チキン南蛮はおいしいけれど、揚げ物であり、あのタルタルソースとハイカロリーであります。ご注意を(笑)
さて、南蛮漬けやチキン南蛮の南蛮というのはポルトガルとかのことです。しかし、なぜ”蛮”という良くない意味の漢字なのでしょうか?
これを知ると、日本が"近隣国"から下に見られる理由がわかります。
南蛮とは
”蛮”の意味は野蛮そのものです。
服も着ずに狩りをしたり草を採ったりして食べる人たちという意味です。蛮という漢字の中に「虫」があり、人ではないという意味もあります。
13世紀、チンギスハンの孫にあたるクビライは中国を征服しました。この国がいわゆる元です。この時に、中国北部(華北)の住民を漢人、南シナの住人を蛮子(まんじ)と呼んでいました。蛮子は、差別の対象でした。
その後、元は政治腐敗やペストのパンデミックなどもあり滅び、1368年に朱元璋が明を建国しました。以降の中国朝廷でも、南にいる異民族は南蛮と呼ばれました。
南蛮という言葉は日本にも入ってきて、ポルトガルなどの国を南蛮と呼ぶようになりました。これは、彼らが船に乗って南蛮であるインドや東南アジア経由で入ってくるからのようです。
ところが、日本では次第に”野蛮”という意味は消え、南蛮物といえば、珍しくていいものという意味に変わりました。
中華思想
では、南蛮をもう少し深く見てみましょう。
中国の漢民族では、中国こそが世界の中心であり、皇帝は世界のトップ(=天子)であるという考えがあります。これを中華思想*1と言います。
そのため、異民族は自分たちより劣っており、野蛮であると考えていました。
世界の中心『中華』の周辺にある国で、朝廷に帰順しない民族を、位置関係により四夷と呼ばれる4つのグループに分けました。
日本は朝鮮と同じく、中国から見て東にある”野蛮な国”を意味する東夷と呼ばれていました。南蛮は東南アジアやインドを指します。
これら四夷の国々は19世紀になるまで対等な貿易などはなく、朝貢と呼ばれる従属関係がありました。要は中国に貢物をして、国を認めてもらうというものです。
▼大陸系中華とは?▼
小中華思想
中華思想と言うのは儒教の影響を受けた漢民族の文化優越主義のことです。また、地理的な要素もあり、中国から離れれば離れるほど野蛮になるという考えもあります。
例えば、東夷の朝鮮と日本では、中国から地理的に遠い日本の方が野蛮な存在というわけです。
実は、中華思想を独自に発展させた小中華思想*2というものがあるのもご存知ですか?
本来ならば、東夷とされる朝鮮は、自らも中華の一員となることで、他の国よりも優位な位置を得ようと*3しました。これによりできたのが小中華思想です。
例えば1402年、李氏朝鮮時代に作られた地図には小中華思想がバリバリに入っており、朝鮮半島は実際よりも大きく、日本は実際よりもかなり小さく描かれています。(ま、位置もおかしいですが。)
中華思想では中国が親、朝鮮が兄、日本は弟です。小中華思想では、中国と朝鮮が親、日本は子です。いずれにしても”日本は下の立場”というわけです。
<参考になるおすすめ本>↓
天皇と日王
天皇は韓国語では천황(cheon-hwang)ですが、ニュースなどを見ても、一般の人たちも일왕(il-wang)=日王 を使います。実はこれも中華思想 or 小中華思想が影響しています。
司馬遼太郎氏*4*5によると、【皇】という漢字は唯一の皇帝、すなわち中国の皇帝(=天子)にのみ使われるものです。その周りにある、野蛮な国々は中国に朝貢して国の【王】として認めてもらうわけです。
李氏朝鮮ではトップは中国に貢いで認めてもらった『王』でした。当然、皇帝は中国にしかいませんから。
そんな中で、自分よりも下の国であるはずの日本に【皇】がいることは認められないというわけです。
今でも、韓国で『天皇』と呼称すると問題になる*6ほどの重要なことなのです。
中国の夢
ところで、どうせこんなの昔の話だろ?と思われるかもしれません。
しかし、再び力をつけた中国がいま世界を牛耳ろうとしています。アフリカなどの貧しい国々に影響力を及ぼしているのを私たちも目の当たりにしています。
2012年に習近平 国家主席が『中国の夢』という思想を発表します。
かつての偉大な中国はシルクロードを通じて、欧州、さらにはアフリカの一部にまで勢力を伸ばしていました。その強い中国を復活させようというわけです。
一帯一路というのは現代版シルクロードで、欧州やアフリカへと影響力を強めていますね。
▼中国とWHO▼
また、この中国の夢に同調する国があります。
韓国の文 在寅大統領は2017年12月に中国・北京大学での演説で中国の夢に賛同する演説を行って*7*8います。
そして、北朝鮮の金 正恩総書記も2018年3月の北京訪問時に「中華の偉大な復興を祈る」と演説を行いました。
ふむ、中華思想は現在進行形であります。
さいごに
いかがでしたか。
世界史で学んだように中国はかつてもっとも文明の進んだ国でした。日本も中国からさまざまなことを学びました。漢字、仏教、陶磁器、干支なども中国から、一部は朝鮮半島経由で伝わった(=”教えていただいた”)わけです。
中華思想では、中国が世界の中心であり、周辺の野蛮な国々に様々な文明をもたらしました。中国から地理的に遠い日本は、朝鮮よりもさらに未開とされていました。
こういった視点をもって、中国や韓国の態度を見ると、「なるほどな」という部分もあるのではないでしょうか。
では、また(^.^)ノ
*1:https://megalodon.jp/ref/2009-0614-2324-56/www.jkcf.or.jp/history/3/13-0j_furuta_j.pdf
*2:『この国のかたち』司馬遼太郎(文春文庫)
*3:『童蒙先習』総論末尾、1699年本、粛宗王序・宋時烈跋文
*4:『この国のかたち』司馬遼太郎(文春文庫)
*5:『韓のくに紀行』(街道をゆく2)司馬遼太郎(朝日文芸社)
*6:http://japan.hani.co.kr/arti/international/38472.html