コロナ禍での社会の変化で、前回は『急増する梅毒』の背景を学びました。
今回は、コロナ禍での働き方について学んでいきましょう。アメリカで最近よく取り上げられる "Quiet Quitting"とはどんなものでしょうか?
静かな退職者
ここ最近、アメリカでトレンドとなった新しい言葉があります。Quiet Quitting(静かな退職者)です。
今回はこの静かな退職者についての記事*1から学びます。
2020年、アメリカで新型コロナが広まった時、日本とは比較にならないほどの大量の死者が出ました。これを受け、ロックダウンやリモートワークなどがなされました。
日本とは違い、業績悪化などですぐに『解雇』にできるアメリカでは失業者であふれました。
その後、ワクチン接種が進んだことで、社会を取り戻そうと動き始めましたが、今度はその速度に働き手の供給が追い付きません。
コロナの後遺症のため、400万人が職に復帰できないことも報告*2されており、これも一因です。
そして、この売り手市場のため、労働者の力が強くなっているという現象が起きています。
最低限の仕事だけ
ところで、”静かな退職者”はどういった人を指すのでしょうか?
意欲がなく、自分で自分の仕事量を決めて、それ以上はやらない人たちのことを指します。
リモートワークなどで他人と交わることも少ないと、他人の仕事を助けてあげようという関わり合いが少ないことも要因では?とされます。
2022年中盤のギャロップ社による調査では、米国労働者の半数が『静かな退職者』と言えるレベルだといいます。
公私のバランス
コロナ禍でのリモートワークなどで、会議の為のスライド作りなどに費やした時間を家族や友人のために使うようになった人たちが増えました。
コロナ禍は、公私のバランスを見直し、その境界線を引くことを促したようです。
そんな中、業績悪化に伴う強制休職や一時解雇により、労働者たちは「いいように使われている労働搾取だ」と考えるようになりました。
こうして、企業に忠誠を誓い、やる気満々で働くことへ情熱を失っていると見られています。
こうした怒りからよりよい環境を求め、退職した人達も多く、コロナ禍のアメリカは大失業時代と呼ばれる所以となりました。一方で、職にとどまるも、静かに優先順位を変えた人たちもいます。これが、”静かな退職者”たちです。
ただのサボり?
こうしたトレンドが出てくると必ず議論が起こります。
いつ電話で呼びつけても会社にかけつけ、家庭を顧みずに仕事に打ち込むことに慣れた上層部(日本風に言えば”昭和な働き方”)にとっては、「最近の若い奴は・・・」ってなるわけですね。(笑)
しかしながら、経営者や上司らからすると、この静かな退職者は脅威です。
労働者人口には入っているのに、最低限の仕事しかせず、生産性を落としているからです。
従来のアメリカの会社では、生産性の低い労働者は解雇でしたが、働き手不足で労働者が強気になっているのです。
いつまで続く?
「自分で決めた以上の仕事は一切しません」
コロナ禍で”静かな退職者”が増加し社会問題化していますが、この傾向は長く続くのでしょうか?
以前、アメリカの今後の景気後退について記事を書きました。
その中で、紹介したのは2023年春には景気後退するというものです。
アメリカでは、現在の異常なインフレへの対策として、高金利政策を行っており、その副作用である景気後退が来春に来ると予想されています。
この景気後退で、静かな退職者のトレンドがなくなることはありませんが、ある程度の影響があると見られています。
そもそも、静かな退職者が増えた背景は、何度も言っていますが、働き手不足により労働者の力が強まったからです。
しかし、景気後退とともに、雇用そのものが縮小する可能性が高く、『静かな退職者』が気づけば『解雇リスト』に載っている可能性も十分にあるからです。
実は日本では
この話ここまで読んで、日本にもそんな社員いっぱいいるで~と思いますよね?
静かな退職者が出る条件は労働者の力が強いことが背景にありました。日本は法律で簡単に解雇できませんよね。つまり、静かな退職者を生み出す下地が十分にあるのです。
日本の人事部の記事*3を見てみると、面白いことがわかります。
はい、日本では、コロナ禍より前から『静かな退職者』が多かった、つまり時代を先取りしていたんですね~(笑)
だからこそ、日本の経済成長は鈍化したのかなー?
では、また(^^♪
▼日本の雇用形態▼