人は今まで生きてきた経験をもとにパターンを作っていき、次に起こることを予測し、瞬時に判断できるようになっていきます。
つまり、人の瞬間の判断というのは今まで培ってきた”野生の勘”で決まります。
肩書もその一つ。過去の経験から人は『肩書』を見て、どう接するべきか決めるのです。「〇〇だから△△なはずがない!」
芸能人、教授、社長、弁護士・・・
一度信じ込むと、事実がどうなのかは関係がなくなります。
陰謀論は簡単にできる
ワクチン接種が進むにつれて、反ワクチンの活動も活発になります。SNSでは、過去に子宮頸癌ワクチンのときにも効果があった『不妊』『流産』などというキーワードを使って広めています。
そして、その信ぴょう性を高めるために使われるのが肩書です。
その辺のワケのわからんおっさんがそんなこと言っても誰も信じません。だから、博士や教授、医師などの肩書の人を使います。
▼陰謀論のつくり方▼
陰謀論のつくり方は簡単で、ただ単に肩書のある人の発言で、都合のいいものだけを集めて、数字や名前など明確なものはわざと省略します。要は切り取り報道と同じです。
元・副社長の発言
ワクチンの不妊論でよく出てくるのはファイザーの"元・副社長"のビデオですね。メガネのおじさん。これを根拠にして拡散されています。なぜ信じるのでしょうか?
答えは簡単で、ファイザーの元副社長という肩書です。
たしかに、このような妄想?は容易に想定できますね。信じてしまいそうになります。
世界中でもこの情報は広められています。欧米では独立機関によるファクトチェックがかなり行われており、こういった陰謀論もチェックされています。
今回はこの”副社長”の件について、ファクトチェック*1*2されたものを元に、嘘を暴いていきましょう。
マイケル・イードン博士
動画で紹介される"元・副社長"はマイケル・イードンさんで、イギリス人です。そもそもファイザーは、アメリカの会社です。
もちろんファイザーはイギリスにも研究室があるわけです。
この人は1996年にファイザーに就職し、2011年に退職しています。
そうなんです、2011年にファイザーを辞めており、新型コロナワクチンに1mmも関わっていないのです!
ワクチンに反対して職を追われたとかテキトーな嘘は後付けされたものですが、大嘘ですね。
さらに、vice president はたしかに副社長と言う和訳で間違いはありませんが、そもそも president という単語は社長、部長など、要はそこの一番上の責任者という意味です。
つまり、『ファイザーの元・副社長』というのは嘘で、実際にはファイザーの研究所の一部門の副部長ということです。わざとした誤訳です。
ファイザーを辞めた後、自らがZiarcoというバイオ技術会社を設立しましたが2017年にノヴァルティスに買収されました。
イードン博士の変化
コロナワクチン開発に関わっていないタダの人?がこんなに反ワクチンをしているのはなぜなのでしょうか。
イードン博士は元々は反ワクチンではなさそうです。少なくとも2020年の3月にはTwitterではワクチンに対する期待ともいえるツイートをしています。
しかし、その1か月後には急に風向きが変わり始めました。
なぜ考えが変わったのかは本人にしかわかりません。ロイター通信はイードン博士のインタビューを試みますが、実現できていません。ファイザー時代の元同僚にインタビューをしています。
昔のイードン博士を知る者からすれば、今の彼の発言などが信じられないそうです。
ツイッターから消えた
そして、重要なことがあります。2021年2月にイードン博士はあるツイートをしました。
この『直近の投稿』がどれかはわかっていませんが、謎は深まります。そして、その翌日『もうすぐ消えます』とツイートし、2月6日にツイッターアカウントを削除しました。
ロックダウン反対
SNSで有名なイードン博士のインタビュー動画は、実は主な内容はロックダウン反対、マスク反対でした。以前もお伝えしましたが、反ワクチンを訴える人たちはロックダウン反対、マスク反対で、最終的には『コロナは存在しない』につながります。
▼『コロナは存在しない』はウソ▼
それではイードン博士の主張を見てみましょう。まず、前半。
もう、この前半はすべて間違っていますね。彼の主張の大前提がさっきも言いましたが、『新型コロナは存在しない』です。
ちなみにこの動画は2020年10月頃に出てます。当然、世界で大量の死者を出した第3波よりも前です。「コロナはもう終わるからワクチンは不要」とも言っていますが、大きく間違えていることもわかります。
後半の主張は、ファクトチェックではすべて誤りとされていますが、当たらずとも遠からずの部分はここでは△としました。
そして、有名なのが最後の赤い項目、ワクチン接種者は高確率で死ぬというものですね。あとは不妊になるというものです。
▼イベルメクチンについて▼
不妊になる?
よく『動物実験もされていない』『治験も行っていない』とか『不妊になるデータを隠している』とア〇丸出しなことを言う人もいますが。(笑)
治験は第III相までちゃんと終わっています。そして、動物実験で不妊・流産もちゃんと論文で報告されています。
これ、あの小さなラットにヒトと同じ投与量で4回も打っていますが、流産や不妊につながることは認められていません。解剖されて、卵巣や子宮、その他の臓器にも異常がないことも確認されています。もちろんヒトでの研究報告も既にあります。
でも20年後はわからないだろう?と言われれば、そらわかりません。別の理由で不妊になるかもですしね。日本では平均して5.5組のカップルにつき1組*3が不妊の検査・受診をしています。
インタビュー相手
ところで、イードン博士のインタビューをしたのは誰でしょうか?
AFLDSというアメリカの医師たちによるグループです。2019年にシモン・ゴールド氏が作った団体です。彼女は有名な反ワクチン派の医師です。
このAFLDSは極右政治団体で、”新型コロナに関する誤情報を流す医師集団”*4*5とアメリカでは報じられています。
彼女は、製薬会社は病気の治療法をわざと隠して病気を意図的に蔓延させることで儲けようとしているという陰謀論を主張しています。
ちなみに彼女は2021年の1月6日に連邦議事堂に乱入した件で逮捕されています。過激。
さいごに
いかがでしたか。
そもそもファイザーは2011年に辞めており、過去に副社長でもなかったイードン博士の肩書をうまく利用した動画を拡散した反ワクチン団体。
日本では必死で『ファイザーの元・副社長』と誤訳をつけて広めて、騙される人が多い現実。。
日本は、過去に子宮頸癌ワクチンでの反ワクチン成功例がありますし、日本人は基本的には平和ボケしてますから効果が抜群なんです。
▼子宮頸癌ワクチンは打つべし▼
一番重要なことに、英語への苦手意識も大きいです。わざわざ英語の原著や英語の長いオリジナル動画を見ないでしょう。
これらの要素で日本は特に、いいカモになるのでした。。
では、また(^.^)ノ
▼ワクチンとfake news▼
*1:http://www.mythdetector.ge/en/myth/what-connection-between-pfizers-former-vice-president-and-conspiracy-organization
*2:https://www.thejournal.ie/debunked-mike-yeadon-pfizer-covid-19-vaccines-5447489-May2021/
*3:https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf
*4:https://www.medpagetoday.com/infectiousdisease/covid19/90536
*5:https://www.nytimes.com/2020/07/28/technology/virus-video-trump.html