日本では高齢化社会が進むとともに少子化問題もあり、今後少ない労働人数で多数の高齢者の福祉を支えるというかなりいびつな構造が心配されています。
さて、今回はわざと少子化への道を進めた中国の一人っ子政策について学んでみましょう。どういう経緯で導入され、なぜ終わったのでしょうか。
少子化が進む日本
少子化の指標に使われるのは合計特殊出生率というもので、15~49歳の女性が平均で産む子供の人数を表します。
1家庭から2人の子供が生まれれば、人口は横ばいになりますので、特殊出生率が2より低いか高いかが重要です。日本では1975年頃から、合計特殊出生率が2を切っており、2019年1.36でした。
実はさらに厳しい状況なのはお隣の韓国で、2020年は0.84(ソウルは0.64=戦時レベル)となっています。先進国で合計特殊出生率が2近いのはフランスくらいで、アメリカやイギリスが1.8です。これらの国は移民が多く、その出産が多いのが特徴です。
また、コロナ禍も少子化には影響があるようです。日本の2020年の婚姻件数は約53万8000件(前年比ー12.7%)、2020年1~10月の妊娠届出数は72万7219件(前年同期比ー5.1%)という急減です。
少子化の理由
そもそも、経済発展に伴い、多産多死→多産少死→少産少死へと進むことが知られており、日本など先進国は少産少死のフェーズですね。
現在少子化の理由でよく言われるのは結婚率の低下、晩婚・晩産ですね。結婚しない理由は個人の自由ですが、お見合いがなくなったことや経済的な理由など色々です。
また、晩婚化の問題としては、女性は30代後半から卵子の数が急速に減りだすことや、男性も年とともに精子の劣化が進み不妊になりやすいといわれています。
日本では非正規雇用の割合が増え続け、非正規雇用の男性の既婚率は正規雇用者の男性の1/3になるといわれています。(厚生労働省より*1)
非正規雇用では、給料面、税制・社会保障面(厚生年金に入れないなど)で正規雇用よりもツラい部分があり、結婚のハードルも上がっています。
また、結婚した家庭でも、養育費や教育費を理由に子供をたくさん作れないという現状*2も知られています。学歴社会では教育費の負担が大きいのですね。
少子化対策としては、育児休暇促進、保育所増設、授業料無償化、独身税、大量移民受入などの案があります。うしろ2つはちょっと問題ありそうですが。
さて、今回は政策として少子化を進めた中国の一人っ子政策について学んでいきましょう。
一人っ子政策
第二次世界大戦が終わった後、中国の人口は5億4000万人(1949年)と現在の4割弱ほどしかいませんでした。大きな戦乱もなく、医療の質も改善し乳児死亡が減ったことで、その後、人口は自然増加しました。
大飢饉により一時的に減少しましたが、後にベビーブーム(1963-1971)が来て、当時の出生率は4.3%を超えていました。
人口の急増は食糧難と常に隣り合わせです。
そして、1979年から一人っ子政策が開始されました。まず、初めに結婚を遅らせることも行い、男22歳、女20歳まで結婚できないことにしました。
そして一人っ子政策で問題となることについても定められました。例えば、女の子の家庭では、次の世代で家系が途絶えてしまいます。そこで、『夫婦別姓』という概念も出てきました。
▼夫婦別姓問題について▼
さて、ではどのようにして一人っ子政策を維持していったのでしょうか。
賞罰制度
一人っ子政策には賞罰制度がありました。
まず、一人目の子供が生まれた時点で、『もうこれ以上は産みません』と宣言をし、独生子女証(一人っ子証)を受領します。すると七優先と呼ばれるメリットを享受できます。
就職の優先や年金の加算など、さらには子供の学費免除などは非常に大きいメリットですね。そして、もちろん罰則も準備しているのがこの国のスゴいところ。
二人目を産んだら罰金です(笑) そして、賃金カットに昇進中止など「これでもか」ってくらいのイジメっぷりですね。
一応一人っ子政策には例外も設けられてありますが、国家の幹部や都市部の住民らで、両親が一人っ子であったり、第1子が身体障碍者であった場合や、第2子を海外で出産した場合に限って特例的に二人目が認められました。
農村部ではやや緩めの条件、また少数民族では第二子の出産が許可される場合が多かったです。
コレ重要ですよ~ 少数民族に一人っ子政策をすると、その民族が無くなっちいますからね。
一人っ子政策の問題点
問題点1:少子化と高齢化
ま、これは意図通りですね。21世紀に入って中国の合計特殊出生率は1.5程度(2020年 1.3)になっていました。同時に日本の”団塊の世代”と同じで、高齢者が多い構造になっています。
当然、社会保障や介護を考えると若者の負担が大きいのは日本と同じです。
問題点2:小皇帝の誕生
子供には2人の親と4人の祖父母がいます。こうして、大人6人が1人の子供に愛情を注ぐので、過保護でわがままに育ちます。あたかも皇帝のように扱われるので”小皇帝”と呼ばれます。(女児は小皇后)
問題点3:黒孩子
黒孩子(ヘイハイツー)とは、戸籍にはいない子のことです。
さきほど書いたように二人目を作ると罰則があり、不利益を被るため、国に報告せずこっそりと育てます。当然、『存在しない国民』なので医療や教育などは受けられません。
一部では、二人目を生まれてすぐにブローカーに売る、人身売買なども行われていました。
問題点4:結婚できない
農村などでは労働力が必要なので、男児が欲されます。女児を妊娠したらどうするでしょうか?はい、一人しか作れないので、中絶するわけです。
となると、わかりますね・・・男児>>女児というアンバランスな状態になり、適齢期になると女性が足りないんです。
問題点5:優生優育
一人っ子政策の柱の1つがこれでした。つまり、良い遺伝子だけを後世に残そうという考えです。障碍者の割合を減らす目的で掲げられました。
当然、これには人権問題が絡んでくるわけです。
二人っ子政策
少子化の問題は、将来の労働力の低下が国としては一番大きな問題です。つまりは、経済成長の鈍化ということです。
GDP世界2位の中国は将来的にアメリカを抜いて1位を目指しているのでそれには労働力の担保が重要です。
そこで、2016年に中国は一人っ子政策を廃止し、二人っ子政策に変更しました。それでも、2020年の中国の合計特殊出生率は1.3と日本と同レベルでした。
さて、一人っ子政策が廃止されてから不思議なことが起きています。一人っ子政策時も、少数民族は例外として二人目が認められていたのに、ここ最近になってウイグル族への強制不妊手術が急増しています。
▼ウイグル問題▼
これに対して世界中がジェノサイド*3という言葉を使って非難をしています。実際新彊ウイル\ル自治区では出生率が2年*4で半減しました。
2022年2月開幕予定の北京オリンピックをボイコットしようという意見が欧米から出ているのはウイグル問題や香港問題のためです。
IOCはオリンピックが開催されないと困るわけです。莫大な放映権で潤っているので、東京、北京と両大会での大減収は困ります。だから何が何でも東京は開催する?!のかもしれませんね~ では、また(^.^)ノ
▼IOCとオリンピック▼