに感染者数世界一なんだよ!!この無能政府が!」と便乗して政府批判につなげる人たちがいるので、その対策でもあります。

政治的判断

そういう人たちは、「日本とアメリカはね、検査体制が・・」なんて言っても聞く耳持たないでしょう。(笑)

だから、日本も、基準をアメリカなどに合わせておいて、見かけの感染者数を減らすことにしたわけです。全数検査見直し!

コロナ後遺症

このように強制的にコロナを"見えなくした"アメリカでは、今ある社会問題が出ています。

後遺症で200-400万人が休職中

Guardian紙の記事*1によると、全米で約1600万人がコロナ後遺症に苦しみ、200~400万人が後遺症の為、現在仕事を休んでいるという報告*2があるのです。

これによる、労働者不足が問題となっています。アメリカでも決してコロナは終わっていません。

『感染者の5人に1人に後遺症』

また、CDCの発表*3によると、感染者の5人に1人が3ヶ月以上続く後遺症で苦しんでいるとしています。

これらから、「かからないに越したことはない」のがよくわかります。

日本でも、規制をなくし、コロナを気にせずの生活に移行すれば、似たようなことが見られるでしょう。そうならない為にも、できる限りの感染対策はした方がいいのは間違いないです。

コロナは全身性疾患

さて、このコロナ感染後の後遺症については色々仮説はありますが、まだ完全には解明されていません。

今年7月にiScienceという医学雑誌に掲載*4された岡山大学のコロナ後遺症の研究内容を少しご紹介します。

コロナは全身性の疾患

まず、重要なのはコロナとインフルエンザは全然違うということです。新型コロナウイルスはACE-2受容体から感染しますが、これは、血管内皮や腸管など全身に分布しています。この時点で「新型コロナは風邪ではない」ことがわかります。

持続感染

コロナ後遺症の仮説の1つとして、『持続感染』が言われています。つまり、体内からウイルスが完全に排出されないということです。

岡山大学の研究を見れば、面白いことがわかります。

持続感染が後遺症の原因

論文の graphic abstract を解説しますと、縦軸がウイルス量、横軸が感染後の日数です。

完全回復者(青線)では10日以内にウイルス量は0になります。一方で、感染者平均(黒線)や重症者(赤線)のグラフではウイルス量は0にならず持続感染していることがわかります。

つまり、後遺症が起こっている人たちはこのように、ウイルスを完全に排出できていないことがわかりました。

樹状細胞の減少

樹状細胞という免疫細胞は、抗原を取り込むと、活性化してリンパ節などに移動します。そして、抗原提示といって、リンパ球に抗原を教え込み、攻撃させます。免疫細胞の司令塔みたいなもんです。

感染後樹状細胞が戻らない

しかし、コロナ感染後の患者では、7ヶ月経ってもこの樹状細胞が回復しないという報告*5もあります。

持続感染により樹状細胞が回復しない

この樹状細胞の回復が遅いのは、コロナの持続感染により、その感染部に樹状細胞が動員されているからだと考えられています。

長期後遺症のメカニズム

まとめると、感染しその人の免疫機能により、完全にウイルスを排除できないと体内にウイルスが残ってしまいます。そうすると、持続感染となり、体内で免疫の司令塔の樹状細胞が炎症のあるところに駆り出された状況が続きます。

こうして、長期に及んでウイルスをうまく排出できず、さらにコロナは全身疾患なのでさまざまな長期後遺症を出しているのだろうということです。

さいごに

いかがでしたか?

海外はマスクもしてないし、みんな元通りの生活!!とそういう部分にばかり目が行き、うらやましく見えるのは事実です。しかし、その一方で、かなりの被害を生んでいます。

感染者の5人に1人が長期後遺症に悩まされ、休職により人手不足の問題も起こっています。

コロナはインフルエンザなどと違って”全身性疾患”です。免疫応答が弱い高齢者や、それ以外の若者も含めて、体内での持続感染により後遺症が起こっているようです。

2回感染で死亡率上昇

決して、コロナを軽視せず、かからないに越したことはありません。1度かかった人も2度目かからないように対策はしましょう。

では、また(^.^)ノ