マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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インフルエンザの猛威

例年よりも早いインフルエンザの流行開始、さらに爆発的な増加・・・

これは日本だけで起きているわけではありません。先に冬の来た南半球、そして北半球の英国・アメリカでも・・・

何が起こっているのか見ていきましょう*1

香港A型

現在流行している型はH3N2亜型というもので、香港A型というと、聞いたことがあるという人は多いでしょう。

このH3N2ヒトとブタに感染します。

香港A型

1968年~1969年にこのH3N2の変異した新型が引き起こした”香港かぜ”では、世界でおよそ50万人が亡くなったといわれています。

H3N2亜型は、全年齢層で症状が強くなり、重症化リスクも高いウイルスであることが知られています。

直近では2016~2017年にH3N2亜型の流行がありました。

では、この時は大荒れだったのでしょうか?

厚生労働省の資料*2を見てみると、このシーズンの感染者数は例年並みだったようです。

2016-2017シーズンも例年並

入院はどうだったかというと、例年より少し多かったとしていますが、15歳未満の入院は例年より少し少なかったようです。

インフルエンザ脳症に関しても例年と同じくらいで117例でした。

むしろ、その1年前の方が182人と異常に多く、いつになくインフルエンザBからの脳炎が多かったことが原因のようです。

2015-16シーズンが脳症多かった

つまり、香港A型は『重症化しやすい』と知られていますが、そこまでビビりすぎなくていいのかもしれません。

もちろん例年通りの警戒はした方がいいでしょう。

アメリカ「戦々恐々」

一足先に流行の始まった英国からの研究*3報告をみると、H3N2K亜系統(subclade K)は、6月に欧州で見つかり、夏の間に7回変異を起こし、感染力や病原性を強めているとしています。

アメリカもこの英国での大流行、日本での大流行を見て戦々恐々としているそうです。

それはH3N2の変異したウイルスだからという理由だけではありません。

本来なら世界中から迅速に情報を集め、情報提供・指示を出すはずのCDC全く機能しておらず、アメリカ内の医療従事者ですらその情報がすぐに入らないからです。

反ワク誤情報で稼ぐRFK jr.

トランプ政権で、RFK Jr.が厚生長官となり、反ワクチン傾向を強めると同時に、非科学的な信念を押し付け、CDCの長官を解任しました*4

こんなアホについていけないと、複数の幹部らが辞職したりと混とんを極めているからです*5

反ワクビジネスの構造

彼は反ワクチン情報で稼いだ人物である*6ことはお忘れなく!

RFK Jr.のヤバさ

www.multilingual-doctor.com

ワクチン効かない?

今回大流行を起こしているH3N2K亜系統、さらに短い間に7回も変異を起こし、病原性を高めたウイルス。

これにはワクチンの効果がかなり下がるだろう*7と指摘されています。

ご存じの通り、我々のよく知るインフルエンザワクチンは、不活化ワクチンで、作るのに時間がかかります。

インフルエンザワクチンの製造

そこで半年以上前に、今年の流行株を予想して作らないと間に合いません

K亜系統は南半球(季節が真逆)の流行期の最後に出てきたため、北半球向けのワクチンの製造開始には間に合っていないのです。

つまり現在のインフルエンザワクチンはK亜系統にはあまり反応できない恐れがあるのです。

となれば、例年稀に見ない入院数や、それに伴う死者数の増加が懸念されていました。

インフルエンザとワクチン

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「ある程度の効果」

実際北半球での流行が始まりだすと、少しずつ実態が見えてきました。

今回のK亜系統は、7回変異はしているとはいえ、大元はH3N2であるため、常識的に考えて全く効果がないということはありえません

2段階で考えるとわかりやすいです。

ウイルスの変異とワクチンの効果

ワクチンがバッチリ合っていて効果がかなり高いと、重症化予防効果+発症予防効果が高いです。

変異によりワクチンがハズレた場合も、大元の共通部位があるので、ゼロにはならず、発症予防効果は下がるけど、重症化予防効果や入院抑制効果は結構残っている事が多いからです。

実際、英国の速報値*8では、今年の小児でのワクチンによる入院抑制効果は70〜75%、大人で30〜40%と、例年と同程度に効いているようです。

2025年 インフルエンザワクチン効果

ここからも、香港A型の変異だからと言っても、感染予防効果は落ちるかもですが、入院予防・重症化予防としては例年と同じ程度のようです。

重症化しなくても症状がキツくて長いという点は注意が必要です。

かからぬよう警戒はしつつも、必要以上に恐れることはないということですね。

小児に接種を!

乳幼児はインフルエンザだけでなく、RSウイルスコロナで入院となりやすいのは有名です。

また、インフルエンザ脳症を起こすのはほとんどが小児です。

昨シーズンのアメリカのデータ*9ではインフルエンザ脳症でなくなった子の年齢中央値は6歳で、半分は基礎疾患なしの子でした。

つまり、普通の健康な子でもなりうることは怖いところです。

また、インフルエンザ脳症で死亡した子たちの8割が未接種でした。

インフルエンザ脳症~アメリカ2024-25~

一般的に、インフルエンザワクチン接種が直接的に脳症を減らすという証拠はありません。しかし、感染自体を減らす効果での間接的効果はあります。

さらに、感染しても、早くに免疫応答できるのでウイルスが増える速度を遅くできるので、脳症の原因とされる”免疫の過剰反応”のリスクも減らすことは期待できそうです。

ちなみに過去の日本のデータ*10からも、ICU(集中治療室)に入院となった児の75%はワクチン未接種だったということも重要です。

ワクチンが完全に防ぐことはないとしてもかなりリスクは下げれそうです。

 

では、また(^^♪