韓国で昨年末から放送されたドラマ『愛の不時着』は人気を博し、韓国のケーブルテレビドラマ史上歴代3位の最高視聴率を記録しました。
韓国の財閥令嬢がパラグライダーに乗っていると、突然の竜巻により北朝鮮に”不時着”してしまいます。そこで朝鮮人民軍の軍人と出会い恋に落ちるというお話。
興味はあるのですが、まだ見ていません。時間ができたときに見てみようと思っています(^^
興味がわいた方は、韓ドラ そら豆 様が詳しくわかりやすいレビューを書いておられますのでご参照ください。↓↓
ところで先日TVで見たのですが、この話の元となった実話があるそうです。ボートで北朝鮮に流れ着いた韓国の女優がモデルとなっているんだとか。
さて、先月韓国の海洋水産部の職員の "哀の不時着" について、前回は話が大きくそれたので(笑)、今回はその話題について見ていきましょう。
▼前回の記事▼
事件の流れ
まずは簡単な経緯を見ていきましょう。
月曜日に失踪がわかり、韓国軍は火曜日の夕方には該当職員を海上で発見していました。そして北朝鮮軍により射殺されたのはその6時間後で、さらにその事実を発表したのは、射殺確認してから1.5日後です。なぜこんなに遅かったのか。
そして文在寅大統領が「北朝鮮側に事情説明を求める」として、正直誰も北朝鮮から返事など来るとは想定していませんでしたが、金正恩名義で返事がきました。これには少し驚きました。
では、少しずつ踏み込んでこのニュースを見ていきましょう。
海洋水産部
今回亡くなったのは韓国海洋水産部の職員でした。海洋水産部というのは日本で言うと水産庁です。海洋水産、海運、水産物の流通など海に関わる多くのことを管轄しています。竹島(韓国では独島)の管轄にもかかわっています。
海洋水産部は統廃合を繰り返して、1996年に登場しては2008年に一度廃止されていますが2013年に朴槿恵(パク・クネ)大統領が復活させました。
翌年2014年に起きたセウォル号沈没事件、これも海洋水産部の管轄だったわけです。この事故後の対応で朴槿恵大統領は退陣させられたのも記憶に新しいですね。
プッカンとナムヂョソン
まずは周辺知識を学んでおきましょう。
事件が起きたのは延坪島(ヨンピョンド)という国境付近の島の近くです。2010年に延坪島砲撃事件と言って、突然北朝鮮軍が砲撃を行ったことがありました。
一つ知っておかなければいけないのは、陸に関しては38度線で2国は分かれているのですが、海上の境界線についてはお互いの主張が食い違っているのです。
今回の哀の不時着があったのは、韓国側が主張する領海よりも北側*1で、上図の赤★の部分です。
国の呼び方についても学んでおきましょう。韓国は北朝鮮のことを北韓(プッカン)、北朝鮮は韓国のことを南朝鮮(ナムヂョソン)と呼びます。お互い自国の名前に正当性があると考えているためそうなります。
北からの通知文
9月25日に公開された北朝鮮からの通知文の大まかな内容は以下のようになります。
韓国側の発表と食い違いますね。取り調べしたが、それに応じず逃げるような動きをしたため射殺したと言っています。さらに遺体はその場から消えていなくなっていたため燃やしていないという主張です。某氏が掴まっていた浮遊物は、新型コロナの防疫のために燃やしたのことです。
そして、重要なのは最後、金正恩総書記が謝罪しているところですね。珍しいです。
過去の”不時着”
「なぜ殺したのか?」一番の問題はこれでしょうね。北朝鮮に流れ着いた韓国民はいつも殺されてしまうのか?答えはNOです。
ソウルや仁川(インチョン)は韓国のかなり北部で北朝鮮国境までも近いです。ということはその沿岸部では意図せずとも北朝鮮領海まで入ってしまうなんてことは過去にも幾度となくあったわけです。
過去の例を見ると、だいたい捕まえられて取り調べを受け、スパイでないことがわかれば韓国に強制的に送り還されていました。南北関係はよくないときでもそうです。
