マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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抗体検査から見る”感染者数”のカラクリ

「東京都で2000人以上の陽性者」

不安になるでしょうが、動じずに自分にできる感染対策を引き続きするだけです。

人ごみを避けて、手洗い、マスク。

それにしても本当にコロナばかりの1年でしたね。今年最後の記事も、コロナのニュースを少し解説していきます。

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実際は10倍か

今回はCNNの記事を解説していきます。

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CNN news 記事より引用

これは12月29日のCNNニュースの記事の一部です。内容としては武漢では50万人近くが新型コロナに感染していた可能性があり、それは政府発表の10倍近い数字だというものです。

これは、抗体検査の結果でわかったもので、3万4000人のサンプルから抗体のある割合(=感染済みの割合)を調べたら4.43%だったんです。武漢の人口はおおよそ1100万人ですから、ざっくり計算して49万人が感染したという計算になります。

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抗体検査の結果から計算

公式発表は5万354人なので、10倍近くになるというものですね。なるほど。

ところでこのニュースが何を意味するか考えてみましょうか。

 

中国は圧倒的な検査・隔離

中国は共産党が指示したらすぐに1つの街を封鎖できる力があります。そして過去に何度もニュースで見てきたように、クラスターが発生すると100万人規模のPCR検査を行うんでしたね。そして陽性者が出た建物を軍が包囲して封鎖!という一連のスムーズな流れ。

こうして中国は今や ”ゼロコロナの国” と称しています。

ゼロコロナの国

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そう、中国は、日本の一部コメンテーターたちが夢見ていたような「全国民にPCRを」を早期に実現できる体制なんですね~ すべてを国が統括しているから。

それだけ検査体制がある中国でこれだけ乖離がみられるのは、なぜでしょうか。

 

なぜ10倍も違うのか

考える理由を挙げてみましょう。

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10倍の乖離の理由

①は、当初から中国政府は「無症状陽性者は感染者として報告しない」と明言していますので、報告されている数は有症状の陽性者のみなんですね。これは日本やアメリカや韓国と比較するときには注意が必要です。

無症状が6-8割と考えれば、総数は、中国の公表感染者数(=有症状陽性者)の3-5倍ほどいることになります。それにしてもまだ乖離がすごい。

②何十回も言うていますがPCR検査はその時の状況しか反映しません。1か月前に気づかずかかっていても、検査の2日後に感染してもPCRは陰性ですね。要するにPCRの数だけがすべてじゃないんです!

さらに質ですが、検査キットによっては精度が極めて低いものもあります。中国製キット、韓国製キットなどの質がアメリカで問題になったのもググっていただければすぐにわかります。

これらもあるので、私は無症状の自費PCRは勧めませんし意味ないと思っています。

自費PCR検査はオススメしない

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最後に③ですが、これは私にはわかりません。可能性は0%ではない!とだけ言っておきます(笑)

 

日本の抗体検査

ところで、他国のはどうなのか?もしかしたら中国みたいにものすごい乖離があるかもしれないですね。日本のものを見てみましょう。

神戸大学が主体となって8-10月に兵庫県内の病院から1万人分の血液を集め、抗体検査をしました。その結果は0.15%でした。

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兵庫県の抗体検査結果

さて、この兵庫県のデータから推定される"感染者数" は 8000人です。この血液サンプルが10月までの分なので、そこまでで評価すると10月31日までの兵庫県内の報告数が3274例でした。ざっくりですが、約40%の人が検査で拾えて報告されていると考えればいいです。

ちなみに12月30日現在での兵庫県内での陽性報告者数は9868例です。当然、上記の検査(8-10月)から報告数は3倍に増えてますので、今のタイミングでの抗体検査をやれば抗体保有率も大体0.45%くらいになるのではないでしょうか。

ちなみに、12月1日~15日の横須賀市の抗体検査結果は0.44%でした。なので、今は実際こんなもんなのでしょうね。

日本の人口が1億2500万人で0.45%だと、おおよそ56万人が既に感染しているという計算になります。厚生労働省での12/30までの発表数は約22万6500人ですから、やはりおよそ40%が検査により捕捉されていると考えられますね。

※実際は東京都だけで陽性報告者の1/3を占めているので、東京都では抗体保有率は0.5-0.6%とかになってるかもしれません。12月の検査の結果を待ちましょう。

 

韓国の抗体検査

韓国の抗体保有に関するデータで入手できるのは8月までの分で、0.07%というものがあります。たしかにこの時は韓国はかなり感染者が少なかったですね。

ただ、この検査は1440人だけの調査なので、少し参加人数が少ない気もしますが・・・

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韓国の抗体検査結果

抗体検査結果から計算上 3万6400人の感染が予想されますが、この時期(8月)までの累計報告数は20182例であり、捕捉率は55%となります。日本が約40%でしたからそれよりも積極的に検査をして陽性者をあぶりだせていることがわかります。

 

台湾の抗体検査

さて、コロナ優等生の台湾の状況はいかがでしょうか?

これも古いのですが、今年の5月と7月に台湾で行われた抗体検査結果がこないだ公表されました。台湾で1万4000人規模での抗体検査で保有率は0.05%でした。

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台湾の抗体検査結果

すると、7月の段階で、台湾の人口から計算すると1万1000人の陽性者がいることになります。実際は報告数は7月末で472例のみ。。。(捕捉率は4.3%)

あれ?11000÷472=23倍の乖離。。。笑

 

CT値

台湾のこの乖離については、陽性判定が違うというのはもしかしたら知っている方もいるかもしれません。CT値という言葉を耳にしたことはありませんか?

これは Threshold Cycle のことです。簡単に言うと、どれだけ増やすか?です。

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CT値についてわかりやすく

PCRは増幅装置なので、とってきたウイルスを倍にしていくわけです。それを何サイクルするかっていうのがCT値です。実はコロナの診断に増幅回数の決まりはありません。

日本やアメリカは40回する、つまり2の40乗なのでウイルスを1兆倍に増やして陽性判定をするということです。

かたや台湾、例えば35サイクルで判定するとすれば、2の5乗(=32倍)分ウイルス量が少ないわけです。逆に言うと、日本やアメリカは台湾よりも32倍以上多くしてから陽性かどうか判定するわけです。

CT値を高くすると無症状感染者を大量に生み出すシステムができてしまうわけです。台湾では無症状でウイルス量も少ない人を無理に陽性としない方針と考えてもいいでしょう。現にそれで大きな問題もないですし、最近はCT値は台湾くらいが妥当でないかという意見もあるわけです。

 

まとめ

いかがでしたか?少し難しい内容もありますがお判りいただけましたでしょうか?

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抗体検査からわかること

無症状陽性が異常に多いのはPCRで増幅しすぎていることもあります。つまりウイルス量が少ないような人ですら陽性となってしまうリスクもあります。

指定感染症のこと、PCRのCT値のこと。医療崩壊を避けるためにはこれらも考えないといけないと思います。

 

それではみなさん、よいお年を(^^♪