マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

MENU

4億人の大移動、5兆円を作り出す

先週末に新型コロナに感染し、高熱などの症状があったトランプ大統領が日本時間で今朝退院しました。足取りは軽かったですが、基本的には show でしょう。完全復帰はまだです。

CDCの推奨などからは発症から最低10日間の隔離が必要であるとされてますので、あと5日ほどあるのでしょうか。さらに、ギリアド社のレムでシビル(remdesivir)投与したという報道がありましたが、この薬は通常5日間点滴で投与します。残りはホワイトハウスで投与するということでしょうかね。

いずれにしても大統領選挙まで1か月でこのコロナ感染がどう出るのか気になるところです。

f:id:jonny1205:20201006093854p:plain

今日のニュース

例によって NHK world の記事を利用してニュースから色々学んでいきましょう。

f:id:jonny1205:20201006093953p:plain

NHK world より一部引用・編集

epicenter というのは普段は地震の震源地(正確には震央)として使用されることが多く、特に日本は地震が多いのでよく見かける単語です。このような感染の発生地もとしても使われます。

epi- というのは「上に」「外に」「後に」という意味があります。エピローグ epilogue っていうのは ”「後に」ついた語り”で 結末や終幕と言う意味です。epicenter というのは地震が発生した中心(center)の「上に」ある場所です。

f:id:jonny1205:20201006100600p:plain

epicenter

元々地震が発生する "震源地" は 地中深くにあるので hypo (下に) がついたhypocenter という言葉があります。そこからまっすぐ地表に上がったところが epicenter で震央と言う言葉になります。

新型コロナで専門家?などが「エピセンター」「クラスター」「オーバーシュート」とイキっていた言葉の1つですね(笑)外来語と言うのは該当する適当な母語訳がないから受け入れるものです。もっとわかりやすく言える日本語があるならそれに置き換えればいいのです。集団感染の中心地のことです。

わざわざ一般の人に向けて話すとき「この単語知らんやろ~?俺は知ってるで~」みたいな顔をして話す為だけの言葉にも見えますが・・・笑

 

あと遺族と言う言葉は押さえておきましょう頻出です。 bereave というのは命を奪うという意味です。使い方は bereave A of B で【 AからB(家族など)を奪う】です。受動態になると「奪われる」なので、bereaved people は遺族となります。

 

武漢はWuhan

日本の報道では武漢(ぶかん)と言われますが、英語のニュースでWuhanとなっていることにはこの春から何度も目にされたかと思います。武漢は中国語では武汉(ウーハン)と言いますので、それを英語表記したものと言うことですね。

地名の話をすると、北京は日本ではペキンと読みますが、英語ではBeijingですよね?これはなぜだか知っていますか?

f:id:jonny1205:20201006104449p:plain

北京はペキン?

昔は中国でもペーキンと発音していたんです。なので、英語でもPekingというのが残っています。北京大学はその名残か、Peking University としています。日本でもその音が残っているわけですね。

中国は広大な土地なので方言が多く、発音が違うことが多いのです。のちにの王朝ができたときに北方系(満州系?)の人たちが力を持ち、読み方をペイチンに変えたようです。

香港も中国の普通話(公用語)ではシャンガンと読むのですが、日本ではホンコンですよね?これは南方系の発音でヒョンゴンというようでその英語表記が Hong Kong となり日本もそれを取り入れたんですね。おそらく発音から予想すると、o ではなくドイツ語で習うウムラウト付きの ö だったのかな~と思います。

 

相互主義

昔からの有名な上海や北京や香港などの地名を除いては、武漢は「ぶかん」、広州は「こうしゅう」、福建「ふっけん」などと日本語読みですね。

韓国の地名はどうでしょう?ソウルは漢字表記がありませんが、釜山は「ぷさん」、慶州は「きょんじゅ」などと韓国語式で読みますね。

また人名でもそうです。中国のトップは習近平(シー・チンピン)はしゅうきんぺいと日本語式に読みますが、韓国の文在寅はムン・ジェインと韓国語で読みます。なぜでしょうか?