折しも、文在寅大統領は過去に見ないくらいの『従北』と言われてます。それなのにこうなったのはなぜでしょうか?専門家たちは新型コロナで国境付近の警備が厳しいせいではないかと言うています。
青瓦台の思い
韓国政府を表すときに青瓦台(チョンワデ)と言います。官邸の瓦が青いからです。英語ではホワイトハウスのようにブルーハウスといいます。
さて、青瓦台はどのように考えているのでしょうか。
海洋警察は亡くなった公務員の身辺調査から賭博などによる大きな借金を抱えていたことと、越北の意志と言う部分を強調しました。
越北と言うのは、北朝鮮への亡命のことですが、韓国では国家反逆という非常に重い罪になるわけです。実際ネット上では、「越北者を救う必要はない」という政府擁護意見がかなりありました。しかし、家族は越北を否定していますし、多額の借金が理由での越北も納得はできませんね。
さらには、韓国の公務員が越北となれば、北朝鮮からすれば最高の広告人物になるわけです。北朝鮮内で「韓国や民主主義がいかにひどいか」というのを国民に宣伝する貴重な道具になるからです。それを簡単に殺すでしょうか?
また文大統領の「金正恩委員長からの謝罪は格別の意味」発言などからも、必死でこの問題が大きくなる前に南北融和ムードでうやむやにしようとしているように感じてしまいます。
空白の時間
もう一度事件の流れに戻ってみましょう。
文大統領が書面で最初に『失踪』報告を受けたのが22日の午後6時36分とされていますが、その時に救助の指示を出しませんでした。つまり、韓国軍は海上で見ていることしかできませんでした。そしてその3時間後に殺害されました。この間に何かしら動いていれば違った結果になったのではという批判があります。
また、文大統領へ「殺害された」という報告がいったのが、なんと翌日23日の朝だというのです。つまり殺害後半日近く後なのです。こんなことありえますでしょうか?
さらにさらに、国防部の正式発表は文大統領が「殺害」を報告受けた26時間後となっています。この遅い対応が故に色々と陰謀論なども盛り上がっています。
終戦宣言?
9月の記事で、トランプ大統領と習近平主席の国連総会演説の内容を書きました。
▼米国vs中国の舌戦
今年の国連総会は新型コロナの影響で各国首脳は事前に収録したビデオ演説でしたね。あまりニュースにはなりませんでしたが、日本の菅(すが)総理大臣も、韓国の文大統領もビデオ演説をしています。
この文大統領の”終戦”演説が流されたのが23日の午前1時頃です。勘のいい方は何が言いたいかわかりましたね?笑 時系列で整理しましょうか。
自国民が殺害されてから大統領の耳に入るのが半日後、どう考えてもおかしいですね。その間に流れた国連演説で、南北融和をゴリ推しして、『終戦宣言』を匂わせています。
もし、殺害されてすぐにその事実を大統領が知っていたならば、その数時間後に流れるであろう国連演説は世界中で笑いものにされたかもしれません。あるいは、取り下げていたかもしれません。(←できるかは知らんけど)
そのためにも、大統領は演説時間よりも後に「初めて報告を受けた」必要があったのだと考えられますね。
さいごに
文大統領が就任したのは前の朴槿恵大統領が罷免されたときでした。以前、”ジェインの誓い”と称して文大統領の政界でのリベンジストーリーについて書きました。
▼ジェインの誓いはコチラ▼
文大統領は大統領選初出馬で朴槿恵氏に敗れました。そして、セウォル号事件のときに先陣を切って朴槿恵氏の「空白の7時間」を責め立て、退陣に追いやり自らが大統領の座を手にしました。
なので、この問題は早めにケリをつけて、終わらせてしまわないと自らが・・・
と考えているかは知りませんが(笑)
なかなか、世の中は色々とつながっているものですね~
ではまた(^^♪
*1:当然北側の主張では北の領海