医療従事者の新型コロナワクチン接種が始まって3ヶ月になろうとしております。自国でワクチン生産できていないと入ってくるのを待つしかないのです。。
▼ワクチン接種が遅い理由▼
さて、これからモデルナ製のワクチンも承認されると集団接種が加速します。日本での接種人数も約385万人*1となっていますので、この数字をもとにワクチンを再確認しましょう。
使用されるワクチン
2021年5月22日現在、日本で承認されている新型コロナワクチンはファイザー製のものだけです。そして5月20日には米・モデルナ、英・アストラゼネカのワクチンの国内承認について決定する予定です。
日本では国内の治験データがあるものしか採用しないという厳しいルールを設けています。基本的に、日本という国は『まず様子見』なのです。
ファイザーのワクチンは有効性が高いことと、なんと発症予防効果も非常に優れているというデータから世界中が求めており、感染状況のかなりマシな日本や韓国にはなかなか回ってきません。
このワクチンの欠点は、超低温での管理です。接種までの間の一連の低温管理を cold chainと呼んでおり、ここをミスしないことが重要です。
そして、まもなく日本でも承認されるモデルナ製、こちらもmRNAを用いたワクチン(後述)で有効率もファイザーと同様ですが、ファイザー製ほどの超低温管理が不要なことで管理はしやすいでしょう。
ファイザーよりも調達がしやすそうで大規模接種に使用される予定です。
アストラゼネカワクチン
アストラゼネカのワクチンはウイルスベクターという方法で、感染力のないアデノウイルスの中に、新型コロナのスパイク蛋白*2の一部を封入したものを接種します。
ヨーロッパを中心に接種が進んでいましたが、特に若い人で血栓が少し起こりやすい傾向(若者で10万回に1件)にあることがわかりました。EUの一部の国では30歳未満はアストラゼネカ製以外の接種を推奨しています。
しかしながら、経口ピルを1年間飲んでいる女性が血栓症を起こす可能性は1000人に1人くらいあるとされますが、それより圧倒的に低い確率です。
また、イギリスをはじめ、欧州ではコロナ感染状況が日本とは比にならないくらいひどいため接種のメリットがリスクを大幅に上回ると判断されています。
mRNAワクチン
さて、現在接種されているファイザー製と、まもなく承認され大規模接種に使用される予定のモデルナ製はmRNAワクチンという新しい技術で作られたものです。
それゆえに、「1年でできたワクチンなんて怖い」という気持ちからかネット上ではありえない怪情報が出回っており、それを信じている人の多さ・・・笑
mRNAというのはDNAの設計図の一部です。ファイザーやモデルナのワクチンは新型コロナウイルスのスパイク蛋白の設計図の一部を使い、体内を工場にします。できあがったものは病原性のないウイルスの一部です。つまり、接種そのもので感染することはありません!
また、ここ1年でできたと思われがちですが、この技術は以前からあり、ヒトでの実用化に至っていなかっただけです。
▼ワクチンと生物兵器▼
また、mRNA自体は代謝されて1週間以内に体内から消えてしまいます。『後々の遺伝子にうんぬん』とかいう怪情報はサラッと流せますね。
変異株にも有効
国内での第4波も大阪・兵庫ではゴールデンウィーク中にピークに達しており、実効再生産数は1を切っています。が、まだ気を抜けません。東京はまだ微増傾向です。
▼実効再生産数について▼
さて、この波が落ち着いたとしても、厄介な変異株がまた国内で広がれば話は別です。しかし、そんな中いいニュースがありました。
ファイザーワクチン接種で変異株も含めてほとんどの人に抗体が形成されるということがわかりました。
日本での接種後死亡
さて、日本人のデータで副反応を見ていきましょう。
厚生労働省*3がワクチンの副反応に関するデータを公開しています。
まず、接種後の死亡のニュースで怖くなっている方も結構いると思います。日本でのワクチン接種開始後に39名*4の方が亡くなりました。ザックリと計算すると、100万人接種あたりの死者数は11件ほどになります。
イギリスは接種回数での数値なので、接種人数での計算にするともっと高くなります。
いずれにしても日本が高いということは決してありません。また、この死亡というのもワクチンが原因で死亡した人数ではありません!