実はこれは「相互主義」によるものです。簡単に言うと2国間で取り決めみたいなのがあって、お互い現地発音で呼ぶのか、あるいはその国で読みやすいようにするのかを決めるということです。

日本人にとっては習近平をシーチンピンなんていきなり読めないんです。せっかく漢字がわかるので日本での漢字読みにした方が日本ではわかりやすい。逆に言うと中国からしても同じなんです。日本人の見慣れない名字を日本語読みするより現地の発音で読んだ方がわかりやすい。

韓国・北朝鮮も昔はそうでした。金大中(きん・だいちゅう)や金日成(きん・にっせい)などと読んでいました。

しかし、自分の名前を日本語読みされるのを不服に思った在日の方が裁判を起こしました。それを機にマスコミなどでは呼び方が変わっていったと言われています。

なので、相互的に韓国へ行っても日本人の名前は日本語のまま、韓国人の名前も韓国語のまま読まれるようになっています。

 

中国を超えた

最初に武漢で広がった新型コロナですが、中国では3月までドカーンと増えましたがその後、めちゃくちゃ緩い上り坂(なんならほぼ横ばい?)で経過しました。現在の累積感染者数は8万5000人ほどとされていますが、日本の累計「感染者」*1数はついに中国を超えました。ちなみに韓国では2万5000人と少ないです。

中国ではほぼほぼ「終息」と考えられている?ようです。実際には無症状の陽性者はカウントしないなどあるので日本や韓国とはカウントの仕方が違います。ただ、個人的には日本もその中国のやり方でいいと思いますがね~

だって、たとえば夏場のインフルエンザってどうなってるか知ってますか?どっかにいなくなっているわけではありません。不顕性感染と言って気づかないうちに感染してたりもします。要は冬が流行りやすい条件が揃うだけなんですね。調べたら陽性って出ることもあるでしょう、調べないからわからないだけで。

本当に「無症状陽性者」から移るのかはまだ分かっていないことが多いんです。やはり相手に移すにはそれなりのウイルス量が必要で、ウイルス量が多いと症状が当然症状も強く出やすいわけです。

 

中国は連休へ

そんな感染が「安定」している中国は10月に入って国慶節*2などを含む大型8連休が始まりました。そして連休の前半4日間で約4億2500万人が国内移動しまし、経済効果は5兆円ちかいそうです。日本の国家予算が100兆円くらいなので、ほんとにすごいですね。

世界中は、観光産業が悲鳴を上げている中、中国は国内移動だけでもものすごい経済効果があります。中でも、最初の感染中心地となった武漢が人気の旅行先だそうです。

f:id:jonny1205:20201006133721p:plain

中国政府としても、中国は新型コロナから回復したというメッセージを世界に見せつける好機と考えているようですね。

声を上げられない国民

さて、再度今日の題材を見てみましょう。

f:id:jonny1205:20201006134226p:plain

最後の黄色下線部のところです。

遺族は政府に感染症出現時の初期対応の責任を取ってもらいたいが、当局が遺族に政府に責任を負わせないように警告した為、声を上げられない。

武漢で少なくとも5件の遺族による訴訟が起こされており、約3000万円の損害賠償と公式な謝罪を求めていました。しかし、詳しい説明もなく「手続き上の不備」とだけ電話で告げて訴訟は却下されたとAFP通信が9月に伝えています。

また4月くらいのニュースになりますが、遺族は当局から監視されていました。遺族同士がまとまり団体を作ると国としては厄介だからでしょう。現に通信アプリでチャットグループを作った遺族は逮捕されました。

当然こういうニュースはあまり流れません。中国で旅行ブームなどのニュースだけ宣伝のように流されます。

なぜメディアは中国に配慮?

www.multilingual-doctor.com

 

では、また(^^♪

*1:正確には陽性者

*2:日本でいう建国記念日