マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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『体を使ってパクりました』

日本はときに『スパイ天国』と称されることがあります。

2015年にwikileaksが公開した告発内容では、アメリカの国家安全保障局首相官邸や日銀、財務省幹部や三菱や三井などの財閥などを盗聴していたという衝撃的なものでした。

日本は世界的に見てもユルユルなので、やられたい放題です。

さて、今回は、昔の産業スパイはすごかったって話を韓国・東亜日報の記事*1から学んでいきましょう。

オ・ギョンファン

今回の主役はオ・ギョンファンです。

彼は韓国では『醤油の達人』として有名な研究者で、味噌や醤油を製造しているセムピョ食品の副社長にまで上り詰めた方です。2019年に66歳の若さでこの世を去りましたが、彼の産業スパイテクニックがすごすぎると話題になったのです。

1978年にセムピョ食品に入社したオは醤油の研究に明け暮れました。

オ・ギョンファン氏

セムピョ食品の醤油の国内シェアは60%と非常に高く、日本で言えば、キッコーマンとヤマサとヒガシマルと合わせたよりも高いシェア率を誇っているのです。

戦後にできたセムピョ食品はどのようにして、おいしい醤油を作り、圧倒的なシェアを誇るに至ったのでしょうか?

日本視察

ま、ご想像のとおりですが、だいたいどの分野もそうですが、戦後の韓国の製造業では日本の企業に指導を仰ぎました。

セムピョ食品は1980年代にキッコーマンやヤマサの協力を得て、成長させたのです。

味噌や醤油の味のキーとなるのは発酵過程であり、どのような菌が使われているかや管理の細かい部分は企業秘密でもあるわけです。

1986年にヤマサを視察したオはどうしてもこの企業秘密を持ち帰り、セムピョ食品に還元したいと考えていました。

いわば”昭和の産業スパイ”であります。

発酵過程で重要な麹菌の繁殖のために、温度・湿度を一定に保った部屋があり、これは麹室(こうじむろ)と呼ばれます。

この麹室にはヤマサの企業秘密が閉じ込められている場所なわけです。

なんとしてもこの麹室からヤマサの麹の秘密を盗んで帰るぞ・・・とオは心に誓いました。

自分の体を使う

当時の産業スパイは現代のような電子機器から情報を抜き取るようなものではありません。

オは自分の体をうまく使って企業秘密を持ち帰ることを思いつきました。

麹室の見学中に、なるだけ大きな深呼吸をし、麹室内の麹菌を吸い込むことにしたのです。

オ氏のテクニック

そして、麹室から出るやいなや、ティッシュで鼻をかみ、彼の呼吸器内に入ったであろう麹菌をティッシュで捕捉したわけです。

韓国に帰ったオは丸めてしまいこんだ鼻水付ティッシュを徹底的に調査し、ヤマサの醤油のおいしさの秘密である麹菌を解明し、セ厶ピョ食品の醤油にも転用したのです。

それでこそ、いまの韓国のおいしい醤油があるのだと、オは誇らしく思っています。

40年以上前の体を張った産業スパイ、なぜかあまり腹立たしくないです。笑

では、40年経った今はどうなっているでしょうか?

シャインマスカット

先日、スーパーで社員マスカットは1房1000円で売ってました。高級ですな。

そもそも雨が多い日本ではマスカットの栽培は不向きです。

そこで、日本で育てやすく、おいしいマスカットを作るべく、欧・米・日の品種を交配して努力の甲斐あり、2003年に広島でできたのがシャインマスカットです。

品種登録すると、育成者権という独占権(知的財産権)が30年間得られます。

育成者権の侵害

育成者の許可なくその品種を作ると罰せられます。

日本の農研機構は輸出を想定していなかったので、日本国内でのみの品種登録を2006年に行いました。これが甘かった。

おいしく人気のマスカットはアジアでも需要が増えました。本来なら国外での品種登録も行い、そのライセンス料をもらって栽培許可を与えれるのですが・・・

国外での品種登録は国内での登録後6年以内*2にしなければなりませんが、気づけば10年以上過ぎており、国外では自由に作れることとなってしまっています。

現在は、中国・韓国が大量にシャインマスカットを作って輸出して儲けています。

実は、果物はその苗木さえあれば簡単に育てられるのです。

苗木が持ち出され中国・韓国で栽培される

苗木が何らかの形で中国・韓国へ持ち出され、どんどん拡散され、おまけに質の悪いシャインマスカットが流通してブランド価値まで下げていると。

しかし、法的には打つ術なし。

同じように、レッドパールなどのイチゴも韓国で無断で拡散され、自由に作られている状況です。

和牛の持ち出し

インバウンドで日本に訪れる外国人にも大人気の和牛。

中国からもたくさんの人が遊びに来て、舌鼓を打ちます。すると、中国でも和牛の人気は高まります。

2001年に狂牛病問題で中国は和牛の輸入を停止しました。

しかし、2018年頃、中国内で和牛が広く流通していることが発覚しました。

ちなみに中国の和牛輸入再開は2019年に入ってからですから、不正なルートで入ったということです。

日本の畜産農家も・・・

調べていくと、なんと日本の畜産農家などまでが、和牛の受精卵や精液を不法に中国に*3・・・ 結局 自分さえ儲かれば、知的財産権なんてどうでもいいって人が結構いるんです。

日本人がスパイ行為をしているわけですね。

なんとストローの中に受精卵を隠して中国へ送り込んだこともあったようです。

さいごに

いかがでしたか?

今回は40年前と現代の産業スパイを見てきました。

スパイと言えば、海外の人がやっていると思いがちですが、日本人が普通に売り飛ばしているのもあるのです。

日本も昔はアメリカの技術を模倣してたし、どこの国もそうでした。

しかしながら、時代は変わっており、まともな国では現代の価値観や法律で昔のことを裁いたりできません。

また、逆に、「昔はよかった」は現代には通用しません。

日本もしっかりと知的財産権を守るようにしなければなりませんな

では、また(^^♪