前回の記事で、共和党が上院の委員会でコロナの起源は『研究室流失の可能性が高い』という報告を出した背景を解説しました。
実際は、新たな証拠が見つかったわけではなく、中間選挙前のアピールでした。
アメリカの政治観というのは日本人の想像を絶するくらい差が激しいのです。今回はその政治観による悲劇について学んでみましょう。
アメリカ合"州"国
アメリカ合衆国が誤訳なのは有名ですね。
United States of America を意味通り訳すならアメリカ合"州"国となります。
ところで、このstateという単語は『国家』という意味がありますね。つまり、アメリカの各州は1国家と同じくらいの権限があると考えられます。
だから州によって法が大きく違ったりするわけです。
さて、国家の寄せ集めでは、住んでいる人種の割合も違ったり、宗教の分布が違ったり、これにより政治観は州ごとに異なりますね。
赤い州と青い州
アメリカの政治を語る上で重要なのがこの『赤い州と青い州』です。
二大政党のアメリカでは、トランプさんのいる共和党は赤、バイデンさんのいる民主党は青と昔から決まっています。トランプのネクタイがなぜ赤なのか。そういうことです。
大統領選のときなどで、州ごとに共和党に投票が集まる州と民主党に集まる州をそれぞれ、赤い州 (red state) 、青い州 (blue state) といいます。
もちろん、中には、大統領選の度に支持政党が揺れる激戦区があって、英語では swing state(揺れる州)と呼びます。他にも、赤と青の間から 紫の州 (purple state) と呼ぶこともあります。
紫の州として有名なのは最南端のフロリダ州とオハイオ州があります。これ、後で出てきます!
政治観と超過死亡
これは、気候、地理的条件、支持政党、年齢などによって、コロナ禍での超過死亡に差が出るかを調べた研究です。
2つの州と言うのは、紫の州であるフロリダ州とオハイオ州のことです。州の中で、共和党支持者と民主党支持者が半々くらいの所が調査をする上で、わかりやすいですからね。
で、この紫の州で、支持政党別で平均超過死亡率の差を見ると、共和党支持者は民主党支持者より76%高いことがわかりました。
一応、元の論文のグラフを参照します。
2020年の10月頃より赤い線(共和党支持)と青い線(民主党支持)の乖離が見られ始めました。アメリカでコロナワクチン開始したのは2020年12月です。
なので、10月と11月の差はワクチンだけでは説明がつきませんが、それ以降はずーっと共和党支持者で超過死亡が有意に高いです。一方でワクチン開始以前では支持政党別で超過死亡の差は見られていません。
接種率が低い州で顕著
論文の著者によると、その他の州も見てみると、接種率が低い州でこの傾向がさらにみられるようです。共和党支持者で超過死亡が多いということです。
逆に、全体的に接種率の高い州では、支持政党別の超過死亡の差は小さくなると。
この研究内での"接種"というのは、「少なくとも1回接種」としています。これは、Johnson&Johnsonのワクチンは1回接種で初期接種完了だったからです。
つまり、少なくとも初期接種が完了している群では明らかに死者が少ないんです。
アメリカでは今も7000万人以上が未接種で、全人口の20%以上となります。
共和党支持者に反ワクチン、反マスクが多いのは周知の事実で、その共和党支持者で超過死亡が顕著に増加しているという事実が今回明るみになりました。
つまり、政治観ゆえに、『避けられた死亡』をたくさん増やしたのです。
共和党は反ワクチン?
なぜ共和党支持者にワクチン接種率が低いのでしょうか?
共和党は保守政党で、たしかに日本でも保守論客はワクチンに否定的な意見を出すことが多いですね。
基本的な共和党の概念で『強制』を嫌うというのは有名で、マスク義務化やワクチン義務化に反対するのは理念に合致します。
アメリカでは、コロナで約110万人が死亡しています。日本の25倍です。だからこそ、未接種で解雇という対応に出た会社もありました。それらに反発するというのもあるでしょう。
トランプは接種済
陰謀論集団のQアノンはトランプを神と崇めています。彼らは反ワクチンでもありますね、「人口削減だー」とかいう主張で。日本でもその辺が逮捕されましたね。
しかしですね、Qアノンの崇めるトランプさんはブースターまで済まして*3ます。では、なぜなのでしょうか?
共和党支持者は保守のFOX newsが御用達ですが、これが反ワクチンに傾いているのも一因と指摘されています。
ロシアや中国からのmRNAワクチンの誤情報がSNS上で拡散*4されているのも問題です。
過去を振り返ると、トランプ大統領がコロナ禍を終わらせるために、ワクチン開発⇒無料接種の舵を取りました。しかし、大統領選で敗れ、民主党のバイデン大統領がその役を奪ったわけです。
熱心なトランプ支持者たちはこれを受け入れられず、バイデン氏のワクチン政策に反発していると。
▼反ワクチンの正体▼
▼ファイザー元副社長ウソ▼
さいごに
いかがでしたか?
アメリカの政治観と言うのは、共和党支持者と民主党支持者でパックリ分かれます。
2つの党の支持者が拮抗する『紫の州』では、共和党支持者が圧倒的に超過死亡が増えていました。ワクチン接種により、防げた死亡でした。
極端な政治観が奪った生命とも言えます。
ワクチンは、人の免疫そのものに依存することから、人により反応が異なります。少ないですが、一部の人には重篤な有害事象が出ることもあります。これは、どの薬にもあり得ます。
基本的考え方は、『メリットの方が大きければ打つ』です。
長期間の感染予防効果が期待できないのであれば、若くて健康な人は2回接種で十分ですね。
一方、高齢者では感染の波の度の接種で、有意に命を守っていることが世界的に認められています。
では、また(^^♪
*1:https://www.nber.org/system/files/working_papers/w30512/w30512.pdf
*2:https://ysph.yale.edu/news-article/study-finds-large-gap-in-excess-deaths-along-partisan-lines-after-covid-19-vaccines-introduced/
*3:https://www.vox.com/22947498/partisan-pandemic-polarization-coronavirus-vaccine
*4:https://www.reuters.com/world/china/russia-china-sow-disinformation-undermine-trust-western-vaccines-eu-report-says-2021-04-28/