※これから高齢者の接種が増えると接種後死亡者の割合も増えます。(偶然そのタイミングで亡くなる高齢者が若者より多いのは当然ですね)
『ワクチンで死亡』
日本だけが先進国で子宮頸癌ワクチンを推奨していないのはメディアの異常なまでの誇張報道のせいでした。
▼子宮頸癌ワクチンは打つべし▼
今回も同じ。メディアはものすごいまれなことを大きくして伝えます。
ワクチンで大動脈解離とかくも膜下出血は医学的に考えて直接的な関連性はかなり低いです。そういうことも調べずに記事にするアホさ&ヤバさ。
ま、可能性がゼロではないのは「ワクチン怖い」とか接種後の痛みによるストレスが疾患に影響することは当然あります。心筋梗塞や不整脈などはストレスに関連します。
日本での接種後死者39名のデータを見ました。
ワクチン以外に死因の可能性があるものは25名、不明は9名、なしは5名です。不明と言うのは、病理解剖を行っていないとか調べたけど本当にわからないなどです。
ワクチン以外に死因の可能性があるものは、例えば、くも膜下出血だったり、溺死、脳出血だったりがあります。例えば1例目はワクチン接種前より頭痛があり(このときから既に起こっていた可能性高い)、接種後にくも膜下出血で亡くなったなどです。
専門家が調べて情報も少なく『不明』となった9例を、一般人が憶測だけで話すのは無意味です。
次に、ワクチン以外に死因がなさそうとされた5例を見てみると、赤字の2例が少し気になります。
ワクチン以外の死因なし
(※厚生労働省が公開している情報を利用しています)
通常、ワクチンが原因で亡くなるならば規則的な疾患や症状となるはずです。例えばアストラゼネカワクチンは若い健康な人で血栓が多かったなどです。
少なくとも現在*5の時点で、ファイザー製ワクチンは世界中で打たれていますが、規則性のある疾患を引き起こすようなことは見つかっていません。
脳出血について
くも膜下出血や脳幹出血などの脳出血の症例が多いのではないかという指摘をする方もいます。実際この39例中脳出血を起こして亡くなっているのは8例ありました。
ワクチンによる出血傾向(血が止まりにくくなる)があるのでは?と考える人もいるかもしれません。
アストラゼネカやジョンソン&ジョンソンのウイルスベクターワクチンは血栓との関連性を指摘されていますね。出血傾向というのは血栓とは逆の動きになります。
さて、アメリカでファイザーワクチン接種後にITPという原因不明の血小板減少となり出血傾向になり亡くなった56歳の医師がいました。
実はインフルエンザや麻疹、肺炎球菌ワクチン接種後に非常にまれにこのITPになることがわかっています。今回のファイザーワクチンではまだデータがありませんが、非常にまれであると考えられています。
むしろ新型コロナ感染後にITPを起こす報告の方が割合的には高いのです。
また、ITPという病気は治療法がしっかりあるので、致死率も1%以下と言われています。
その他の副反応
まず重度のアレルギーであるアナフィラキシーですが、5月2日までに107例ありました。発生頻度は、接種100万回あたり28件と低く、問題はないとしています。アメリカは4.7件とかでした。
日本で多いと見えますが、医療従事者で比較的若い女性が多い(看護師など)ので少し偏っています。接種が一般の方に増えたらもっと割合は減ります。もう少し様子を見てみましょう。
基本的には2回目に強く症状が出るようです。接種部位の痛みは1回目からほとんどの方が感じています。また、発熱などは若い人の方が多いようです。
実はこれは副反応ではなくワクチン接種後の良好な正常反応なのですが(笑)
妊婦への接種
ファイザーのワクチンで、妊婦への臨床試験結果がすでに公開されておりまして、ワクチンにより流産が増えるとかそういったことはありません。また、ワクチンが胎児へ影響を与えることも考えにくいです。
妊婦が新型コロナに感染すると重症化のリスクが高くなりますし、流産のリスクが上がるとも言われています。
妊娠12週以降で、接種すれば大きな問題はないし、メリットも大きいです。
さいごに
いかがでしたか。コロナワクチン反対の人たちは怪情報を流して楽しんでいますが、科学を無視するのはあり得ません。落ち着いて、わかっているデータから打つ打たないを決めてもらえばよいかと思います。
では、また(^.^)ノ